更新日: 2019.06.28 相続税
増税前にマイホーム購入は要再考!相続税まで考えると買わない方がお得かも
消費税は土地にはかかりませんが、建物にはかかります。
原則として、引き渡しが10月以降になると、その前に売買契約をしていても、10%が適用されます(注文住宅の場合は、2019年3月中に建築契約が締結されていれば、完成が遅れて引き渡しが10月以降になっても8%が適用されます)。金額が大きいだけに、2%の差でも数十万円の値上げになります。
物件探しやローンの審査なども考えると、それほど余裕があるわけではなく、早め早めに動いていくことが大切です。
そんな動きに水を差すわけではないのですが、やみくもに購入を急ぐのが節税になるとは限りません。相続税もあわせて考えると、自宅を購入しない方がよい場合もあります。「小規模宅地等の特例」という、相続税の優遇制度があるからです。
執筆者:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員
大手証券会社で法人営業、個人営業、投資相談業務を担当。2004年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、相談者の立場にたった顧客本位のコンサルタントを行う。特に、ライフプランニング、資産運用、住宅ローンなどを得意分野とする。近年は、ひきこもりや精神障害者家族の生活設計、高齢者介護の問題などに注力している。
相続税の計算が、8割引きの金額で
相続税は非課税の枠が大きいので、ある程度の資産がなければかかりません。親の財産がそれほど多くなければ、相続税の心配をする必要はないでしょう。
しかし、首都圏や京阪神などの都市部で一戸建てに住んでいる人の場合、非課税の枠を超える可能性は十分にあります。亡くなった人の財産が非課税枠を超えていれば、相続人に相続税がかかってきます。
亡くなった人の財産額を計算する際、土地については「相続税評価額」というものを使います。道路1本1本に金額が定められており、それに面積を掛けて算出します。
インターネットで「路線価」で検索すると出てくる、「路線価図」のサイトで見ることができます。路線価が定められていない地域では、固定資産税の評価額をもとに計算します。
実際に売買される際の時価よりは低いのですが、それでも利便性の高いところではけっこうな金額になります。これをもとに算出される相続税の金額が大きくなり、その支払いのために自宅を追われる、ということにもなりかねません。
そこで、自宅については、路線価などで計算された金額の“8割引き”で計算してよい、という特例があります。それが「小規模宅地等の特例」です。
8割引きは、大きいですよね。1億円の土地を2000万円として計算しますので、それによって相続税がかなり小さくなる、またはかからなくなる、というケースが少なくありません。ただし、この制度の適用には、いくつかの条件があります。
マイホームを購入すると、優遇が使えない
まず、適用できる面積は330平方メートルまでです。そして、亡くなった人の自宅であることも条件です。相続する人については、3つのパターンが対象になります。
1 亡くなった人の配偶者
2 同居の親族
3 亡くなった人の配偶者、同居の親族がいない場合、3年以内に自宅を所有していない親族
(詳細については、国税庁サイト、税務署などでご確認ください)
3は、別居していても賃貸住宅暮らしで、まだマイホームを取得していなければ、優遇制度の対象になるということです。
マイホームは、本人だけでなく、配偶者や親族が保有しているものも含まれます。親と同居するつもりだったけど、仕事などの事情で同居ができなかった…という人を、優遇制度の対象にしているわけです。
このことから、親の自宅の地価が高く、相続税がかかりそうな人は、あえてマイホームを購入しないで賃貸住宅に住み続けるというのも、ひとつの方法です。
親が亡くなれば、その家をマイホームとすることができます。住みにくいようであれば、いずれは売却も可能です。(相続してすぐに売却すると、優遇が適用されませんので、注意が必要です)
相続税は金額が大きいので、節税できるかどうかで大きな差になります。消費税の引き上げで増える負担額よりも、はるかに大きな違いとなりえます。
もちろん、マイホームの購入は、税金面の損得だけで決めるものではありません。ご家族の希望やライフスタイルなどを考慮して選択したいものです。その際には、将来の相続税のことも検討要素に入れる必要がありそうです。
執筆者:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト