更新日: 2019.07.03 相続税

【相談実例】「相続が不安。ライフプランを考えたい」(4)

【相談実例】「相続が不安。ライフプランを考えたい」(4)
「65歳からのライフプラン」の4回目は、前回に引き続き相続に関する内容です。
 
相続が開始すると手続きが沢山あります。とても煩雑で、その多くには期限があります。生前に準備しておくことで、遺された家族の負担が軽くなることもあります。
 
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

ひとりっ子なので争族の心配はない? 納税資金は大丈夫?

このシリーズの(1)と(2)で金融資産の残高状況を把握しました。我が家に相続が起こった時に“相続資産評価額がいくらになるのか”を知るためには、(3)で試算した不動産の評価額を加えます。これで大まかな金額を捉えることができるはずです。
 
生前からできる相続対策は2つに分類されます。
1.遺産分割対策
2.相続税対策(節税対策・納税資金対策など)
 
遺産分割対策としては、遺言書の作成が有効です。時間があれば、「誰に何を遺すのか」を決めるにあたり、相続人が納得するように十分な検討をすることができます。何度でも書き換えることもできますし、形で残すことで思いも伝わります。
 
相続税対策は「節税対策」と「納税資金対策」が主な内容です。生前から準備することで、時間をかけて節税対策をすることができます。節税対策には、養子縁組をして相続人の人数を増やして基礎控除額を増やすことや、所有財産の評価額を減らすことなどがあります。
 

相続税の軽減対策

Sさん(58歳)は夫(65歳)と息子(26歳、会社員)の三人暮らしです。ご夫婦の老後の資金計画は目途がついたので、相続節税対策も考えています。暦年贈与と生命保険の加入について知りたいということでした。
 

(1)暦年贈与についての注意点を知りたい

 暦年贈与は、1年間(1月1日~12月31日)に贈与を受けた財産価格の合計額(課税価格)から基礎控除額110万円を差し引いた残額について贈与税額が計算されます。相続財産を減らす代表的な方法として、親から子に110万円以内ずつ贈与するというものがあります。この110万円は後の納税資金に活用することができますので、納税資金対策としても有効です。
 
注意点は主に3つあります。
 
1番目は、「名義預金」にならないように気を付けることです。贈与は贈与者(あげた人)と受贈者(貰った人)の両者が合意して成立します。
 
「子ども名義の口座に親が入金し、通帳は親が管理している」という場合は、贈与と認められません。子ども名義であっても、親の財産とみなされてしまいます。管理は受贈者が行い、贈与の成立を明解にしておくことが大切です。「贈与契約書を作成する」「110万円以内ではなく、あえて贈与税を払う金額を贈与する」ことは贈与の確証になります。
 
2番目は、子どもが散財してしまわないようにすることです。“資産家のドラ息子が豪遊”という、絵に描いたような派手な生活ではなくても、気を緩めると生活費は膨らんでしまいます。贈与された資金が子どもの資産形成に繋がるような仕組みを、親子で考えるのも一案だと思います。
 
3番目は、相続が発生した時に相続開始前3年以内の贈与財産は相続税の課税財産に加算されることです。ただし、相続や遺贈により財産を取得しない人への贈与は対象になりません。
 
Sさんの場合は息子さんが独身です。今後、結婚や孫の誕生、住宅購入の可能性があります。その時々に応じて資金援助も考えられます。使用目的の決まった資金贈与にも非課税制度がありますので、これを利用することを考えるのも良いと思います。
 

(2)生命保険(終身保険)に加入しておいた方が良いと聞くが、その理由を知りたい

 「お葬式くらいは自分で準備したい」というCMを耳にしますが、生命保険に加入するメリットは2つあります。
 
1.CM通り葬祭費用などを準備しておけるので、遺された家族のことを思うと安心
死亡保険金は遺産分割協議の対象外なので、速やかに現金化することができます。また受取人を指定するので、亡くなった後を委ねる人に現金を渡せます。
 
2.相続税の基礎控除以外に、死亡保険金の非課税枠がある
非課税枠:500万円×法定相続人の人数
契約者・被保険者が被相続人、死亡保険受取人が法定相続人の保険契約の場合のみ適用されます。
 
  例えば相続人が二人で、保険金の合計が1,500万円の場合
  1,500-500×2=500 相続税の課税対象額は500万円になります。
このように生命保険に加入することで、相続税課税財産を減らすことができます。
 

【ワンポイントアドバイス】

暦年贈与と生命保険の活用は、相続税対策の中で着手しやすい方法ですが、相続はいつ起きるか分かりません。自分の資産を減らし過ぎて、老後資金が不足してしまうことになっては本末転倒です。そのためにも、最初に作ったキャッシュフロー表を活用していただければ幸いです。
 
執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)
相続診断士
 

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