更新日: 2019.05.17 その他相続

あなたは? 家族は? 相続の申告が必要な人、不要な人

執筆者 : 秋口千佳

あなたは? 家族は? 相続の申告が必要な人、不要な人
平成27年に相続税の基礎控除額が改正されました。その結果、相続税の課税対象者の割合は、改正前の4%前後から、8%前後に増えています(国税庁より)。
 
これは、今まで相続税を申告する必要がなかったのに、申告しなければいけなくなった人がいる、ということを意味しています。
 
では、あなたは相続税の申告が必要なのか。確認しておきましょう。
 
秋口千佳

Text:秋口千佳(あきぐちちか)

CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士

あなたは相続税の申告が必要な人ですか?

相続税の申告が必要な人はお金持ちだと思われています。実際、申告が必要なのは、相続財産の総額が基礎控除額を超える人です。
 
【基礎控除額】
3000万円+600万円×法定相続人の数
 
つまり、この金額を超える課税額が発生する人は、相続税の申告をしなければなりません。
 

実際に計算してみましょう

あなたは4人家族(父・母・兄・あなた)だと仮定します。父が亡くなるとすると、基礎控除額は4800万円となります。
 
3000万円+600万円×3人(母・兄・あなた)=4800万円
 
父の財産が不動産と預貯金と投資信託で計6000万円だとすると、課税対象額は1200万円となり、申告が必要となります。6000万円-4800万円=1200万円
 
この時の相続税額は130万円です。1200万円×税率15%-控除額50万円=130万円(※)
 
一方、上記の財産の他に2000万円の住宅ローンが残っていたとします。すると、父の財産は4000万円となります。6000万円-2000万円=4000万円
 
ここから基礎控除額をマイナスするので、申告は不要になります。4000万円-4800万円≦0
 
※なお、詳細な相続税額の計算方法については、実際の方法とは異なりますので注意してください。

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課税対象額が基礎控除額以下またはゼロなのに申告する必要のある人

ここまでは原則の話です。原則があれば例外があります。一定の条件を満たせば減額措置を受けられる特例があるのです。代表的なものは以下です。
 
●小規模宅地等の特例
●相続税の配偶者控除
 
ただ、特例の適用を前提に計算し、課税対象額が基礎控除額以下またはゼロになっても、相続税の申告書を提出しないとその適用は認めてもらえません。つまり、相続税が発生するので、注意が必要です。
 

相続開始前3年以内の贈与にも注意が必要

相続税の申告には、その相続の開始前3年以内に被相続人(亡くなった人)から受けた贈与について、その贈与分を相続財産の一部とみなす規定があります。
 
先ほどの例で考えてみましょう。相続の開始前3年以内に、母と兄とあなたが父から1000万円ずつの財産を贈与されていたとします。すると、住宅ローンがある場合でも財産の価額は7000万円となります。
 
6000万円-2000万円+1000万円×3(母・兄・あなた)=7000万円
 
つまり、基礎控除額4800万円を超え、相続税の申告が必要になります。税額は280万円です。(※)
 
(7000万円-4800万円)×税率15%-控除額50万円=280万円
 
※なお、この相続税額の計算方法については、実際の方法とは異なりますので注意してください。

相続税の申告が必要かどうか、1年に1回のリスト更新で把握可能

自分に万一のことがあった場合に、家族が相続税の申告が必要になるかどうかは、財産一覧表を作り、毎年更新することで確認できます。
 
一覧表は、パソコンの表計算ソフトなどを使って簡単に作れます。
 

 
このように、毎年、年末や誕生日、記念日といった覚えやすい日に一覧表を更新していくと、財産の総額が把握できます。
 
年齢は関係ありません、あなた自身がこの一覧表を作成することで、あなたに万一のことがあっても、遺される家族が混乱することなく、その後の手続きも容易になるのです。
 
財産一覧表を作って1年に1回更新し、相続税の申告が必要になるかどうかを把握しておいて損はありません。申告が必要な資産状況であれば、節税や納税資金対策が早い時期からできるため、相続が恐いものではなくなります。
 
まずはこの一覧表を作ることから始めてみてはいかがでしょうか。
 
参照・出典
国税庁:平成28年分の相続税の申告状況について
 
※2018/12/04 内容を一部修正させていただきました。
 
Text:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士

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