更新日: 2019.01.07 贈与

<相続税対策> 相続財産を少しでも減らす。子・孫への生前贈与

<相続税対策> 相続財産を少しでも減らす。子・孫への生前贈与
相続財産を減らす効果的な方法は、子や孫への生前贈与です。相続税が減るだけでなく、贈る側の立場から、意向を反映させることができるからです。その意味では贈与は、生前に実行する遺言であり、親が子や孫への意思表示になります。
黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

贈与をするメリットは多い

贈与税は110万円まではかかりません。毎年贈与することもできますし、だれにでも贈与できます。例えば、介護で世話になった長男の嫁へ、相続はできませんが贈与は可能です。これが贈与税の特徴です。贈与を行うは、できれば贈与契約書を交わし、もし110万円を超える金額になっても、基準に従って贈与税を支払うことが得策です。納税することで、贈与をした証拠が残り、相続の時に脱税を疑われることも少なくなります。
贈与は子や孫への相続が起こる前にできますので、相続財産をどう配分していくかという指針も、親などの贈与側が示すことができます。贈与を行うメリットとして、主なものは次の点です。

① 相続財産の総額を段階的に減らすことができ、事前の相続税対策になる
② 生前にできるため、財産配分にあたって贈与者の意思を反映できる
③ 相続とは異なり何度でも実行可能で、結果として多くの財産を移転できる
④ 相続権のない人へ感謝の気持ちを、贈与という表現で報いることができる
⑤ 贈与を受けた人が有効に活用でき、贈与者へ感謝の気持ちも生まれる
⑥ こうした贈与がきっかけとして、今後起こる相続にどう対応するかも決めることができます。不動産や金融資産は、時間をかけて少しずつ贈与していくことが賢明です。

贈与の際の注意点もある

贈与を行う場合に配慮すべき点もあります。メリットを重視するあまり、間違ってしまうこともあります。その注意点としては、

① 財産の移転を重視するあまり、自分の資産を減らし過ぎ生活苦になる
② 贈与ししていない親族から、場合によっては反発される
③ 贈与を受けた側が、将来計画を立てずに無駄遣いをする

といったことがあげられます。金融資産の移転などは、子や孫への生前贈与としては、きわめて効果的ですが、細かい点を配慮したうえで、進めたいものです。
 

結婚式の費用や住宅資金の援助を

子や孫に対する生活費やお小遣いなどは、常識の範囲内であれば課税されません。子の将来に対する投資と考え、多いに活用すべきです。比較的高額な贈与となる、子の結婚式の費用や住宅資金の援助なども、工夫すれば課税対象になりません。
結婚式の費用援助は、具体的上限は示されていませんが、世間常識の範囲内であれば非課税です。住宅資金の援助は、耐震性や省エネなど住宅の性能により金額の差がありますが、一定の金額(300万円~700万円)が、非課税で贈与できます。それぞれの親から住宅資金の援助を受けることで、その効果は倍増します。高齢の親世代は金融資産を多く所有しており、子や孫への移転を進めることで、消費を促進し経済の好循環を期待する、国の意図も読み取れます。
孫に対する贈与は、子に対する贈与よりさらに効果的です。その理由は、子の世代をパスすることで二重に相続税を納付することが回避でき、親世代が持つ相続財産の減少にも寄与できるからです。さらに、子に対する贈与の場合、子は法定相続人のため、3年以内に親が死亡すると、贈与財産は相続とみなされ相続税として再計算されます。孫への贈与は、祖父・祖母が死亡直前でも、贈与時点で移転が完了します。

1500万円まで孫への教育資金は無税

祖父母から孫やひ孫への教育資金の援助は、さらに優遇された制度です。これは、現在のところ、2019年3月までの期限付き制度ですが、孫1人につき総額1500万円までの教育資金の贈与は課税されません。利用できる基本は、学校の入学金や授業料が対象ですが、塾や予備校、また各種習いごと(対象外もある)に使う際にも、対象になります。
もし孫が3人いると、総額で4500万円まで非課税で贈与できる計算です。これはかなり大きな金額で、将来の相続を考えると、節税効果も絶大です。1人につき総額1500万円以内の金額であれば、1回ではなく数回に分けて贈与することもできます。

所定の手続きを必ず実行

ただし、注意すべき点があります。第1に、金融機関経由で税務署に非課税申告することです。個人的に孫に渡す、通帳に入金する行為は認められません。第2に、30歳時点で残した金額がある場合は、贈与税がかかります。教育目的での利用が大原則です。第3に、学校の授業料・入学金以外は、利用範囲が500万円までです。例えば、塾などの学費、ピアノや体操教室などの月謝が、これにあたります。
祖父母からの多額の贈与が受けられるため、孫に対する教育方針の変更も可能になります。学費の援助は大学に限ってはいないので、教育面での選択肢が広がります。これまで「小中学校は費用の安い公立で」と考えていた人でも、私立の小中学校へ通わせることが出来ます。
また相続がかなり近いと感じた時点で、孫へ教育資金贈与ができれば、相続財産を大きく減らせる効果もあります。相続人となる子への贈与は、相続発生時から3年以内の場合は、相続税として再計算の対象になりますが、孫への贈与は、この対象ではないからです。

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