更新日: 2019.08.19 相続税
<相続税対策>相続財産の評価を下げる。預貯金より不動産が有利だが
それぞれの資産がもつ特性
近い将来の相続を考える際、大きく別けると、金融資産を多く持つか、不動産を多く持つかの選択になります。銀行預金などの金融資産は流動性が高く、いつでも第三者に移転ができます。預貯金・国債などは、金額自体が減少することはありませんが、株式・投資信託などは、株価が下がることで資産価値が目減りすることもあります。その中で、金の保有は、自宅でも保管でき、比較的価格も安定しているため、古くから相続税対策として、根強い人気があります。
また相続に際して、預貯金は死亡した日の残高で、株式などは死亡した日の終値で評価されます。残高そのものが時価で評価され、他の資産と比べ不利です。相続を考えると、金融資産が中心になると、土地などの資産を保有するより条件は悪くなります。
その他の財産では、相続時に、自家用車は下取り価格で、ゴルフ会員権は相場の70%で、美術品・骨董品は鑑定価格で、家財道具は再調達に必要な金額で評価されます。金融資産に比べ、評価はかなり割安です。ただし、ゴルフ会員権は値下がり傾向が強く、美術品・骨董品も、相続税対策として、ただ買い集めればよいものではありません。
不動産の評価額も、その他の財産と同様に金融資産に比べ割安です。不動産は実際に売却してみないと、その価格は確定しません。また簡単には売買することができないため、流動性の低い資産です。そのことが考慮されるため、評価額が低く抑えられています。
不動産価格の評価方法は
不動産には土地と建物がありますが、通常圧倒的に高い比重を占めているのが土地です。個人の場合は宅地になります。建物の評価には、納税通知書に記載された、固定資産税評価額が使われます。宅地の評価は、実際に取引された事例(これを「実勢価格」といいます)を参考に価格が決まります。
都市部の場合は、実勢価格の8割程度の価格を「路線価」として公表、とくに宅地の評価を決める数値となり、相続の際にもこの路線価が適用されます。都心部は80%より低い評価に、郊外は80%より高い評価になる傾向があります。毎年、国税庁では路線価をホームページなどで公表していますので、参照ください。地方で路線価が公表されない地域では、それに準じた「倍率方式」で評価します。
とくに将来、子が家を新築する予定があるなど、宅地の利用計画があるときは、金融資産より土地の保有は有利です。土地の評価額については、間口が狭い、傾斜地になっている、墓地や工場に隣接しているなど、その形状や周囲の環境で、決まっている路線価より、さらに評価額は下がります。所有する宅地を意図的に分割し、相続分として形状の悪い土地を残し評価額を下げることも出来ます。
売却できるかが最大の課題
ただし不動産で注意すべき点は、それを購入する際ではなく、売却する際です。もともと金融資産に比べて流動性が低いため、容易に売却できない、という性質があります。土地の価格は変動し、地域の事情によっては大きく下落することもあります。人口減少社会が現実となり、今後土地の価格が上昇する保証はありません。相続時に土地保有が有利だからといって、利用目的も考えずに、購入するのは慎重にすべきです。
結果として、土地よりも金融資産で保有したほうがよかった、後悔するかもしれません。安く買えたからといって形状の悪い土地を所有すると、将来売りにくいというマイナス点も抱えてしまいます。利用計画を考えずに土地の購入は注意したいものです。
貸家建設で土地の評価を下げる
空いた土地があり、そこにアパートなどを建て、人に貸すことができれば、土地の評価減と家賃収入という、ダブルの恩恵が受けられる可能性があります。住宅ローン金利も大きく下がっているため、金融機関も貸出に積極的です。
確かに、貸家があるとその土地の評価は、通常の70%程度に下がります。相続税対策として、余裕資金で建設することは効果的です。ただし、借り手である若い世代が減少しており、将来的にもアパート需要が伸びる保証はありません。大学や工場に近いなどの好立地があればいいのですが、現実には供給過剰となる危険もあります。
そのためには、家賃相場の下落と空室増を前提に、無理な計算をしない判断が必要です。建設のために多額の借入れをする、家賃収入に期待をかけるのは危険です。あくまで、相続財産の評価を下げることが目的と認識しておいてください。