更新日: 2024.01.29 相続税

親の死後に実家を相続した後で、出てきた「掛け軸」を鑑定したら「300万円」の値が付きましたが、これって税金かかりますか?

執筆者 : 柘植輝

親の死後に実家を相続した後で、出てきた「掛け軸」を鑑定したら「300万円」の値が付きましたが、これって税金かかりますか?
実家を相続した後、思いもよらないところから骨とう品が出てくることや、ゴミだと思っていた骨とう品が実は高価だったと発覚することがあるようです。もし、そういったものが出てきた場合、税関係はどうなるのでしょうか。
 
300万円の掛け軸が出てきたという事例を基に、考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

相続税のかかる財産の範囲を確認

まずは、相続税のかかる財産の範囲を確認していきましょう。この点は非常にシンプルです。基本的に相続人となる方は死亡した人の財産を全て引き継ぐことになります。そのため、その全てが「相続税のかかる財産」となるわけです。
 
ここでいう「財産」とは、現金や有価証券、宝石や土地など、分かりやすく価値のあるものだけではありません。金銭に見積もることができるもの全てが「財産」となります。そのため、骨とう品や掛け軸であっても、それが価値のあるものであれば、財産として相続税がかかります。そのため、300万円の掛け軸は、相続税の対象となる、れっきとした「財産」です。
 

300万円の掛け軸に、必ずしも相続税が課税されるとは限らない

「相続によって財産を得た」という話はよく聞く反面、「相続税を払った」ということを聞く機会は少ないと思いませんか? それもそのはずです。相続税には「基礎控除」というものがあるからです。相続税における「基礎控除」とは、給与に対する給与所得控除のようなもので、その範囲内にあれば相続税がかかりません。
 
基礎控除の額は、3000万円+(600万円×法定相続人の数)となっています。つまり、少なくとも3600万円までは相続税がかからないのです。要は、300万円の掛け軸が出てきたとしても、相続税の総額が基礎控除の額を超えなければ相続税はかからない、というわけです。
※出典:国税庁「No4152 相続税の計算」
 
仮に相続人が母と自分と妹の3人であった場合、4800万円までは相続税がかかりません。そして、相続財産がもともと2500万円だったとしましょう。このケースにおいて、300万円の価値がある掛け軸が見つかった場合、相続財産の総額は2800万円です。この額は基礎控除4800万円の範囲内であり、相続税がかかりません。
 
これで、相続の話を聞くわりに「相続税を払った」という話を聞くことが少ないのも、納得できたでしょう。
 

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もし相続税が生じる場合はどうすればいい?

もし、300万円の掛け軸が出てきたことで、相続税が新たに発生したときは、急ぎ相続税の申告と納税を行いましょう。国税庁「相続税の納付」によると、相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行うことになっているため、速やかに手続きをしなければなりません。
 
また、既に申告と納税を済ませている場合は、急いで修正申告をしましょう。そして、修正申告書の提出の日までに、相続税の納付を済ませるようにしてください。修正申告における納付は、申告書を提出した日が納付期限となるからです。
 
もし、納付期限に遅れてしまうと、納付期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは、原則として年7.3%の延滞税が発生します。加えて、2ヶ月を経過した日以降は、年14.6%の延滞税が生じるため注意が必要です。
 
相続税の申告と納税は、インターネットを利用すれば申告から納税までの全てを自宅でも完結させることができ、忙しい方でも行えるようになっています。相続税の申告と納税は、敷居が高く感じられることもあります。亡くなった方(被相続人)の住所地を管轄する税務署が申告・納税先となるため、詳細についてはそちらへ相談してみるといいでしょう。
 

まとめ

財産の中に価値のあるものがあると後々分かった場合、それは課税対象となるため、基礎控除を超える場合は相続税の申告と納税をしなければなりません。特に300万円の値が付く掛け軸のような、高価な骨とう品が見つかった場合は、相続税の基礎控除を超える可能性もあるため、注意が必要になります。
 
もし、骨とう品など値段の高くつきそうなものが相続後に出てきた場合、速やかに相続税について確認するようにしてください。
 

出典

国税庁
 相続税の納付

 No4152 相続税の計算
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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