更新日: 2024.01.27 贈与

孫に毎年お金を渡したら、年間「110万円以下」でも贈与税の対象に? 定期贈与の落とし穴について解説

孫に毎年お金を渡したら、年間「110万円以下」でも贈与税の対象に? 定期贈与の落とし穴について解説
孫に自身の財産を譲る際、年間110万円を超えると贈与税がかかるため、1年間に渡すお金を110万円以下にしているという人も多いでしょう。しかし、贈与額が110万円以下でも「定期贈与」と見なされ、贈与税がかかってしまうケースがあります。
 
本記事では、この定期贈与について説明します。

贈与税とは

贈与税とは個人が無償でお金などの財産を渡した時に課される税金のことです。1月1日から12月31日までの1年間で一定額以上を渡すと贈与税が発生し、贈与を受けた人が課税されます。
 

いくら渡すと贈与税になるの

贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。
 
「暦年課税」の場合は、年間110万円までの基礎控除枠が設けられており、1年で110万円までの贈与であれば税金がかかりません。子どもや孫にお金を渡す場合、「1年間で110万円まで」といわれるのは、この基礎控除額110万円からきています。
 
税率は図表1、図表2のとおりです。
 
<一般贈与財産用>(一般税率)
特例贈与財産用に該当しない場合の贈与税計算に使うものです。例えば兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などに用います(図表1)。
 
図表1

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) より筆者作成
 
<特例贈与財産用>(特例税率)
贈与を受けた人がその年の1月1日において18歳以上の場合に、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与を受け、取得した財産にかかる贈与税の計算に使用します。
 
例えば祖父母から孫、両親から子への贈与などに使用します(図表2)。
 
図表2

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税) より筆者作成
 
一方、「相続時精算課税」の適用を受けるには相続時精算課税選択届出書が必要です。
 
相続時精算課税制度の場合、贈与を受けた財産の合計額から2500万円の特別控除枠を控除した残額に対して贈与税が課されます。2500万円の控除枠は贈与した人が亡くなるまで継続し、もらった財産の合計額が2500万円を超えた分に対して一律20%の税金が課されます。
 
なお、20241月1日に制度が改正され、年110万円以下の贈与であれば贈与税がかからず、2500万円の特別控除に含める必要がなくなりました。
 

贈与税の対象になるもの

贈与税の対象となるパターンとして、以下の例が考えられます。

●個人が受け取った財産の年額が110万円超
●生命保険や損害保険の満期保険金を掛金負担者以外が受け取った
●時価相場よりも低い金額で親族から財産を譲渡された
●親族に負債(借金など)を免除してもらった
●不動産取得時に資金の負担割合とは異なる割合で持分登記した
●多額の金銭を無利息・催促なしのある時払いで借りた(客観的に返済不可と考えられる金額)

金銭だけでなく、自分で支払っていない生命保険などの満期保険金を受け取った場合や不動産や骨とう品を無償または時価より低い価格で受け取った場合、借金を肩代わりしてもらった場合も贈与税が課されることになります。
 

定期贈与の落とし穴

毎年110万円以内の贈与であれば贈与税がかからないと述べましたが、例外があります。それが「定期贈与」にあたる場合です。
 
定期贈与とは毎年一定額を渡すことが決まっている贈与のことを言います。例えば1000万円を毎年100万円ずつに分けて渡すことを決めた場合は定期贈与に当たります。この場合、定期贈与の取り決めをした年に、贈与額の合計額に対して贈与税がかかります。
 
つまり、1000万円を毎年100万円ずつに分けて渡す場合は、定期贈与すると決めた年に1000万円に対する贈与税がかかることになります。
 
注意しておきたいのが、事前に定期贈与に当たる取り決めを結んでいなかったとしても、毎年同額の贈与を続けていると、後から税務署に定期贈与と見なされる場合があることです。
 
したがって毎年、子や孫にお金を渡したい場合は、定期贈与と見なされないようにお金の渡し方を工夫する必要があります。
 

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定期贈与にならないために気を付けるべき3つのポイント

前述のとおり、毎年同じ額を渡し続けていると定期贈与と見なされてしまう場合があります。定期贈与と見なされないための3つのポイントをご紹介します。
 

毎年違う金額を贈与する

毎年同じ額を長期間にわたって贈与すると、「贈与の開始時に全ての金額を渡すつもりだった」と判断され、一括で贈与税がかかってしまう場合があります。そうならないよう、1年目は110万円、2年目は109万円といったように毎年渡す金額を変えることを検討しましょう。
 

毎年違う時期に贈与する

贈与する月日が毎年同じだと、定期贈与と見なされる場合があります。贈与の月日を毎年変更しましょう。
 

贈与契約書を作る

贈与を行った時に問題となるのが、「毎年110万円の控除内で本当に贈与が行われたのか」という点です。実際に贈与したという証拠を残すため、「贈与契約書」を作成しましょう。毎年違う金額を、違う月日に渡したことを証明するために、贈与金額と贈与年月日は必ず記載します。
 

まとめ

毎年同じ月日に同額の贈与を長い間繰り返すと、後になってから税務署に定期贈与と見なされ、渡したお金の合計金額に対して贈与税が課される場合があります。毎年違う額、違う月日に贈与を行い、贈与契約書を作成することが大切です。
 

出典

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
 
執筆者:沢渡こーじ
公認会計士

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