更新日: 2024.01.21 贈与

父が、孫のために「毎年110万円ずつ15年間渡す」と言っています。「非課税」だから問題ないそうですが、本当に大丈夫でしょうか? 注意すべき点を教えてください

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

父が、孫のために「毎年110万円ずつ15年間渡す」と言っています。「非課税」だから問題ないそうですが、本当に大丈夫でしょうか? 注意すべき点を教えてください
祖父母が自身の子どもや孫のために資産を残してあげたいと考えるのは不思議なことではありませんが、いざ渡す際に気になるのが贈与税や相続税などの問題でしょう。
 
それぞれ控除される部分があるため、それを超えなければ課税されないと考える人は多いかもしれませんが、たとえ控除枠におさまっていても必ず非課税になるとは限りません。
 
本記事では、祖父が孫のために毎年110万円ずつ15年間贈与する場合は課税されるのか、注意すべきポイントはあるのか、今回は2024年1月からの法改正の内容もふまえて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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基礎控除額以下でも贈与税がかかることもある

今回祖父が「毎年110万円ずつ15年間渡す。非課税の範囲内だから問題ない」と発言していますが、これは110万円以下であれば贈与税の暦年課税の基礎控除額の範囲を超えず、課税対象金額がゼロになるからという意味です。
 
祖父と孫との間で毎年贈与契約を締結し、契約内容に基づいて着実に贈与が行われ、毎年の贈与額が110万円以下であれば基本的に贈与税はかかりません。ただし、将来にわたって贈与されることがあらかじめ決まっている場合は、定期的に贈与を受ける権利を受けているとみなされて贈与税がかかることがあります。
 
今回の場合も、祖父が「毎年110万円ずつ15年間渡す」と発言しており、よほどのことがない限り今後15年間は毎年110万円ずつ贈与を受けることが約束される形です。そのため、たとえ毎年の贈与額が基礎控除額以下であっても課税対象となります。
 

生前贈与加算期間の延長

主に自分が亡くなった際に発生する相続税の負担を軽減するために、子どもや孫などに生前贈与をしたいと考える人は多いかもしれませんが、法改正により2024年1月から贈与や相続に関する取り扱いが大きく変わりました。
 
これまでは生前贈与をしてから3年以内に相続が発生すると相続財産に加算しなければなりませんでしたが、今回の法改正で生前贈与加算期間が3年から7年に延長されました。
 
例えば、2024年2月1日に生前贈与を行い2028年6月30日に亡くなったとします。旧制度では2025年6月30日までの期間が相続税の対象でしたが、新制度では2024年2月1日の贈与も相続税の対象に含まれます。
 
これだけみると納税する側にとっては不利になったといえるかもしれませんが、今回延長された4年分については総額100万円まで控除できる仕組みが作られたのは見逃せないポイントです。
 
なお、生前贈与加算期間の延長は相続人に対する贈与が対象です。つまり孫や子どもの配偶者など相続人ではない者は原則対象外となる点にも要注意です。
 

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相続時精算課税の法改正と注意点

贈与税には暦年課税のほかに「相続時精算課税制度」が存在します。原則60歳以上の両親や祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対して財産を贈与した場合に選択できるものです。「最大2500万円の特別控除額」が活用できるため、多額の財産を渡したい人にとってはメリットがあります。
 
今回の法改正では、相続時精算課税制度を選択した場合も、特別控除額とは別で110万円の基礎控除枠が設定されました。これにより110万円以下の贈与であれば相続財産への加算も不要なので、場合によっては暦年課税よりも有利になるケースもあります。ただし、いったん相続時精算課税制度を選択すると途中で暦年課税に戻せないため、慎重に検討する必要があります。
 

結局どうするべき? 祖父から孫への贈与で注意したいこと

今回の法改正をふまえると、原則相続人とならない孫に対しては従来どおり暦年贈与で110万円ずつ渡すと、できる限り税負担を軽減しながら生前贈与対策を行うことができると考えられます。ただし、定期贈与とみなされると課税される可能性があるため、将来的に1500万円以上渡すと約束するのではなく、金額も固定せずに毎年贈与契約を交わすことをおすすめします。
 

まとめ

本記事では、祖父が孫のために毎年110万円ずつ贈与する場合、基礎控除額の範囲内であれば非課税となるのか、法改正の内容もふまえて注意したいポイントについて解説しました。
 
贈与や相続は状況が複雑に絡み、適正な対策や申告手続きができなければ、後日、税務調査を受ける可能性もあります。具体的な計算方法や制度活用のメリット・デメリットは人それぞれ異なるので、分からないことは税理士や税務署に質問してみましょう。
 

出典

国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
国税庁 令和5年度相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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