更新日: 2024.01.17 相続税

古い棚を処分しようとしたら、亡くなった母の通帳を発見!「80万円」ほど入っていましたが、勝手に相続していいですか?

執筆者 : 柘植輝

古い棚を処分しようとしたら、亡くなった母の通帳を発見!「80万円」ほど入っていましたが、勝手に相続していいですか?
実家にある古い棚を処分しようとしたら、亡き親の遺品が出てくる、といったことはよくある話です。ではその遺品が、80万円の現金が入った口座の通帳であったらどうでしょうか。
 
既に遺産分割が終わっている場合、見つけた人のものとして勝手に相続してもいいのでしょうか。考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

新たに見つかった遺産を、勝手に相続したことにしてはいけない

亡くなった親の遺産が新たに見つかった場合、それは原則として遺産分割の対象となります。それも当然で、基本的に親の残した遺産は、遺言書で特に指示のない限り、相続人間の遺産分割で、誰がどのように相続するかを全て決めるからです。
 
遺産分割後に新たな相続財産が見つかった場合も同様で、新たに見つかった財産について相続人で再度話し合い、どのように遺産分割をするのか話し合う必要があります。
 
万が一、勝手に「自分が相続したもの」としてその相続財産を消費してしまうと、共有物を勝手に処分したとして他の相続人から損害賠償請求をされたり、不当な利益を得たとして不当利得返還請求などをされたりする可能性があります。
 
なお、新たに遺産が見つかっても、基本的に既に成立した遺産分割に影響はありません。例えば今回のように、見つかったものが80万円の通帳で、その80万円の存在が最初から明らかではなかった場合でも「遺産分割の内容が変わっていた」などよほどの事情がなければ、既に成立した遺産分割に影響はありません。
 
また、以前の相続人の中に亡くなっている方がいる場合は、その亡くなった方の相続人と、以前の遺産分割をやり直す必要も出てくる可能性があります。もし「以前の相続人の中に亡くなっている方がいて、遺産分割ができない」という場合は、一度専門家に相談することをおすすめします。
 

新たな財産が見つかった際の帰属先が決まっている場合は別

1つ注意点として挙げられるのは、新たな遺産が見つかった際、その帰属先が既に遺産分割で決められていた場合、その遺産は定められたとおりに遺産分割されるということです。
 
例えば、「時価総額100万円以下の財産が見つかった場合、全て長男Aが相続する」といった取り決めがあれば、それは遺産分割の対象とはならず、直接長男が相続したことになります。
 
いずれにせよ、新たに相続財産が見つかった際は、見つけた人が勝手に相続したことにしてはいけない、ということです。
 

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相続税はどうなる?

あまりある例ではありませんが、新たに相続財産が発見されると、相続税が発生する場合があります。相続税は「3000万円+600万円×法定相続人の数」まで非課税となります。
 
※出典:国税庁「No.4152 相続税の計算」
 
少なくとも3600万円まで相続税がかからないことを考えると、一般的には80万円の財産が追加で見つかっても、相続税が発生することはほとんどありません。しかし、これまでの相続財産の額によっては発生することもありうるため、確認が必要です。
 
なお、相続税が発生する場合は新たに相続税の申告や、一度した申告を修正する必要などがでてきます。詳細については、納税先の税務署へ相談するといいでしょう。
 

まとめ

相続財産が新たに発見されたとき、それは一時的に相続人全員の共有物となるため、その発見された財産については遺産分割をする必要があります。勝手に見つけたからと、自分が相続したことにしてはいけません。
 
また、新たに財産が発見されたことで相続税が生じる可能性もあります。もし、相続財産が新たに見つかった場合、相続人でしっかりと遺産分割時に話し合うとともに、相続税の存在についても確認しておくことをおすすめします。
 

出典

国税庁 No.4152 相続税の計算
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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