更新日: 2019.01.07 遺言書
相続に関する規定が大幅改正 これによって遺言書の作成が簡単になるのか
このうち、遺言に関する改正として、「自筆証書遺言の一部をパソコンで作成することが可能になること」また、遺言書を保管するための「法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)」が新設されたことなどがあげられます。
今後、自筆証書遺言が利用しやすくなります。
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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利用しやすくなる自筆証書遺言
遺言をする場合、一般に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の2つが利用されています。
「公正証書遺言」は遺言の内容を公証人に伝え、公証人がその内容を書き取って遺言書を作成するものです。遺言書の原本が公証役場に保管されるので紛失の心配がなく、公証人が作成することで形式面での不備もなく安心できます。ただし、作成には手数料がかかり、その際に証人2人の立ち会いが必要になります。
一方、「自費証書遺言」は自分で作成して押印すればよいので、誰にも知らせずに作成できて、コストもほとんどかからない点がメリットです。ただし、遺言には厳格な様式が求められるため、一般の人が実際に作成するとなるとかなり大変で、躊躇してしまうことも少なくありません。
自筆証書遺言も一部パソコンで作成可能に
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自筆で書かなければならないため、財産の種類が多いと手間がかかります。また、書き方や内容に不備があると、遺言そのものが無効になったり、遺言した人の意思どおりにならなかったりすることもあります。
このため、自筆証書遺言を考えていても実際に作成しないまま亡くなってしまい、後々相続争いになることがあります。
改正相続法では、自筆証書遺言の方式が緩和されました。「誰にどの遺産を分割する」という遺言書の本文は自筆で書かなければなりませんが、自筆証書にパソコンなどで作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を添付することで、遺言を作成することが可能になります。
遺言書を書いてから、預貯金や不動産などの財産の具体的な内容が変わることもありますが、財産の目録をパソコンで作成していれば変更にも対応しやすくなります。
ただし、目録には1枚ずつ(両面の場合は両面とも)遺言した人の署名・押印が必要となります。目録の部分は自筆でなくてもよいので、不安な方は間違いがないように弁護士や行政書士などの専門家に作成を依頼することもできます。
この自筆証書遺言の方式の緩和については、2019年1月13日から施行されます。遺言を作成した人が施行日後に亡くなったとしても、自筆証書遺言が施行日より前に作成された場合は現行の方式が適用されます。そのような場合、すべて自筆でなければならないので注意が必要です。
保管場所に悩む自筆証書遺言
自筆証書遺言は、せっかく書いてもどこに保管したらよいか頭を悩ませます。懇意にしている弁護士や税理士などに預けたり、金融機関の貸金庫で保管したりする人もいます。しかし、秘密にしておきたいからと誰にもわからない場所に保管しておくと、いざというときに見つけられずに、せっかくの意思が伝わらなくなってしまう可能性があります。
一方、見つかりやすい場所に保管しておくと、自分に不利な遺言をされた相続人に隠されたり、捨てられたりする問題があります。また、遺言をした後になくしてしまったり、認知症にかかって忘れてしまったりするリスクもあります。
自筆証書遺言は法務局での保管が便利
遺言書保管法ができたことによって、遺言書の保管場所の悩みが解決できるようになります。遺言書の保管制度は、遺言書保管法が公布された2018年7月13日から2年以内に施行されることになっています。
遺言書の保管は、遺言した人が法務局に出頭して保管の申請をすることによって行います。その際には、遺言書のほか、本人確認書類など所定の書類が必要です。提出された遺言書は、法務局で法律上の形式が整っているかの確認が行われるため、遺言書の形式上の不備を防ぐことができます。
法務局では、提出された遺言書に不備がなければ原本を保管したうえで電子データとして管理します。法務局で保管された遺言書は、遺言した本人が訂正したい場合や、破棄したい場合は取り戻すことができます。また、訂正や作成し直した遺言書を再度保管申請することもできます。
遺言した人が亡くなった場合は、相続人等の関係者が法務局で遺言書の有無や遺言の画像データの確認などをすることができます。また、相続人等の誰かが遺言書を閲覧したり、電子データで保管している情報を証明した書面の交付を受けたりすると、法務局から他の相続人等に遺言書を保管していることが通知されます。
なお、自筆証書遺言は家庭裁判所で検認を受ける必要がありますが、法務局で保管されている遺言書についてはこの検認手続きが不要になります。
遺言に関する法改正や遺言書保管法の創設によって、これまで厳格さが求められていた遺言書に関する規制が緩和され、利用しやすくなります。近年、終活に対する関心が高まっていますが、相続に向けて遺言書の作成を検討してみてはいかがでしょうか。
Text:FINANCIAL FIELD編集部