父が相続税対策で「毎年100万円」贈与してくれます。110万円以下なら贈与税はかかりませんか? 契約書がないとトラブルになるって本当ですか?

配信日: 2024.01.06

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父が相続税対策で「毎年100万円」贈与してくれます。110万円以下なら贈与税はかかりませんか? 契約書がないとトラブルになるって本当ですか?
相続税対策として、毎年少しずつ親からお金を受け取りたいと考える人は多いでしょう。遺産相続のとき多額の相続税がかかると、相続する子にとっては大きな経済的負担になってしまいます。親が元気なうちに対策を講じておくことは望ましいのですが、贈与の際にきちんとした手続きを取っていないと後で思わぬトラブルを招く恐れがあります。
 
本記事では、贈与税の非課税枠と贈与のときにぜひ作成しておきたい「贈与契約書」について説明します。

「毎年100万円」なら贈与税は非課税!

贈与税は暦年課税と相続時精算課税の2種類の課税方法があります。暦年課税の場合、「贈与税は1人の人が1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません」と定められています。さらに贈与税の申告も不要です。
 
今回は「父から毎年100万円の贈与」ですから、1年間のうちに贈与されるのが父からの100万円だけであれば、基礎控除額の110万円内なので贈与税は非課税になります。
 

「贈与契約書」が無いとどんなトラブルが起きる?

贈与は民法第549条により「当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められています。つまり「これから毎年100万円ずつ贈与する」と口約束をされた段階で贈与契約は成立します。しかし、贈与契約を有効な契約書として作成しておかないと、下記のようなトラブルが起こる可能性があります。
 

贈与の内容を忘れる、間違える

100万円といわれたのに実際は30万円しかもらえなかったり、約束したこと自体を忘れてしまったり、口約束の場合はいったいわないのトラブルにつながることが多いです。誰が誰にいくらを贈与するという双方合意の内容を文書として残すことで、こうしたトラブルを回避できます。
 

契約の不履行を防ぐ

また民法第550条では「書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる」と定められています。口約束の贈与契約の場合、贈与側・受贈側のどちらか一方から契約解除を申し出れば成立するということです。
 
1度は贈与するといった親が心変わりをして「やっぱりお金はやらない」となれば、もらえるはずのお金はなくなってしまいます。こうした不安定な状態にならないためにも、書面を残しておいた方が安心です。
 

税務署から贈与の事実を否認されることを防ぐ

例えば、親に子が自分名義の銀行口座を知らせて毎年100万円ずつ預金してもらうとしましょう。この場合、税務署から「親のお金が子名義の口座に移されている」と判断されることがあり、これを「名義預金」といいます。
 
贈与のつもりで積み立てられた子名義の預金を、親の死後に税務署が親の財産と判断し、相続税の対象とされる可能性があるということです。こうした状況を避けるためにも、移されたお金は贈与であると第三者に証明できる贈与契約書は有効です。
 

なぜ贈与が相続税対策になるの?

相続税の対象となる相続財産には、故人の生前に行った贈与財産も一部含まれます。これは、相続税を逃れるために故人の死を前に大量の贈与を行うことを防ぐためです。
 
相続税の対象となる贈与については2023年度税制改正により、2023年までは生前3年まで、2024年以降は生前7年までが相続財産に加算されます。相続税対策ための贈与は、対象期間より前に行われている必要があるため、親子間で財産をどのように贈与していくか、長期的な視野に立って計画することが大切です。
 

まとめ

 

相続税対策として「毎年100万円」を贈与するときは、贈与の内容と双方の合意の事実を書面にして贈与契約書を作成しておくとよいでしょう。また相続税の負担を最小限にするために、長期的な計画のもとに贈与を行うことが大切です。
 

出典

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
e-Gov 法令検索 民法
国税庁 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし
 
執筆者:根本由佳
FP2級、中小企業診断士

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