更新日: 2024.01.04 その他相続

年始に親戚同士で集まったら、亡き父の遺産「1000万円」をめぐって喧嘩になりました。長男の私が多くもらっても問題ないですよね?

年始に親戚同士で集まったら、亡き父の遺産「1000万円」をめぐって喧嘩になりました。長男の私が多くもらっても問題ないですよね?
仲の良かった親戚同士が、遺産を巡って相続争いを起こすという話は、決して珍しいものではありません。特に、遺産分割に関する争いは令和4年においては1万2000件以上起きており、決して人ごとではありません。
 
そこで、今回は相続について、1000万円の遺産を巡る争いを例に、考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

相続人の範囲はどうなっている?

法定相続分は、相続人となりうる者の範囲によって明確に定められています。基本的には、亡くなった方の配偶者は必ず相続人となります。その配偶者と共に、亡くなった方の子、父母、兄弟姉妹の中で、最も優先順位の高い者が相続します。
 
また、相続分の割合は、相続人が誰かによって異なります。子、父母、兄弟姉妹がそれぞれ複数人いるときは、原則として全員で均等に分けます。
 
相続人が配偶者と子の場合は、2分の1ずつです。配偶者と父母である場合は、配偶者が3分の2、父母が3分の1となります。そして、配偶者と兄弟姉妹という場合、配偶者は4分の3で兄弟姉妹が4分の1となります。
 
さらに、相続には「代襲相続」という制度があります。代襲相続とは、本来相続人となるべき方が既に亡くなっている場合に、その方の親や子、もしくは孫、兄弟姉妹が本人に代わって相続人となるものです。
 
仮に子が亡くなっていれば孫が(孫が亡くなっている場合はひ孫に再代襲)、父母が亡くなっていれば祖父母が、兄弟姉妹が亡くなっていればおいやめいに、という具合です。
 

相続は長男だから多くもらえるというわけではない

先述のとおり、同順位の相続人が複数存在している場合、その同順位の方々は全員が同じ割合で相続します。長男だから多く、というわけではないのです。
 
例えば、相続人が亡くなった方の配偶者と長男と次男の計3人であり、1000万円の遺産を分配する例で考えてみましょう。
 
この場合、1000万円の遺産を法定相続分どおりに分配するのであれば、配偶者が500万円(2分の1)、長男と次男はそれぞれ250万円(2分の1をさらに均等にするため)ずつ分けることになります。
 
法律上は子について、長男だから・次男だから、などと区別していないのです。
 
ただし、兄が家業を無給で手伝っていたり、親の介護に長年従事していたなど特段の事情があったりすれば、それは「寄与分」として考慮され、通常の相続分より多くの取り分が認められることもあります。
 

相続人間で合意があれば、長男が多くもらう遺産分割も可

先ほど述べた、法定相続分どおりの遺産分割は絶対ではありません。当事者全員で合意があれば、それと異なる割合で相続することも可能です。例えば、全員の合意の下、配偶者100万、長男500万円、次男400万円という相続も可能です。
 
ただし、今回の事例のように、遺産の分配割合を巡ってけんかしているような状況では、合意によって法定相続分と異なる割合で遺産分割をすることはできないことになります。
 
だからといって、1000万円の遺産から勝手に自分が希望する額を持ち出すことは、絶対にしてはなりません。他の相続人から家庭裁判所の審判を通じて呼び出されたり、通常の裁判で損害賠償請求をなされたりすることもあるためです。
 

まとめ

相続における財産の取り分は、遺言書で特段の取り決めがない限り、相続人の間で自由に決めることができます。ただし法定相続分は、長男だから・次男だからといった立場に関係なく、子であれば一律に均等な相続分とされています。
 
もし、寄与分の存在に関係なく、当たり前に「長男なら多くもらえる」と思っているのであれば、一度法定相続分に沿った分け方について確認し、それを元に話し合いを進めていくことをおすすめします。
 

出典

裁判所 令和4年 司法統計年報(家事編)
裁判所 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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