更新日: 2020.04.03 遺言書
おひとりさまこそ「遺言」が必要なのか?資産がある場合、いったい誰が相続するのか?
多くの場合、遺産は配偶者や子供が相続します。しかし、配偶者や子供がいないおひとりさまの遺産を誰が相続するかについては、あまり知られていません。
・おひとりさまが亡くなったあと遺産はどこに行くのか
・遺産の使いみちを自身で決めておきたい場合にどのようにすればよいか
といった点について、これからご紹介します。ご自身が亡くなったあとの遺産のゆくえが気になる方は参考にしてください。
執筆者:藤嶋英臣(ふじしまひでおみ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
平成29年度 日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」(大阪)相談員
996年大阪大学経済学部卒業。二度の転職ののち、過労による体調不良から40歳で退職。ファミリーに比べておひとりさま(単身者)のライフプランに関する情報が少ないことを不安に思い、FPを志す。FPの上級資格であるCFP(R)の試験を1年あまりで突破し、2015年大阪市に「はやぶさFP事務所」を開設。
自らも単身者であることから、同じ立場で思い悩む方への手助けとなるべく活動中。また、ライターとして各種士業・Webメディア向けに文章コンテンツを多数提供。
1973年生まれ、奈良県出身。
おひとりさまの遺産は誰が相続する?
配偶者や子供がいないおひとりさまの遺産は誰が相続することになるのでしょうか。考えられるケースごとに解説します。
(1)親が健在の場合
亡くなった人の親が健在の場合は、親が遺産を相続します。
(2)親がすでに亡くなっている場合
祖父母など両親より前の世代の人が健在であればその人が遺産を相続します。両親より前の世代の人が全員亡くなっている場合は、兄弟姉妹が遺産を相続します。
(3)兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合
おい・めいがいればその人が遺産を相続します。おい・めいが亡くなっている場合は、相続する人がいないことになります。
(遺産を相続するはずの人がすでに亡くなっている場合はその人の子供が遺産を相続しますが、おい・めいが亡くなった場合にはこのルールは適用されません。)
(4)兄弟姉妹がいない場合
両親(祖父母)がすでに亡くなっていて兄弟姉妹(おい・めい)がいない場合は、遺産を相続する人がいない状態になります。親族としていとこがいたとしても、いとこが遺産を相続することはできません。
したがって、おひとりさまの中でも兄弟姉妹のいない一人っ子は、生前の相続対策が特に必要になります。
(5)離婚したおひとりさまの場合
最後に、離婚したことでおひとりさまになった場合についてご紹介します。
元の配偶者は離婚した時点で他人になるため、遺産を相続することはできません。一方、元の配偶者との間に子供がいる場合は、その子供は遺産を相続することができます。子供が元の配偶者に引き取られて別々に住んでいる場合でも同じです。親同士が離婚しても、子供との親子関係はそのまま続くからです。
相続人がいなければ遺産は国に納められる!
遺産を相続する人がいないおひとりさまの遺産は、最終的には国に納められます。
遺産を国に納める手続きは亡くなった人の関係者や市区町村の職員などが行い、一連の手続きの過程で関係者に遺産が分け与えられることもあります。しかし、手続きには30万円から50万円程度の費用が必要で、遺産が少なければ手続きができない場合もあります。
おひとりさまは遺言書の作成が必要
おひとりさまがある程度年齢を重ねて亡くなると、兄弟姉妹やおい・めいが遺産を相続するか、相続人がいなければ遺産が国に納められることになります。
遺産の使いみちを自身で決めておきたい場合や、遺産相続で周囲の人の手を煩わせたくない場合は、遺言書を作成することをおすすめします。遺言書を書くことで、生前お世話になった人に遺産を与えることや、支援したい団体に遺産を寄付することができます。
遺言書は自分で書くこともできますが、書式の誤りや必要事項の記載もれで無効になることも少なくありません。
手間と費用がかかりますが、公証役場で「公正証書遺言」を作成することが確実です。前もって遺言作成の専門家(弁護士、司法書士、行政書士など)に相談することもできます。
遺言書の内容を誰かに実行してもらうための対策も必要です。確実な方法は、信頼できる知人や専門家に実行を依頼しておくことです。
もう少し手軽な方法としては、遺言書の保管場所を書いたメモを自宅のわかりやすいところに保管することをおすすめします。遺言書を金庫や貸金庫に保管する人もいますが、開けるまでに手間がかかるため避けたほうがよいでしょう。
「エンディングノート」など手軽に生前の意思を示すツールもありますが、あくまでも意思表示をするためのものであって、残念ながら法的な効力はありません。遺産を確実に誰かに継がせたい場合は、面倒でも公正証書遺言を作成するようにしましょう。
※内容を一部修正いたしました。
Text:藤嶋英臣(ふじしまひでおみ)
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
平成29年度 日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」(大阪)相談員