更新日: 2019.01.10 贈与
SNS上で行った贈与の約束!書面契約と同様に撤回できない?それともできる?
そのため、つい軽い気持ちで「この前、話してたアレあげるよ!」などと約束してしまうこともあるでしょう。
しかし、SNS上だからと安易に物をあげる約束をするのは賢明ではありません。
軽い気持ちでした約束が、時に大きなトラブルを招くことがあるのです。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
書面でした贈与は撤回できない!
贈与は譲る意思と受け取る意思が合致することで成立する契約です。
その点について、口頭であろうと書面であろうとSNSであろうと違いはありません。
ところが、民法550条において「書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。」と規定されています。
重要なのは「書面によらない贈与は」といった部分です。
つまり、書面によってした贈与は、履行(実際に行うこと)前であっても撤回することができないのです。
逆に、書面によらない贈与であれば、履行前に撤回することができる。ということになります。
SNS上での贈与は書面による贈与とみなされる?
書面による贈与は履行前であっても撤回できないことは先に説明しました。では、ここから本題にはいりましょう。
SNS上での贈与は書面でした贈与とみなされるのでしょうか。
この点、確たる判例が存在していないため、他の事情を考慮することなく断言することはできません。しかし、SNS上での贈与が常に書面による贈与として扱われるとは考えにくいでしょう。
SNSも書面も同じように文章という形で事実が残るのにもかかわらずなぜでしょうか。
それには、次のような2つの理由が挙げられます。
理由①条文の文言
SNSは通常、電磁的記録(メールなどパソコン内に蓄積されたデータなどと考えてみてください)と考えられます。
そして、贈与の撤回について規定する民法550条においては「書面でした贈与」と書かれており、「書面等」や「電磁的記録」といった表現は出てきません。
逆に、電磁的記録によって成立する契約の条文には「電磁的記録によってなされた場合も書面によりされたものとする。」といったような記載があるのが通常です。
そのため、SNSでの贈与が常に書面による贈与にあたるとはみなされないと考えられます。
理由②条文の趣旨
贈与が書面によってされると、その書面が証拠として残ります。贈与について証拠が残ることで、争いが発生するのを防ぐことを民法550条は目的としています。
また、贈与の契約が目に見える形で残ることにより、贈与者に自覚を促すとともに、軽率な贈与を抑制することも目的としています。
しかし、気軽に行えるSNS上での投稿は、書面よりもむしろ口頭に近い感覚で行われることの方が多く、書面での贈与に期待される効果を持たせることは難しいという事実があります。
そのためSNS上での贈与は常に書面による贈与とみなされるとは限らないと考えられます。
SNS上であっても贈与の発言は慎重にしてください
ここまで、SNS上での贈与は必ずしも書面による贈与に該当しないであろう。といった立場から話を進めてきました。
しかしながら、現状これについて絶対と言えるほどの判例や学説も存在しません。
そのため、実際に判断するにあたっては、贈与に至るまでの過程や当事者間の関係性などの諸事情すべてを考慮して、判断することになるでしょう。
SNS上でのやり取りだからと軽い気持ちで発した贈与の約束が、のちに大きな問題となることもありえます。
無用なトラブルを回避するためにも、贈与の約束は慎重にするようにしてください。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー