更新日: 2020.04.06 その他相続

相続とペットの問題~家族と同様に取り扱っているペットを相続人にすることはできるのか~

相続とペットの問題~家族と同様に取り扱っているペットを相続人にすることはできるのか~
犬や猫をはじめ、ペットを飼うことが珍しくない時代となりました。
 
そして、多くの家庭においてペットは家族の一員として深く愛されています。
 
そうなってくると、家族の一員であるペットにも財産を残してあげたい。
 
と、考えることも不自然ではありません。
 
では、実際に家族の一員たるペットに遺産を相続させることができるのでしょうか。
 
それについて法律的な視点から考察します。
 
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士

2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

家族同然のペットに遺産を相続させたい

Aさんには家族当然に可愛がっているペットがいました。
 
長年一緒に過ごし、ペット保険に入ったり、動物病院で治療を受けたりするなど、完全に家族の一員として溶け込んでいました。
 
そうして過ごしていくうち、Aさんは自分の死後、遺産の一部をペットにも相続させてあげたいと考えるようになりました。
 
家族の理解もあり、Aさんの家族内ではペットに相続させることについて反対意見は何一つありませんでした。
 
さて、このように何ら争いのない場合であれば、ペットでも問題なく遺産を相続することができるのでしょうか。
 

ペットが遺産を相続することはできません

結論として、日本では法律上ペットが遺産を相続することはできません。
 
なぜなら、民法において相続人となれるのは配偶者や子など、一定の範囲の者に限られているからです。
 
そして、そこにペットは含まれていないのです。
 
また、ペットは法律上「物」として扱われます。
 
物である以上、権利や義務の帰属する主体とはなりえず、財産を所有したり、契約を結んだりすることができません。
 
当然、相続人となることもできません。
 
このような理由から、保険に入ったり病院で治療を受けていたり、家族の同意があったとしても、ペットは相続人となることはできず、遺産を相続することはできない。
 
という結論が導き出されるのです。
 

負担付遺贈や信託を利用してみましょう

これまで述べてきたとおり、ペットを相続人として直接財産を相続させることは不可能です。
 
とはいうものの、負担付遺贈や信託といった制度を利用することで、ペットに財産を相続させたのと近しい法律効果を発生させることができるのです。
 
負担付遺贈とは、「財産を渡す代わりに一定の義務を負担してね」といった形の条件付きで相続財産を渡す遺贈(遺言で財産を渡すこと)のことです。
 
信託とは、「財産を一定の目的に使用してもらうため他人の名義にする」といった制度です。
 
負担付遺贈と信託の詳細については割愛しますが、こうした制度を利用することで自分の死後、財産をペットのために残すことができるのです。
 
とはいえ、どちらの制度にもそれぞれメリットとデメリットが存在しています。
 
利用の際は専門家をはじめとする相談機関へ相談するとよいでしょう。
 

相続人となれる者の範囲は民法で決まっています

現行法上、ペットは相続人として直接に財産を相続することができません。
 
仮に家族同様に過ごしており、相続することについて誰も反対していなくとも、相続させることができないことに変わりはありません。
 
相続財産を少しでもペットのために役立てたいのであれば、直接的な相続とは異なりますが、負担付遺贈や信託といった制度を利用するようにしてください。
 
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー

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