更新日: 2020.04.06 その他相続
良いのか悪いのか、成年後見で相続財産が月額6万円、10年で720万円が消える
家族(相続人)からすると、相続財産を赤の他人(専門職後見人)に管理され、報酬を払い続けるということです。
執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)
CFP(R)認定者、行政書士
宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
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【後見制度の成り立ち】
成年後見制度は公的介護保険制度とともに2000年にスタートしました。
介護保険では、利用者本人とサービス提供者の契約によって介護サービスを利用する形になっています。
しかし認知症になると、法律行為である契約等や金銭管理が困難となるため、本人に代わってこれらのことをできるようにしたのです。
【後見人は誰がなる?】
成年後見制度スタート当初は、子や配偶者など親族後見人が8割超でしたが、被後見人の財産を不正使用や横領するなど、他の親族との間でトラブルが多発しました。
そのため、親族以外の弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職の後見人が家庭裁判所で選任されるようになり、今では7割超が専門職後見人となっています。
家庭裁判所に親族などを候補者として申立てても実現しないことが増えているのです。
しかし、最近では専門職後見人による横領事件も発生しています。成年後見の悪用被害は、分かっているだけでも平成26年には56億7000万円となっています。
【成年後見制度にはいくらかかる?】
(1)成年後見制度を利用開始するのにかかる費用
申立て手数料 800円(申立てごとに)
登記手数料 3400円(申立手数料含む)
連絡用郵便切手(家庭裁判所による)
医師の鑑定料(必要な場合のみ、5万円~15万円が多い)
戸籍謄本、登記事項証明書、診断書が添付書類として必要
医師の鑑定が不要であれば、少額で済みます。
(2)専門職後見人の報酬
後見人に専門職が選定された場合の月報酬額のめやすは、以下の表になります。
成年後見監督人は、家族などが成年後見人となった場合などに家庭裁判所から選任されることが多いです。
後見制度では、裁判所などに提出する報告書なども多く、また、家族と本人は利益相反関係(本人の利益が家族には不利益)になることもあるので必要とされます。
【亡くなるまでやめられない】
後見人は、本人が亡くなるまで、本人のために責務を果たさなければなりません。ほかの仕事が忙しい等と理由をつけてやめることは許されません。
厚生労働省の2014年発表では、
日本人の健康寿命 男性71.19歳、女性74.21歳
平均寿命 男性80.21歳、女性86.61歳
この二つの寿命の差(男性9.02年、女性12.4年)は、日常生活に人の助けが必要な期間ということになります。つまり、成年後見も10年くらい続くことを想定した方が良いということです。
財産額5000万円超の被後見人に、月額6万円で専門職後見人が選任された場合の10年間の報酬合計額は、
6万円×12月×10年=720万円 となります。
【信託を使えば、報酬は不要】
最近テレビや新聞などでも紹介されることが増えてきたファミリートラスト(民事信託)を使えば、本人が認知症になっても家族が財産管理をすることができます。基本的に報酬は発生しません。
信託を利用する場合の最大のポイントは、「財産を託せる人がいるか。」という点です。信託では、裁判所の管理もありませんので、託された人(受託者)に悪意があれば財産は確実に食いつぶされてしまいます。
まさに諸刃の剣と言えるでしょう。
Text:宿輪 德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者,行政書士,宅地建物取引士試験合格者,損害保険代理店特級資格,自動車整備士3級