更新日: 2019.01.11 相続税
弁護士に聞く。遺産相続で自分の権利を守るためのポイントは?
自分のところは大丈夫と思っても、お金が関わると揉めるケースは少なくありません。相続が発生する前から、基本的な知識を身につけておくことが大事です。
Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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弁護士
慶應義塾高校卒,慶應義塾大学法学部政治学科卒。2009年に弁護士登録し現在まで,相続・事業承継,人事労務及び借地借家関係を中心に,依頼者にとっての最善の解決を求めて日々奮闘中。協議による解決重視がモットー。
また,小中学校に出張し法教育やいじめに関する授業を行ったり,少年事件の付添人活動を行うなど,子どもの権利擁護にも真剣に取り組む。
目次
法定相続人とその割合。配偶者と子供は2分の1ずつ
基礎知識として、法定相続人とその割合を把握しておきましょう。
○配偶者と子供が相続人・・・2分の1ずつ
亡くなった人に配偶者と子供がいる場合、配偶者と子供が相続人になります。子供が複数人いる場合は、子供の分の割合をさらに子供の人数で分けることになります。
例:遺産の合計が3000万円・相続人が配偶者と子供2人の場合
配偶者の取り分は1500万円、子供一人当たりの取り分は750万円。
○配偶者と父母もしくは祖父母が相続人・・・配偶者が3分の2、父母もしくは祖父母が3分の1
亡くなった人に配偶者がいて、子供、さらにその子供など直系卑属がいない場合、配偶者と父母に遺産が相続されます。もし父母が他界していて、祖父母がいる場合は父母に相続される分を祖父母が相続します。
例:遺産の合計が3000万円・相続人が配偶者と父母の場合
配偶者の取り分は2000万円、父母の取り分はそれぞれ500万円。
○配偶者と兄弟姉妹・・・配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
亡くなった人に配偶者がいて、子供や孫など直系卑属がおらず、父母、祖父母など直系尊属が全員他界している場合は、兄弟姉妹に遺産が相続されます。
例:遺産の合計が3000万円・相続人が配偶者と兄・弟の場合
配偶者の取り分は2250万円、兄弟の取り分は兄が375万円、弟が375万円。
その兄弟が異父兄弟もしくは異母兄弟の場合は、両親が同じ兄弟である場合の2分の1の取り分になります。また、おじいさんおばあさんの相続が発生し、その子供がすでに他界している場合は、その孫が親に代わって相続することが可能です。
自分の相続財産が少なすぎる!「遺留分」の請求が可能
遺産相続について定めた民法には、「遺留分」という制度があります。
例えば亡くなった人が遺言書を残していて、そこに「長男に全ての財産を相続させる」と書かれていても、亡くなった人の配偶者は原則として遺留分の請求が可能となります。
遺留分は父母、祖父母のみが相続人である場合は、遺産全体の3分の1、配偶者、子供が相続人の場合は、遺産全体の2分の1が対象で、相続人ごとの遺留分は、この遺留分の割合と前述の法定相続割合を掛け合わせて計算します。兄弟姉妹に遺留分はありません。
例:相続人が配偶者と子供2人の場合で、亡くなった人が「配偶者に全ての財産を相続させる」という遺言書がある場合
子供の遺留分は、2分の1×4分の1で、それぞれ8分の1。
この基本知識を踏まえ、遺産相続に詳しい、東京桜橋法律事務所の山中大輔 弁護士に、遺留分について自分の権利を守るポイントを聞いてみました。
「遺留分」は時効あり。自分の権利を守るポイントは?
自分は法定相続人なのに遺言書で他の兄弟にほとんど遺産が相続され、残りの遺産が遺留分に満たない場合には、原則として、遺留分に相当する財産を自分が取得する「遺留分減殺請求権」が認められます。
遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しなかった場合、時効によって消滅します。
相続の開始時期に関して争いが起こることはありませんが、「減殺すべき贈与または遺贈があったこと」を「知った」「知らなかった」、1年以内に「行使した」「行使しなかった」という点で争いになるケースが多くみられます。
これを踏まえると、他の相続人が大部分の遺産を取得する内容の遺言書があり、自分が取得できる財産が遺留分相当額を満たない場合、遺留分減殺請求を行うという通知を速やかに送ること、そしてできれば証拠としての信用性が高い内容証明郵便などを利用することが重要ですので、実践してみてください。
内容証明郵便の送り方は、郵便局の窓口でも教えてもらえます。
遺産相続については事前に話し合いをしておこう
遺産相続では、もめたくないものです。しかし、遺留分に関しては先延ばしにしていると、時効が来て請求できなくなることがあります。正当でないと感じたら、てきぱきと動くようにしましょう。
また、遺産相続の話はなかなかしづらいとは思いますが、万が一の時に慌てたり、争ったりすることがないように、遺産を残す側と残される側で事前によく話し合っておくことが大事です。
※2018/01/05 内容を一部修正させていただきました。
Text:FINANCIAL FIELD編集部
監修:山中 大輔(やまなかだいすけ)
弁護士