公開日: 2019.12.15 相続

遺産をめぐる兄弟の“争続”。遺留分請求されると大変なことになるかも?

執筆者 : 村川賢

相談者のAさんは63歳男性で弟が一人います。父は既に他界していて、2ヶ月ほど前には同居していた88歳の母が亡くなりました。
 
葬儀や役所への手続きも終え、やっと落ち着いたところで弟と遺産の調査を始めたところ、たんすの引き出しに母の遺言書があることが分かりました。
そこにはなんと、「家と土地とお金の全てを長男に相続させる。」と書かれていたのです。
 
弟はその事実を知ってから急に顔が険しくなり、「兄貴ばかりずるい。俺に権利がある遺留分は、兄貴に請求するからな」と言ったのです。
Aさんはいくら請求されるのか心配になり、相談にいらっしゃいました。
村川賢

執筆者:

執筆者:村川賢(むらかわ まさる)

一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。

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村川賢

執筆者:

執筆者:村川賢(むらかわ まさる)

一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

早稲田大学大学院を卒業して精密機器メーカーに勤務。50歳を過ぎて勤務先のセカンドライフ研修を受講。これをきっかけにお金の知識が身についてない自分に気付き、在職中にファイナンシャルプランナーの資格を取得。30年間勤務した会社を早期退職してFPとして独立。「お金の知識が重要であることを多くの人に伝え、お金で損をしない少しでも得する知識を広めよう」という使命感から、実務家のファイナンシャルプランナーとして活動中。現在は年間数十件を越す大手企業の労働組合員向けセミナー、およびライフプランを中心とした個別相談で多くのクライアントに貢献している。

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遺留分について

「遺留分」とは、法定相続人(遺留分の権利者)に、被相続人(亡くなった人)の財産から法律で取得することが保証されている、最低限の取り分のことです。
 
これは、被相続人が生前に決められた期間さかのぼって贈与したもの等を含め、遺贈によっても、奪われることのないものです。
 
つまり、Aさんの弟は、母の財産のうち、最低でも遺留分を取得する権利が、法律で認められています。遺留分は、遺言であっても侵すことができません。
 
もし、遺留分に相当する分の財産を受け取れなかった場合、弟はAさんに侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。これを遺留分侵害額の請求(※)と言います。

遺留分侵害額の計算

遺留分侵害額の割合は、相続財産(贈与や遺贈分含む)の金額と法定相続人の組み合わせで決められているので、具体的な額はそれに沿って計算することになります。
 
法定相続人の組み合わせによる遺留分の割合は以下の通りです。

(筆者作成)
 
法定相続人のAさんと弟は二人兄弟なので、弟の遺留分は、子の遺留分である2分の1を兄弟二人で割った4分の1となります。母の財産は、自宅建物500万円(時価)、自宅土地3500万円(時価)、預貯金1000万円で、合計5000万円でした。
 
生前贈与はありませんでしたので、弟が請求できる遺留分侵害額は、5000万円の4分の1、すなわち1250万円となります。

遺留分侵害額請求権と遺留分減殺請求権の違い

2019年の法改正により、2019年7月1日から、「遺留分減殺請求権」は「遺留分侵害額請求権」に変わりました。
 
何が違うのかというと、旧制度の「遺留分減殺請求権」では、遺留分を侵害された人が、遺贈や贈与を受けた人に対して、その侵害された分を限度として財産の返還を請求するもので、基本は現物返還でした。
 
もちろん、土地や建物等のように分割して渡すことができない場合は、それに相当する額を金銭で支払うことが行なわれていましたが、例外的な位置づけでした。
 
それが新制度の「遺留分侵害額請求権」になって、金銭による請求に一本化されました。
つまり、侵害する財産の種類が何であれ、侵害された遺留分に相当する額を金銭で支払うように請求することになったのです。

弟がAさんに遺留分侵害額の請求をした場合

弟がAさんに遺留分侵害額を請求した場合、Aさんは弟に1250万円を、土地や建物を渡すのではなく、金銭で支払わなければなりません。母から遺贈された預貯金は1000万円しかないため、自分の預貯金を250万円取り崩して支払うことになります。
 
さらに、この250万円は不動産持ち分を売ったとみなされ、税務署から譲渡所得税を徴収される恐れもあります。
 

Aさんはどうしたらよいか?

Aさんはどうしたらよいでしょうか? 一番良いのは、弟から遺留分侵害額を請求されないように、弟と遺産分割協議をして納得してもらうことです。遺産分割においては、遺言よりも、相続人全員が署名捺印した遺産分割協議書の内容が優先されます。
 
例えば、弟に「母の預貯金を全て渡すから、今住んでいる土地と建物は俺に譲ってくれないか」と説得し、弟がそれを承諾して遺産分割協議書に署名捺印すれば解決します。
 
なお、遺留分侵害額請求権は、相続の開始および遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年間行使しなかった場合は、時効により権利が消滅します。
 
もし、弟が1年間、遺留分侵害額の請求をしなかったら、Aさんは母の遺言通り全財産を相続することができます。

おわりに

Aさんの場合、母が遺言書に「家と土地は長男に相続させるが、預貯金は次男に相続させる」などと書いて、付言事項(遺言書に遺産分割の理由、思い等を記入しておくこと)に長男家族と同居してきた経緯なども書いておけば、次男も納得して遺留分の請求をすることはなかったかもしれません。
 
昭和22年5月まで施行されていた家督相続の記憶が残っていたり、Aさん家族のように長男家族と同居していたりすると、遺言書に「私の全財産を長男に相続させる」などと書いてしまいがちです。遺言書を書くときには、全ての相続人のことを考え、その遺留分を侵害しないように気をつけましょう。
 
(出典)
(※)裁判所 遺留分侵害額の請求調停
 
執筆者:村川賢
一級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP、相続診断士、証券外務員(2種)

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