更新日: 2019.10.16 贈与

相続のキホン(11)節税効果を期待できる、贈与税の5つの特例って?

執筆者 : 西山広高

相続のキホン(11)節税効果を期待できる、贈与税の5つの特例って?
前回は相続税と贈与税の関係、贈与を活用した節税の効果についてお伝えしました。相続税に比べ税率の高い贈与税ですが、贈与税は1年ごとに計算することから、使い方によっては納付する税額を圧縮しながら次の世代に財産を移転することが可能です。
 
贈与税にはいくつかの特例が用意されており、税金面でより有利に資産を移転することが可能になる場合もあります。今回は現在(2019年10月)使える贈与税の特例についてお伝えします。
 

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西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

贈与税の5つの特例

贈与税には特例が用意されています。これらを活用することで、一定金額まで非課税で贈与できるため、より有利に資産を移転していくことができます。
 
ここで紹介する特例は贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
・住宅取得資金等の贈与を受けた場合の非課税の特例
・教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例
・結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例
・教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例
・障がい者へ贈与した場合の非課税の特例

 
の5つです。期限が定められているものも少なくありません。活用を検討する場合には注意してください。
 

1.贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)

婚姻期間20年以上の配偶者に居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与した場合、基礎控除の110万円とは別に最大2000万円まで贈与税が非課税となる制度です。
 
条件を満たす贈与が2000万円以下の場合はその金額まで非課税となり、2000万円を超える場合は超えた金額に対して贈与税がかかります。
 
この特例を利用した場合、贈与税は節税できますが、不動産の所有権が移転することにより、不動産取得税や登記に必要な登録免許税、登記を司法書士に依頼する場合にはその手数料などの費用も発生します。節税できる金額とこれらの費用を考慮し、どちらが有利か考慮する必要があります。
 

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2.住宅取得資金等の贈与を受けた場合の非課税の特例

父母や祖父母など直系尊属から住宅を取得するための資金の贈与を受けた場合、築年数や面積の基準など一定の要件を満たす不動産であれば、非課税枠があります。
 
2019年10月に消費税が10%になった後は省エネ等住宅であれば最大3000万円、それ以外では2500万円です(減税幅は2020年4月以降の贈与については減額される予定)。また、現状では特例の対象は2021年12月31日までの贈与が対象とされています。
 

3.教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例

父母や祖父母など直系尊属から子や孫に対して教育資金を贈与した場合、一定の要件のもと最大1500万円まで非課税です。この特例は用途が教育資金に限られます。現状では特例の対象は2021年12月31日までの贈与が対象です。
 
この非課税の適用を受けるためには、財産を信託会社に口座を開設し、贈与契約書を作成し、贈与する資金を信託し、信託会社を通じて「教育資金非課税申告書」を税務署に提出する必要があり、払出しには領収書など証明書類を提出する必要があります。
 
この制度は、受贈者ひとりに対して1500万円まで非課税となる制度です。
 
例えば、父方母方双方の祖父母がかわいい孫にそれぞれ贈与したいと考えているような場合、父方、母方いずれかの祖父母が先にこの制度を使って1500万円の贈与を行ってしまうと、それ以上は使えず、1500万円を超過した贈与には贈与税が課されますので注意が必要です。
 
2019年4月1日以降の贈与については受贈者の所得要件(受贈者の所得が1000万円を超える場合には適用外)ができたほか、2019年4月1日以降にこの制度を用いて教育資金贈与を行い、3年以内に贈与者が亡くなった場合に、教育資金に残額がある場合に一定の場合を除いてその残額が相続税の課税対象になるなど、いくつかの見直しがありました。詳細は税務署、信託会社などにご確認ください。
 

4.結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税の特例

父母や祖父母など直系尊属から、20歳以上50歳未満の子・孫などに結婚・子育て資金として贈与した場合、一定の要件のもと1000万円まで贈与税が非課税となる制度です。こちらも受贈者ひとりに対してのものです。
 
この制度も「教育資金」同様、財産を信託会社に口座を開設し、贈与契約書を作成し、贈与する資金を信託し、信託会社を通じて「結婚・子育て資金非課税申告書」を税務署に提出する必要があり、払出しには証明書類を提出する必要があります。
 
結婚資金として使えるのは300万円までで、挙式や披露宴、婚礼衣装、新居の家賃などには使えますが、新婚旅行や婚約・結婚指輪の購入費用などには使えません。一方、不妊治療や出産費用、子供の医療費や幼稚園・保育園・ベビーシッターなどへの支払いには使えます。
 
最近は子供の医療費がかからない自治体も増えているほか、保育料などは消費税増税のタイミングで無償化されたので、1000万円を使い切るのは結構大変な気がします。使いきれずに受贈者が50歳に達した場合などには信託契約が終了し、その時点での残額に贈与税が課される点にも注意が必要です。
 
この特例も2019年4月1日以降の贈与についてはいくつかの条件が追加されました。活用を検討する際には、詳細な条件をご確認ください。
 

5.障がい者へ贈与した場合の非課税の特例

ハンディキャップを持つ方を身内にお持ちの方は、自分がいなくなった後、その身内が金銭面などで困らないか不安を感じる場合も多いでしょう。
 
特定障がい者(特別障がい者および障がい者のうち精神に障害がある方)の将来の生活費などのための贈与については、特別障がい者である特定障がい者の方については6000万円まで、特別障がい者以外の特定障がい者の方については3000万円まで贈与税がかかりません。
 
この特例の適用も、財産を信託会社に口座を開設し、贈与契約書を作成し、贈与する資金を信託し、信託会社を通じて「障害者非課税信託申告書」を税務署に提出する必要があります。
 

特例を活用する場合の注意

相続税が非課税になる5つの特例についてみてきました。
 
これらの特例を活用するときは、それぞれ「申告」が必要になります。あくまでも特例ですので、申告を怠り納税もしないでいると、後から贈与税だけでなく、延滞金や、重加算税、資産の差し押さえなどの処分を受ける対象にもなってしまいます。
 
また、贈与税は税率が高いだけに、税務署はかなり細かいチェックをしているようです。「バレないだろう」と思っていると後から痛い目にもあいかねません。
 
しかし、払う必要のない税金まで払う必要はありません。合法に節税し、より多くの資産を次世代に継承するための一つの方法として贈与の仕組みや特例についてご紹介しました。
 
次回のコラムでは、もう一つの贈与の選択肢ともいえる「相続時精算課税制度」について考えます。
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役