更新日: 2019.08.29 相続税

「生命保険で相続対策」といわれるのはナゼ?他に方法はないの?

「生命保険で相続対策」といわれるのはナゼ?他に方法はないの?
平成27年より相続税の基礎控除額が引き下げられたため、それまで相続税と無縁だった人も、相続税がかかる可能性があります。そのため、自身の保有財産が相続税のかかる範囲なのかどうかを確認して、もしそうならば対策をどうするのかを考える必要があります。
 
一般的に生命保険に加入することが相続対策になるといわれていますが、どのように使い、どんな点に気を付ければ良いのでしょうか? そもそも生命保険に加入するための現金が不足している場合に、他の方法はあるのでしょうか?
 
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

まずは基礎控除額を確認

亡くなった人(被相続人)が保有している財産全てが相続税の対象になるわけではなく、財産の評価額から相続人の数などによって一定の金額を引くことができます。これを基礎控除と呼びます。
 
基礎控除の計算式
3000万円 + 600万円×相続人の数
 
モデルケース
父死亡(被相続人)、母と子2人(相続人・計3人)
保有資産:自宅土地建物(6000万円)、金融資産(2500万円)
財産評価額合計:8500万円
 
上記の場合の基礎控除額は
3000万円 + 600万円×3=4800万円
 
したがって、4800万円までの財産には相続税がかからないことになり、4800万円を超える金額に対して、相続税がかかることになります。8500万円の財産評価額がある場合、3700万円に対して相続税がかかる計算になります。
 

生命保険はなぜ相続対策になる?

1.相続税の対象となる資産そのものを生命保険料の支払いで減らすことができる
上記の例では、3700万円に対して相続税がかかることになりますが、生命保険料を支払い2500万円の金融資産を減らすことで、節税につながります。ただし、生命保険なら何でもよいわけではなく、亡くなった時に必ずもらえる終身保険に加入する必要があります。
 
2.死亡保険金を相続人が受け取ると、相続税非課税枠がある
被相続人(父)の死亡保険金を相続人(母子)が受け取る場合には、みなし相続財産として相続財産に含められますが、その場合に一定の非課税枠があります。
 
●相続税非課税枠=500万円×相続人の数
 
相続人3人の場合、非課税枠は1500万円になります。例えば、生命保険金が3000万円であれば、1500万円が非課税になるので、相続税の対象となるのは1500万円です。
 
3.“争族”の可能性を減らす
財産の種類が、現金が少なく不動産などの割合が高いと、遺産分割協議でもめる可能性があります。不動産は、相続する割合で不動産登記をして共有名義にすれば良いように思えますが、売却する際にはすべての持ち主の同意が必要となるため、相続人1人の一存では売却できません。
 
そのため自宅に住み続ける母と売却して現金を手にしたい子の間では、財産分割が円滑に行いにくい可能性もあります。そこで母が受取人の生命保険金があれば、子ども2人にはその保険金から現金で相続分の持ち分を支払うことができます。
 

その他の相続税対策とは?

生命保険対策をするためには、保険料を支払うための現金が必要です。一時払い終身保険などを活用したくても、現金化できる金融資産が少ないと、そもそも生命保険に加入すること自体が難しいか、資産を減らしても効果が少ないかもしれません。
 
では、現金が手元になくてできる相続税対策はあるのでしょうか?
 
■配偶者へ贈与をする
という方法が考えられます。持ち家に配偶者が住み続けることが濃厚であれば、相続が発生する前に、配偶者へ贈与をしておくことが考えられます。
 
「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」というものがあり、下記要件を満たせば、贈与税の基礎控除額110万円とあわせて最高額2110万円まで非課税で贈与できます。
 
<適用のための要件>
(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(2) 配偶者から贈与された財産が、居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること
(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
 
(注1) 「居住用不動産」とは、居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
(注2) 配偶者控除は、同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
 
例えば、自宅家屋の持ち分を2110万円まで配偶者へ贈与することも検討の余地はあるでしょう。自宅土地については相続税を納める際に「小規模宅地の特例」などの優遇措置がありますので、家屋を優先して贈与を検討されると良いでしょう。
 
注意点としては、父(夫)が先に逝くとは限らないことです。いったん妻に配偶者控除を使って贈与しても、母(妻)が先に亡くなると、妻の相続財産として課税対象になります。
 
相続税にも配偶者控除がありますので、夫にかかる相続税は少ないと考えられますが、ゆくゆくは子どもに引き継ぐつもりであれば、父母ともにいなくなった際(二次相続)の対策を視野に入れて考える必要があるでしょう。
 
※2019/08/29 内容を一部修正させていただきました
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士


 

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