更新日: 2019.06.13 その他相続
認知症の危険に備える為の「成年後見制度」を理解しよう
今回は、その危険に備えるための制度、「成年後見制度」の概要を解説します。成年後見制度には、後見人を本人があらかじめ選任しておく「任意後見制度」と、家庭裁判所が選任する「法定後見制度」があります。
執筆者:内宮慶之(うちみや よしゆき)
内宮慶之FP事務所代表
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング技能士1級
会計事務所では、税務会計コンサルティングの他、資産税や相続事業承継の経験も豊富。
現在、相続及びライフプラン全般における相談業務、講演、執筆、非常勤講師などの業務を中心に活動している。高等学校での講演も多く金融経済教育にも尽力している。
平成30年度日本FP協会『くらしとお金の相談室』相談員、大阪市立住まい情報センター専門家相談員、修学支援アドバイザー(大阪府教育委員会)にも就任している。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神的障害などにより判断能力が不十分な方が不利益を被らないよう、保護し、支援する制度です。家庭裁判所に申し立てをすることにより、その方を援助する人を選任してもらいます。
また、一人暮らしの老人が悪質な訪問販売によって被害を受けてしまうなどのケースも、成年後見制度を上手に利用することによって防ぐことができる場合があります。
成年後見人が選任されても、スーパーや洋品店でのお買い物など、日常生活に必要な範囲の行為は本人の意思で自由にすることができます。
成年後見制度は、登記することによりその効力を発揮します。
法定後見制度と任意後見制度の利用の内容、成年後見人の権限や任意後見契約の内容などを法務局で登記して、登記官が登記事項証明書を発行、情報を適正に開示することによって、判断能力の衰えた方との健全な取り引きを確保します。
任意後見と法定後見の概要
任意後見制度は本人の判断能力が衰える前に契約できますが、法定後見は判断能力が衰えた後でないと利用できません。法定後見制度はさらに後見、保佐、補助の3つに分けられます。
1.任意後見制度とは
任意後見制度とは、将来自己の判断能力が不十分になったとき(いわゆる認知症の症状が認められた場合)に備えて、本人が判断能力を有しているあいだに後見事務の内容と、後見する人を自身で決めておく制度となります。
任意後見契約では、「任意後見人を誰にするか」「どこまでの後見事務を委任するか」を話し合いで決めることができますが、結婚、離婚、養子縁組など(一身専属的な権利)については契約に盛り込むことができません。
(1)任意後見制度の流れ
(2)任意後見制度のメリットとデメリット
2.法定後見制度とは
法定後見制度とは、本人の判断能力が不十分な場合に、法律的に保護し、支えるための制度です。
例えば、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などの方が預貯金の解約、福祉サービス契約の締結、遺産分割協議、不動産の売買などをする必要があっても、本人に判断能力がなければ、そのような契約などはできません。
判断能力が不十分な場合、本人に任せていては、その本人に不利益な結果を招く恐れがあります。そこで、精神上の障害によって判断能力が十分ではない方のために、家庭裁判所が援助者を選び、援助者が本人のために活動するのが法定後見制度です。
法定後見制度は、本人の判断能力の程度によって、「後見(ほとんど判断できない人が対象)」「保佐(判断能力が著しく不十分な人が対象)」「補助(判断能力が不十分な人が対象)」に区分されます。
執筆者:内宮慶之(うちみや よしゆき)
内宮慶之FP事務所代表
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング