更新日: 2019.06.12 その他相続

「相続した空き家、取り壊すと固定資産税が高くなる」は本当?

執筆者 : 橋本秋人

「相続した空き家、取り壊すと固定資産税が高くなる」は本当?
空き家を相続した場合に、その空き家を取り壊すと土地の税金が高くなるので、そのままにしておくという話をよく聞きます。雑誌やインターネットなどでも、建物を解体して更地にすると固定資産税が6倍になるという情報を目にすることがあります。
 
実は、この数字は正しくありません。 
 
実際に固定資産税はどのくらい高くなるのでしょうか?空き家をコストと管理の点を含めてトータルで見たときに、取り壊したほうがよいのか、そのままにしておいたほうがよいのか、検証してみましょう。
 

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橋本秋人

執筆者:橋本秋人(はしもと あきと)

FP、不動産コンサルタント

早稲田大学商学部卒業後、大手住宅メーカーに入社。30年以上顧客の相続対策や不動産活用を担当。
 
現在はFP、不動産コンサルタントとして相談、実行支援、講師、執筆等を行っている。平成30年度日本FP協会広報センタースタッフ、メダリストクラブFP技能士受験講座講師、NPO法人ら・し・さ理事、埼玉県定期借地借家権推進機構理事

空き家にしておく理由

国土交通省の調査(複数回答、※1)によると、空き家にしておく理由としては「物置として必要だから(44.9%)」「解体費用をかけたくないから(39.9%)」「特に困っていないから(37.7%)」が多いようです。
 
そんななかで、約4人に1人が「取り壊すと固定資産税が高くなるから(25.8%)」という理由を挙げています。 
 
空き家は適切な管理がされないままだと、劣化が進み、いずれ「お化け屋敷」「ゴミ屋敷」などと呼ばれるようになります。そうなると、近隣の住民に美観、衛生、防犯、防災などの面で迷惑をかける可能性があります。
 
それでも持ち主が空き家を解体しないのは、「建物を取り壊すと土地の税金が6倍になる」と考えている場合が多いためです。
 
これは、小規模住宅用地(200平方メートルまで)の固定資産税及び都市計画税の課税標準の軽減の特例措置により、土地の固定資産税の課税標準額が6分の1になっている、ということから誤解が生じているためだと考えられます。
 
本当のところはどうなのでしょうか。
 

固定資産税と都市計画税のしくみ

不動産を1月1日現在所有している人には、毎年市区町村から固定資産税が課せられます。さらに、その不動産が市街化区域(いわゆる市街地)にある場合には、併せて都市計画税も課せられます。
 
固定資産税額は、固定資産税課税標準額に1.4%(標準税率)をかけた額になります。また、都市計画税額は、課税標準額に0.3%(上限税率)をかけて計算されます。
 
標準税率というのは通常の税率のことで、地方自治体によっては財政上の理由などから1.4%を超えて設定されることもあります。
 
それに対して、制限税率は上限が定められている税率のことですので、都市計画税は0.3%より高くなることはありません。
 

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小規模住宅用地の軽減の特例とは

固定資産税、都市計画税には、小規模住宅用地の軽減の特例が設けられています。
 
住宅用地のうち、住宅1戸当たり200平方メートルまでの部分を小規模住宅用地といい、固定資産税の課税標準額は6分の1に、都市計画税の課税標準額は3分の1に軽減されます(200平方メートルを超える部分は一般住宅用地といい、それぞれ3分の1、3分の2の軽減となります)。
 
例えば、地価公示価格(土地取引の参考となる公的価格)が3000万円の、120平方メートルの住宅用地の場合、固定資産税評価額は2100万円になります(固定資産税評価額は公示価格の概ね70%の水準で設定されます)。
 
この土地は面積が200平方メートル以下のため、敷地全体に小規模住宅用地の軽減の特例が適用されます。課税標準額は6分の1の350万円になります。これに税率1.4%をかけると、税額は4.9万円です。
都市計画税は、課税標準額が3分の1なので700万円となり、税率0.3%をかけると税額は2.1万円です。固定資産税、都市計画税の合計額は7万円になります。
 
このように、住宅用地は税金が低く抑えられているのです。
 

住宅用地ではなくても税額は軽減されている

住宅用地でない土地(非住宅用地)には、税額の軽減はないのでしょうか。実は、非住宅用地の課税標準も、固定資産税評価額の70%以下に軽減されているのです。
 
先ほどの土地の例で計算すると、課税標準は2100万円の70%で1470万円になるので、固定資産税は約20.6万円、都市計画税は約4.4万円。合計すると約25万円です。
 
つまり、更地の固定資産税は約4.2倍、都市計画税は約2.1倍、合わせると約3.57倍となります。住宅を壊しても、土地の税金は6倍までは上がりません
 
なお、東京23区内では都税条例により、非住宅用地の負担水準の上限が70%から65%へ引き下げられたり、200平方メートルまでの小規模非住宅用地が2割減免されるなどの措置が行われています。
 
さらに、建物を解体すると、建物の固定資産税、都市計画税はゼロになりますので、住宅用地と更地(非住宅用地)の税額はさらに縮まることになります。
 

トータルのコストと、所有者の事情で考えることが大切

確かに税金だけを見ると、空き家を取り壊すことで負担が増えるケースも多いでしょう。
 
ただし、空き家が残っていると維持管理費用や、光熱費、草刈りや樹木の剪定、清掃、修繕費などのほか、遠方の場合は交通費もかかります。
 
たとえ土地の税金が上がったとしても、維持管理にかかるトータルコストを計算してみるとほとんど差がなかったり、場合によっては解体したほうが安くなることもあります。また、空き家の管理には、経済的なコストだけでなく精神的な負担が生じることもあります。
 
「税金6倍」だけに踊らされることなく、空き家の将来の利活用、場所、所有者の事情などをトータルで考えて、解体するか、そのままにしておくか検討されることをおすすめします。
 
出典:※1 国土交通省住宅局「平成26年 空家実態調査 集計結果」
 
執筆者:橋本秋人(はしもと あきと)
FP、不動産コンサルタント