更新日: 2019.01.10 遺言書

70歳のおばあちゃんが「遺言書は自筆しか有効ではない」と言われたと相談に パソコン書きや代筆は認められないの?

執筆者 : 新美昌也

70歳のおばあちゃんが「遺言書は自筆しか有効ではない」と言われたと相談に パソコン書きや代筆は認められないの?
自筆証書遺言は、いつでも、どこでも、思い立った時に気軽に書けるのがメリットです。しかし、全文自筆でなければいけないなど作成には厳格な方式が定められていて、その方式に従わない遺言はすべて無効になってしまいます。
 
自筆証書遺言の作成は、高齢者にはハードルが高く負担となっています。そこで民法の改正が行われ、2019年1月13日から、財産目録はパソコン書きや代筆が認められるようになります。
 
遺言の方式には、大きく、自筆証書遺言と公正証書遺言の方式があります(他にも秘密証書遺言がありますが利用者が少ないので割愛します)。それぞれのメリット・デメリット、自筆証書遺言の改正内容について解説します。
 

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新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言は、遺言者が、紙に、自ら、遺言の内容の全文(目録を含むすべて)を手書きし、かつ、日付、氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成する遺言です。費用もかからず、いつでも、どこでも思い立った時に気軽に書けるというメリットがあります。
 
デメリットとしては、内容が複雑な場合には、法律的に見て不備な内容になってしまう危険があります。作成年月日を「〇年〇月吉日」などと書いて無効になるケースもあります。また、誤りを訂正した場合には、訂正した箇所に「〇字修正」「〇字削除」等と書き添えて押印をし、さらに、どこをどのように訂正したかということを付記して、そこにも署名しなければならないなど大変面倒です。
 
遺言書を発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどには、遺言書を破棄したり、隠匿したり、自分に有利なように偽造を行う危険もあります。紛失の危険もあります。
 
遺言書は、必ず、家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書を検認するための手続を経なければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。
 
誤解している方もいると思いますが、検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
 

自筆証書遺言の改正内容のポイント

前述のように、自筆証書遺言は全文自書しなければならないので、ワープロで作成することなどは認められません。また、病気等で手が不自由になり、字が書けなくなった方も、利用することができません。
 
改正民法では、2019年1月13日から遺言書に添付する財産目録は、1ページごとに署名・捺印すれば、全文自署でなくても認められるようになります。
 
また、自筆証書遺言の保管制度が創設され、本人が法務局に自筆証書遺言を持参すると、法務局が日付などの要件をチェックの上保管してもらえる制度が2020年7月までに施行されます。これにより「検認」の手続きも不要になります。紛失や改ざんの心配もなくなります。
 

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公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言は、遺言者が、基本的に、公証役場で、公証人の面前で、遺言の内容を口授し、それに基づいて、元弁護士や元裁判官の公証人が、遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成するものです。
 
なお、遺言者が病気等のため、公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人が、遺言者の自宅又は病院等へ出張して遺言書を作成することもできます。公証役場がどこにあるのかは日本公証人連合会のホームページで探すことができます。
 
公正証書遺言のメリットは、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしてくれますので、方式の不備で遺言が無効になるおそれがない点です。
 
また、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続きを経る必要がないので、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。
 
公正証書遺言は、原本、正本、謄本の3部が作られ、原本が公証役場に保管されますので、破棄や隠匿、偽造、紛失のおそれがありません。20年間保管されます。
 
デメリットとしては、自筆証書遺言と比べ、費用のかかる点と証人が2人必要な点です。作成費用は遺産の総額によって異なります。例えば、5000万円までなら2.9万円、1億円までなら4.3万円です。相続人となる人は証人にはなれませんので、探すのが大変な場合もあると思います。適当な証人が見当たらない場合には、1人6000円程度で公証役場にて紹介してもらうことができます。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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