更新日: 2019.05.17 その他相続

相続手続きにこれ1枚でOK!法定相続情報証明制度

執筆者 : 高橋庸夫

相続手続きにこれ1枚でOK!法定相続情報証明制度
相続を経験されている方はご記憶のことと思いますが、被相続人(亡くなられた方)が複数の銀行口座や証券口座、さらには複数の保険会社との契約、あるいは不動産の名義変更などの際に、それぞれ戸籍謄本等一式を用意して大変なご苦労をされたことがあると思います。
 
戸籍謄本などはもちろん有料(例えば、戸籍全部事項証明書で1通当たりの手数料が450円)でたくさん必要となればそれなりにお金もかかります。
 
これらの手間と費用を軽減し、相続手続きを簡素化できるある意味画期的な制度が、平成29年5月29日から法務省により運用開始となりました。それが「法定相続情報証明制度」です。
 
高橋庸夫

Text:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

相続手続きには「法定相続情報一覧図の写し」1枚でOK

この制度を利用すると「法定相続情報一覧図の写し」という被相続人と相続人の戸籍謄本の内容を一枚にまとめたものが発行され、相続手続きにおいて戸籍謄本一式の代わりにこの「法定相続情報一覧図の写し」を1枚提出するだけで手続きが完了します。
 
さらに、「法定相続情報一覧図の写し」は無料で発行できますので、複数の機関に何枚用意してもお金の心配もありません。そのため、金融機関ごとの預金払い戻しや名義変更のほか、不動産の名義変更にも利用できます。
 
また、複数の金融機関や保険会社などの相続手続きを進める場合に、費用の節約を考慮して戸籍謄本等一式を1セットのみ準備して順番に手続きするようなケースでは、ある機関に戸籍謄本等一式を提出して、その後返却を待って、次の機関に提出するなど時間的なロスが大きく、長い場合にはすべての手続きが終了するまで数カ月を要する場合もありました。
 
前述の通り、「法定相続情報一覧図の写し」は無料で必要な枚数を用意することができますので、結果的に相続手続き全体の時間短縮が可能となります。
 

「法定相続情報一覧図の写し」の受け取るには?

「法定相続情報証明制度」の申出書を、被相続人の本籍地、最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地を管轄するいずれかの登記所に提出します。その際に、被相続人と法定相続人全員の戸籍謄本が必要となります。
 
つまり、戸籍謄本等一式は1セットは必要です。法定相続人が確認できた時点で、その他の必要書類を集め、「法定相続情報一覧図」を作成します。被相続人と法定相続人の戸籍情報を1枚にまとめたものが「法定相続情報一覧図」となります。
 
記入用フォーマットと記載例が法務省のホームページに掲載されていますので、参考にしながら作成することができます。記載例も配偶者と子〇人など複数用意されていますので、記載する項目を確認しながら作業できます。なお、住所などは住民票に記載の通りに入力する必要があります。
 
登記所に届出できるのは、相続人とその親族、親族以外の代理人(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士などの有資格者)です。届出は郵送でも可能ですが、書類に不備等があった場合などを考慮すると、可能な限り直接登記所に出向いた方が安心だと思われます。
 
提出した「法定相続情報一覧図」は登記所に保管されますので、申出により「法定相続情報一覧図の写し」を必要通数受け取ることができます。作成から5年間は登記所に保管されますので、再交付を受けることも可能です。
 

【PR】相続する土地・マンションがあなたの生活を助けるかも?

まとめ

法定相続情報証明制度を使うことで、これまで手間と費用がかかった相続手続きを効率的に進めることができます。
 
この制度ができた背景には、昨今話題となっている空き家問題や長期間相続登記がされないまま放置されている所有者不明の土地の存在があります。つまり、このような事態を少しでも解決するため、相続手続きを可能な限り簡素化し、促進していくことが目的となっています。
 
注意点としては、現状で運用している機関が登記所と大手金融機関などに限られる点があります。徐々に提出できる金融機関は拡大していくと思われます。
 
また、平成30年4月1日より相続税の添付資料として、これまでは認められていなかった「法定相続情報一覧図の写し」が新たに認められています。これも画期的なことでしょう!
 
出典
法務省法務局 主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例

ライターさん募集