初任給が「手取り22万円」という娘。私の頃は「手取り16万円」が普通でしたが、それだけ今の若者は“恵まれている”のでしょうか? 実質賃金のデータとあわせて比較

配信日: 2025.06.03

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初任給が「手取り22万円」という娘。私の頃は「手取り16万円」が普通でしたが、それだけ今の若者は“恵まれている”のでしょうか? 実質賃金のデータとあわせて比較
新卒の初任給を聞いて「自分の頃より高い」と感じたことはありませんか?
 
2025年春卒業の新卒者採用では、初任給を大幅に引き上げた企業も多く、手取り20万円を超える人も珍しくありません。数字だけを見ると「景気が良くなった」と感じるかもしれません。
 
しかし、給料の額面が増えても、実際に手元に残るお金は本当に増えているのでしょうか?給料が上がっても物価も同時に上昇していれば、実質的な購買力は変わらない、むしろ下がっている可能性もあります。
 
本記事では、30年前と現在の物価上昇率と実質賃金のデータを比較し、私たちの暮らしが本当に豊かになっているのかを検証します。

30年前と今、初任給はいくら増えた?

まずは、具体的な数字で初任給の推移を見てみましょう。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、大卒の初任給は以下のように変化しています。

●1994年(平成6年)の大卒初任給(男女計):18万8450円
●2024年(令和6年)の大卒初任給(男女計):24万8300円

この30年間で、大卒の初任給は平均で約6万円も増えていることがわかります。この金額だけをみると、「やっぱり今の若者は恵まれている」と思うかもしれません。
 
しかし、忘れてはいけないのが物価の上昇です。給料が増えていても、生活費がそれ以上に上がっていたら、手元に残るお金はむしろ少なくなっている可能性もあります。
 

30年間で物価はどれくらい上がった?

30年で初任給の平均は約6万円増えましたが、スーパーに行けば「いつの間にこんなに?」と感じるのが、物価の上昇です。
 
総務省のデータによると、消費者物価指数(2020年基準)は以下のようになっています。

●1994年(平成6年)の消費者物価指数:96
●2024年(令和6年)の消費者物価指数:108.5

この数字を見ると、2020年を基準にこの30年間で消費者物価指数は約13ポイント上昇していることがわかります。特に近年は、電気代・ガソリン代・食料品の高騰が目立ち、生活を圧迫しています。
 
ハンバーガーや缶コーヒー、お米など、私たちの生活に直結する食料品においても、日々の暮らしで物価上昇を実感している人も多いでしょう。
 

新卒者の実質賃金は上昇している?

実質賃金とは、物価変動を加味した給与の価値のことです。
 
昨年の給料が20万円で今年も同じ給料だった場合、去年まで100円で買えていたパンが150円に上がれば、買えるパンの数は減ってしまいます。そうなると、生活が少し苦しくなったと感じるはずです。
 
この「給料でどれくらいのモノやサービスが買えるか」という、実際の購買力を示すのが実質賃金です。
 
今回のケースでは、この30年間で消費者物価指数が約13ポイント上昇している一方で、大卒初任給(男女計)は、1994年の18万8450円から2024年の24万8300円へと、約31%増加しています。
 
この初任給の増加率と消費者物価指数は単純には比べられませんが、初任給に限って言えば、賃金の伸びが物価上昇を上回っていると考えて差し支えないでしょう。
 
しかし、これはあくまで初任給をもらう20代という特定の層に限った話です。日本全体の平均的な実質賃金指数は減少傾向にあるのです。
 

日本全体の実質賃金指数は下降している

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」に基づく実質賃金指数を見ると、日本の平均的な賃金は、物価上昇に追いつけていないのが現状です。
 
特に2022年、2023年と2年連続で実質賃金が前年比マイナスとなるなど、物価高に賃上げが追いついていない状況が鮮明になっています。
 
また、中高年世代の多くは、若年層のような積極的な賃上げの恩恵を十分に受けていないとの声も上がっています。
 

まとめ

初任給は、30年前と比べると額面で約6万円増えていますが、2020年を基準に消費者物価指数も約13ポイント上昇しています。初任給をもらう20代に関しては、物価上昇を上回る賃上げが見られ、実質賃金が上がり、暮らしやすくなっていると言えるかもしれません。
 
しかし、日本全体の平均的な実質賃金は、物価上昇に追いついていません。特に2022年、2023年は実質賃金が2年連続でマイナスです。若年層と中高年層では賃金上昇の実態が異なり、表面的な数字だけでは見えない豊かさのギャップが存在していると言えるでしょう。
 

出典

厚生労働省 令和6年賃金構造基本統計調査の概況
総務省 2020年基準 消費者物価指数
厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和6年分結果確報
 
執筆者:渡邉志帆
FP2級

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