更新日: 2024.09.30 年収

「年収1000万円以上」は「高収入」「お金持ち」というイメージがありますが、実際に「お金持ち」なのですか?

「年収1000万円以上」は「高収入」「お金持ち」というイメージがありますが、実際に「お金持ち」なのですか?
「年収1000万円以上」と聞くと「高収入」「お金持ち」などというイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。年収が高ければ、その分を貯蓄や投資に回しやすくなりますが、高収入の人が必ずしも十分な貯蓄をしているとはかぎりません。
 
本記事では、年収1000万円以上の人々の貯蓄実態と、高収入の人であっても貯蓄が増えない理由についても解説していきます。

執筆者:丸山希()

年収1000万円超の給与所得者や世帯年収1000万円以上の世帯の割合は?

国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は約458万円です。同調査によると、給与年収1000万円超である給与所得者の構成割合は全体の5.4%で、対象者を男性のみに絞ると8.4%、女性のみに絞ると1.5%となっています。この結果から、年収1000万円超を目指すのは難しいといえるでしょう。
 
また、厚生労働省の「2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況」の「所得の分布状況」によると、世帯年収1000万円以上の世帯の割合は下記のとおりです。
 

・1000~1100万円:2.6%
・1100~1200万円:2.3%
・1200~1300万円:1.8%
・1300~1400万円:1.0%
・1400~1500万円:0.8%
・1500~1600万円:0.7%
・1600~1700万円:0.3%
・1700~1800万円:0.3%
・1800~1900万円:0.3%
・1900~2000万円:0.2%
・2000万円以上:1.3%

 
世帯年収1000万円以上の世帯は全体の11.6%で、給与所得者のうち1000万円超を稼ぐ人の割合(全体の5.4%)よりも高くなっています。
 

世帯年収1000万円超の世帯の「貯蓄額」「負債額」「純貯蓄額」は?

「年収が高いほど、貯蓄も多くなるのではないか」と思われますが、世帯年収1000万円以上の世帯の貯蓄額、負債額、純貯蓄額はどうなっているのでしょうか。総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 二人以上世帯 詳細結果表」第8-2表(年間収入階級別貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高・二人以上世帯)によると、次のとおりです。
 

貯蓄額 負債額 純貯蓄額
年収1000~1250万円 2233万円 1246万円 987万円
年収1250~1500万円 2593万円 1303万円 1290万円
年収1500万円以上 4405万円 1410万円 2995万円

           
 
数値から見ると、世帯年収1000万円以上の世帯の平均貯蓄額は2000万円を超えていますが、平均負債額は1000万円台となっており、住宅ローンや車のローンなど高額な負債を抱えている世帯が多いと考えられます。
 
なお、老後資金や教育費に充てられる「純貯蓄額(=貯蓄額-負債額)」は900~2000万円台となり、計画的な家計管理と貯蓄努力がなければ、十分な資産形成は難しいといえるでしょう。自身の家計状況に合わせ、貯蓄計画を立てていくことは不可欠です。
 

世帯年収1000万円以上でも、貯蓄ゼロの世帯もある

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査(令和5年)]」の調査によると次のとおり、世帯年収1000万円超の世帯のうち、約1割が「金融資産非保有(=貯蓄ゼロ世帯)」となっています。
 

・1000~1200万円未満:11.5%
・1200万円以上:9.7%

 

「高所得貧乏」の理由

世帯年収が高いにもかかわらず貯蓄がゼロであるなど「高所得貧乏」になる理由としては、「高額な住宅ローン返済」や「浪費が多い」ため、貯蓄に回す資金の余裕がないことが挙げられるでしょう。特に都市部に住む子育て世帯の場合は、住宅ローンや家賃のほか教育費が高額になり、貯蓄が難しくなるケースも多いと考えられます。
 
また、高収入になればなるほど税金負担が大きくなり、所得制限により公的助成や給付金が受けられなくなります。ちなみに、課税所得が1000万円を超えると、所得税の税率が33~45%にもなってしまい、思うように手取りが増えません。
 
家計の見直しをするほか、iDeCoや生命保険料控除、住宅ローン控除など多くの税制優遇制度をフルに活用して、手元に残るお金を増やす工夫をしましょう。
 

まとめ

年収1000万円以上の世帯は、平均的な世帯よりも貯蓄額が多いですが、負債額も高額です。
 
中には高収入にもかかわらず「貯蓄ゼロ」の世帯も存在することから、「年収が高い=貯蓄も多い」とは一概にいえないと考えられます。まずは家計の見直しを行い、貯蓄は「毎月手取りの10%」など計画的に行うことをおすすめします。
 

出典

国税庁長官官房企画課 令和4年分民間給与実態統計調査
厚生労働省 2023(令和5)年 国民生活基礎調査の概況
総務省統計局「家計調査/貯蓄・負債編 二人以上の世帯 詳細結果表」貯蓄及び負債の1世帯当たり現在高 8-2年間収入階級別・二人以上の世帯
金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世論調査]令和5年調査結果
国税庁 No.2260 所得税の税率
 
執筆者:水上克朗
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー

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