更新日: 2023.03.30 年収
本当にコスパのいい年収は「800万円」!?「600万円」よりコスパが優秀な理由を解説
年収が増えれば、それだけ税金や社会保険の負担も重くなっていきます。そのため、稼ぎが増えたのに生活が楽にならないというケースも珍しくありません。
では、最もコスパがいいと言える年収はどのくらいなのでしょうか? 本記事では、税金や控除、手当などの側面から最もコスパのいい年収について解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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手取り額を最大にするには年収800万円台がベスト
日本の所得税は累進課税制度を採用しています。年収が多くなればなるほど所得税の負担が大きくなる仕組みです。制度は何度も改正されており、そのたびに高所得者の負担は重く、低所得者の負担が軽くなるように調整されてきました。
特に年収900万円を超えると33%という重い税率が課されるため、コスパが悪いとされています。そのため近年では、「税金が安く抑えられる年収600万円台が最もコスパのいい年収」という声もよく聞こえてきます。
しかし、より多くの収入を得られるチャンスがある人にとっては、「600万円台で抑えるのがもったいない」と思う人も多いでしょう。
その場合は、年収800万円台前後を目指すのがおすすめです。年収695万円を超えると税率は上がってしまいますが、その上昇率は3%ほどとそれほど大きくありません。さらに、さまざまな控除を使うと税率を大きく減らすことも可能です。
年収800万円の実際の所得税率
では、年収800万の人が最大でどれだけの控除を受けられるのか考えてみましょう。年収800万円の人が受けられる「給与控除」は、収入×10%+110万円で算出できます。
つまり、800万円×10%=80万円に110万円を足した190万円です。これに「基礎控除48万円」、年収800万円の社会保険料は約115万円なので、この時点ですでに約353万円の控除が受けられます。
つまり、所得税がかかるのは残りの442万円に対してなので、実際課される所得税は20%になります。そして、会社員でも可能な節税対策を最大限に行うことで、課税所得を329万9000円以下に抑え、税率を10%台にまで下げることも可能です。
年収800万円ができる節税対策
給与収入103万円以下の配偶者や、収入が48万円以下の親族と同居している場合は、「配偶者控除」や「扶養控除」を受けられます。
この控除額は年収900万円を超えると減額されてしまうので、そういう意味でも年収800万円台はコスパがいいと言えます。また、確定申告が必要になりますが、「住宅ローンや生命保険料の控除」を利用することで課税所得を減らすこともできます。
さらに、「ふるさと納税」も年収800万円となると、夫婦で最大12万9000円分利用できます。無理に高額な返礼品を選ばなくても、ふるさと納税の返礼品の中には定期的に野菜や果物を送ってくれるプランもあります。
そのため、実質的に税金負担をほとんど感じることなく控除を受けることも可能です。ほかにも、特定支出があった場合に「特定支出控除」という制度を利用することで、さらに控除額を大きくすることができます。
特定支出控除とは、通勤にかかる交通費や引っ越し費用、単身赴任者の帰宅にかかる費用、資格取得にかかる費用、業務に必要な書籍を購入する費用、交際費などの合計が給与所得控除額の2分の1を上回ったときに利用できる制度です。
頻繁に接待をする機会がある人や、単身赴任をしている人などは該当する可能性があるので、控除額を増やすためにもこれらの費用をしっかり管理しましょう。
ふるさと納税と扶養控除だけでも約50万円、そこに住宅ローンや生命保険などの控除を合わせていくと控除額もかなり大きくなるでしょう。
一方、住宅ローンがなく、扶養する家族もいないという人にも効果的な節税方法があります。2024年から新制度が導入される「NISA」を利用すれば、課税所得を329万9000円以下にすることも可能です。
新しいNISAでは非課税期間が無期限、非課税保有限度額が1800万円と、非常に節税効果が高いので利用しない手はありません。
課税所得が329万9000円を上回る分をNISAに積み立てていけば、税率を10%まで軽減することが可能です。今すぐ使える資金は減ることになりますが、年収600万円に比べて資産形成においても有利になり、税率も同等になります。
また、世帯年収約910万円から高校無償化の対象から外されるなど、年収900万円を超えた辺りから複数の手当が受けられなくなる場合があります。以上のことから「節税を徹底する」という条件をクリアすれば、最もコスパがいい年収は800万円台と考えていいでしょう。
まとめ
年収600万円が最もコスパのいい年収とされていますが、年収800万円でも節税次第では所得税を10%まで抑えることが可能です。年収600万円がベストだと思い、収入アップのチャンスをあえて避けていた人は、節税を見直してもう一段ステップアップしてみてはいかがでしょうか。
出典
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1199 基礎控除
国税庁 No.1180 扶養控除
国税庁 No.1191 配偶者控除
国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除
金融庁 新しいNISA
文部科学省 2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」リーフレット
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部