更新日: 2023.02.15 年収
昨年の「賃金引き上げ」実施率が95.4%だった「建設業」は平均年収いくら?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
なぜ建設業の賃金引き上げが著しいのか
令和4年度の平均的な賃金引き上げ実施率は85.7%でした。それに対して建設業は95.4%と各業種と比較して抜きんでた賃金の引き上げ実施率となっています。全体で見ても「学術研究,専門・技術サービス業」に次いで2番目の引き上げ実施率です。
図表
産業 | 令和4年の賃上げ状況 |
---|---|
学術研究,専門・技術サービス業 | 95.7% |
建設業 | 95.4% |
医療,福祉 | 95.2% |
製造業 | 94.8% |
不動産業,物品賃貸業 | 93.3% |
金融業,保険業 | 92.9% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 92.4% |
情報通信業 | 89.3% |
鉱業,採石業,砂利採取業 | 86.6% |
卸売業,小売業 | 83.3% |
教育,学習支援業 | 80.9% |
サービス業(他に分類されないもの) | 79.4% |
運輸業,郵便業 | 75.6% |
宿泊業,飲食サービス業 | 71.1% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 67.8% |
※厚生労働省 令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況より筆者作成
なぜ建設業はこのように賃金引き上げの実施が著しいのでしょうか。その理由はいくつか考えられますが、一つに人材の確保が挙げられます。
建設業に限った話ではありませんが、日本は多くの業界で人手不足が課題となっています。建設業も例外ではありません。優秀な人材をより多く確保し企業の継続と成長のために賃上げの引き上げに踏み切ったものと考えられます。
もう一つの理由に、賃上げによって公共工事の入札が有利になるという点があります。令和4年4月1日以降に国の機関が発注する公共工事の契約先は賃上げしている企業から優先的に選ばれやすくなる仕組みとなりました。このように、人材と仕事の両面を確保するために建設業界で多くの企業が賃上げを実施していると考えられます。
建設業の平均年収はどれくらい?
厚生労働省の令和3年賃金構造基本統計調査によれば、企業規模10人以上の建設業の企業における平均年収は501万2800円となっています。業界を問わない場合の平均年収は456万4300円となっていることから、建設業の平均年収は他の業界に比べて高い水準にあるといえます。
男女別にみると建設業の平均年収は男性で520万1400円、女性で381万3000円となっています。他業種の平均は男性で506万4600円、女性で366万200円となっており、男女ともに建設業に従事する方の年収は他の業種に比べて高い水準にあるといえるでしょう。
また、令和4年度は1人平均賃金の改定額が8101円となっています。それを踏まえると令和4年度の建設業の平均年収は510万円を上回っていることが推測されます。
建設業界は働き方に不安がある?
時折、建設業界は働き方がキツく不安のある業界だといわれることがあります。確かに現状、そういった場面もないわけではありません。しかし、建設業界は国土交通省が主導となって働き方改革や生産性の向上といった業界の改善に取り組んでいます。特に令和5年度には原則として全ての工事で週休2日を確保することを目指しています。
国や国土交通省が主導で動いていることを考えると、建設業界は働き方について今後改善されていくことが見込まれる業界です。
建設業界の平均年収は501万円ほど
建設業界の平均年収は他の業界と比べて比較的高めの501万円程度となっています。令和4年度の賃金引き上げ実施率は95.4%と、他の業界と比べて賃金面について優れた業界であるようです。
建設業界についてはさまざまな意見がありますが、平均年収が高く働き方についても見直しが進んでいます。今後、建設業界はある程度期待できる部分も有している業界といえるでしょう。
出典
厚生労働省 令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況
e-Stat 賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類
執筆者:柘植輝
行政書士