更新日: 2023.02.09 年収
【インボイス制度】所得が「10%少なくなる」は本当?「免税事業者」のままのほうがいいの?
「インボイス制度はひどい」「インボイス制度で廃業する」といった声も多く出ています。中には、「個人事業主の所得が消費税の10%分、丸々減るのではないか?」と不安に感じている人もいるかもしれません。
本記事では、インボイス制度が個人事業主にどう関係するのか、どの程度個人事業主の所得が減るのかを解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
インボイス制度とは?
インボイス制度開始により、仕入税額控除のルールが新たに定められます。
仕入税額控除は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を控除する仕組みです。例えば、400万円(税抜)で仕入れた商品を500万円(税抜)で販売した場合、納める消費税は以下のように計算します。
50万円(売上にかかる消費税)-40万円(仕入れにかかる消費税)=10万円(納税する消費税)
*事業者が課税事業者(本則課税)の場合
この仕入れにかかる消費税を控除する仕組みは、材料の仕入れのみでなく、仕事を外注した際も同様です。インボイス制度開始前は、仕入先や外注先がどんな事業者でも仕入税額控除を行えました。しかし、インボイス制度開始後は、仕入先や外注先が「適格請求書発行事業者」の場合のみ仕入税額控除が可能です。
そのため、適格請求書発行事業者以外の事業者への仕事の外注や仕入れは、仕入税額控除が行えずに損失を被ることになります。適格請求書発行事業者以外の事業者から400万円(税抜)で仕入れた商品を500万円(税抜)で販売した場合、納める消費税は以下のように計算します。
50万円(売上にかかる消費税)-0円(仕入税額控除ができない)=50万円(納税する消費税)
仕入税額控除ができる場合と比べ、40万円も多く消費税を納めなくてはいけません。
免税事業者は課税事業者になる必要がある
個人事業主は、適格請求書発行事業者にならないと、取引先が仕入税額控除をできずに損失を被る可能性があります。ただし、適格請求書発行事業者になるには要件が存在します。それが「課税事業者」であることです。
売上が1000万円以下の個人事業主の多くは免税事業者ですが、適格請求書発行事業者になるには課税事業者への変更が必要です。
課税事業者は消費税を売上として受け取れない
課税事業者は、免税事業者と違って消費税を納める義務が生じます。今まで100万円(税抜)の仕事を受注した際に受け取っていた消費税10万円を、国に納めることが必要です。
これが、「個人事業主の所得が10%少なくなる」と言われる理由となります。
簡易課税事業者になれば消費税の減額が可能
課税事業者には、本則課税と簡易課税の2種類があります。簡易課税を選択すれば「みなし仕入れ率」を適用でき、消費税の減額が可能です。
みなし仕入れ率とは、売上にかかる消費税から一定割合を控除できる仕組みで、業種によって控除割合が決まっています。例えば、飲食店のみなし仕入れ率は60%、サービス業(飲食店は除く)のみなし仕入れ率は50%です。
Webライターや動画編集などのフリーランスは、仕入れ率50%に該当することが多いです。100万円(税抜)売り上げた場合、消費税10万円のうち、納税額は5万円(10万円-5万円)に減額されます。
2026年9月30日までは支援措置が実施される
インボイス制度開始に伴い免税事業者から課税事業者になった個人事業主には、支援措置が実施されます。
2026年9月30日まで、納める消費税が売上税額の2割に減額されます。そのため、100万円(税抜)を売り上げた場合に納める消費税は2万円(100万円×10%×2割)です。
免税事業者のままという選択肢も検討しよう
支援措置が実施されますが、免税事業者から課税事業者になれば所得が減ることに間違いはありません。
そのため、インボイス制度開始後も免税事業者のままでいるというのも、一つの選択肢です。特に、取引先が個人の場合には仕入税額控除を必要としないので、課税事業者になる必要性は薄いでしょう。
また、取引先が仕入税額控除をする場合でも、取引先と交渉ができる関係性であれば、免税事業者のままでいても取引を継続してもらえるかを確認してみてもいいかもしれません。
出典
国税庁 インボイス制度の概要
国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分
財務省 インボイス制度、支援措置があるって本当!?
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部