高収入なのに貯金が増えない…まず何から始める?
配信日: 2020.10.21
こうした方たちがお金を貯められるようにするためには、まず何から着手すべきか、具体的にアドバイスします。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/
目次
なぜお金が貯まらないのか
お金が貯まらない原因は2つしかありません。それは「支出が多すぎる」か「収入が少なすぎる」のどちらか、あるいはその両方です。比較的収入が多いにもかかわらずお金が貯まらないということであれば、その原因は「支出が多すぎる」ということにほかなりません。
では支出を減らす方法を考えればよい、ということになりますが、そう簡単にはいかないでしょう。一度慣れてしまった生活レベルを落とすということは、非常に難しいことだからです。これまで資産形成に向き合ってこなかった人も、今から始められることを考えてみましょう。
小さな節約よりも固定費を見直す
生活するうえでの固定費といえる費用の主なものは、住宅費、保険料、通信費、水道光熱費、などがあります。そのほかに、自家用車をお持ちの家庭では自動車関連費などもあるでしょう。小さな節約よりもこうした「毎月必ずかかる費用」を見直すほうが効果的といえます。
保険を見直す
「日本人は保険に入りすぎ」といわれます。保険にも生命保険、火災保険や自動車保険などの損害保険、医療保険などさまざまなものがあります。
保険の基本的な考え方は「万が一の時、自分の資産ではカバーできないほどの経済的なダメージをカバーする」ことです。
必要な保険の典型的な例は、ご自身の身に何かあった時に家族の生活が維持できないリスクに備える生命保険です。子供の教育費が必要であれば、卒業までの教育費を賄える保険に入っておくべきでしょう。卒業までの期間が短くなれば必要な保険金額も減るはずです。
保険の掛けすぎは「当たりたくない宝くじ」を購入しているようなもの。保険の目的をしっかり考えておくべきです。
通信費を見直す
通信費の中でも、携帯電話料金が大きな負担になっている家庭は少なくないでしょう。4人家族で3〜4万円程度の支出になっている場合もあります。家族割引などを使うほか、MVNO(いわゆる格安携帯)への乗り換えで半分程度まで抑えられる場合もあります。
手続きが煩雑に感じて、なんとなくメジャーな携帯電話会社を使い続けているケースも多いと思います。最近では携帯電話会社がさまざまな付加価値を付け、ユーザーの囲い込みを行っていますが、負担が大きい場合は乗り換えを検討してみてはいかがでしょう。
サブスクの利用を見直す
最近は毎月定額払いで利用できる、さまざまな「サブスクリプションサービス」が増えてきました。しかし、あまり使っていないのに費用だけ払っているものはありませんか? サブスク事業を行う側から見れば、毎月安定的に売り上げを確保できますが、利用者の側から見れば使っていなくても定額料金を支払うことになります。
必要な時に必要な分だけ買うほうが、結果的に支出を抑えられるとよくいわれます。ヘビーユーザーならともかく、大して利用していないのに料金だけ支払うのは事業者の思うつぼです。
光熱用水費を見直す
近年、電力・ガスが自由化になり、利用者が電力・ガス事業者を選べるようになっています。使い方によっては見直しによって費用が下がることもあります。あまり大きい効果ではありませんが、毎月かかるものなので、積み重なると結構な差になります。
住宅関連費を下げる
持ち家の場合の住宅関連費にはローンの返済、税金、修繕費、マンションの管理費などが含まれます。住宅ローンは金利が借り入れ当初より下がっている場合、借り換えることで返済額を落とすことができる可能性があります。
賃貸の場合、住宅関連費といえばほとんど家賃です。契約更新時に、家賃を減額できないか交渉してみるのも検討の余地があります。交渉は厳しいでしょうが、「うまくいけばもうけもの」くらいの気持ちでチャレンジしてみてはいかがでしょう。
収入に比べ家賃の負担が大きすぎる場合、家賃の安い物件に引っ越すことも検討する必要があるかもしれません。一般的には家賃負担率(額面の年収に占める支払家賃の割合)は20~25%程度が理想といわれますが、家族構成などによって必ずしもすべての人に当てはまるものではありません。ご自身、ご家族の状況を考慮して考えるべきです。
変動費の節約は疲れる
スーパーでの買い物で少しでも安いものを買う、特売品を狙うといったような細かい節約は、効果のわりに大きな負担になります。
もちろん、普段の生活に必要なものが安く買えるのはありがたいことですので、ダメということではありません。しかし、スーパーなどはほかの商品も買ってもらうために、特売品でお客を引き付けようと考えます。結局大して節約できていないということにもなりかねません。
収入からあらかじめ貯蓄分を差し引く
最も効果的な貯蓄の方法は、収入があった時点で貯蓄に回す資金をあらかじめ差し引き、生活費とは別の口座に移すことです。給与の入金口座から月末に一定額を定期預金口座に移したり、投資信託などを積み立てで購入するなどが典型的な方法です。最近では、iDeCoやNISAなど税制優遇のある方法もあり、有効に活用すべきでしょう。
すぐに使えるところにお金があると「まだある」と思って使いたくなってしまうのが人間心理。また、支出後に残った資金を貯蓄に回そうと考えていても「貯蓄口座に移す」という手間がかかることもあり、なかなか実現できません。別口座に移した後、残りの資金でやりくりするようにしたほうが、確実に貯まりやすくなります。
さらに収入を増やす方法はないか
お金が貯まらない理由は、冒頭にお伝えした2つしかありません。収入を増やすという選択肢があるならば、考えてみてはいかがでしょう。
ご主人の収入が多いので奥さまは専業主婦というご家庭では、奥さまが働くという選択肢もあります。お子さまが小さいうちはなかなか難しいと思いますが、小学校高学年くらいになれば、学校に行っている間だけでもできる仕事に就き、収入を得ることもできます。
そうした仕事をすることで収入が増えるだけでなく、外部とのコミュニケーションの機会が増え、生活にリズムが生まれ充実するといった効果も期待できます。
資産形成の重要性が高まっている
人生100年時代といわれるように、人の寿命が長くなっています。一方、ある程度の年齢に達すると多くの人は収入が減ります。子供の成長過程では教育費の負担もありますし、住宅を取得された方であればローンの返済、賃貸住宅にお住まいの方であれば家賃の支払いは一生涯続きます。
子供の教育費は卒業、就職すればなくなりますし、お子さまが独立すれば生活費の負担も減るでしょう。しかし、近年は結婚年齢や住宅取得時期も遅くなる傾向があり、仕事をリタイアするころまで教育費の負担が続く、住宅ローンの負担はリタイア後も続くという家庭も増えています。
長寿化している一方、「お金を貯めやすい時期」は短くなる傾向があり、自分たちの老後資金として、計画的に資産形成を行う重要性は高まっています。
まとめ
ただやみくもに支出を減らそう、収入を増やそうと思っても、どこまで頑張ればよいのかわからず、長続きしない恐れがあります。貯蓄できる家計体質にするためには、家族の将来像を思い描き、それを実現するために必要なお金はどのくらいなのかを把握することが効果的です。
多くのファイナンシャル・プランナーは「家計のキャッシュフロー表」の作成を行い、家計が将来も健全に維持でき、資産形成できるか、できない場合にはどのような改善策があるかを検討してくれます。
自分だけでは、なかなか進まない改善を後押しする心強い味方になってくれるでしょう。
自分でファイナンシャル・プランナーの資格を取る勉強をする、という方法もあるでしょう。実際に資格を取るかどうかはともかく、金融リテラシーを高めることはさまざまなことで役に立つはずです。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役