更新日: 2020.09.19 ライフプラン
将来を安心して過ごすための「ライフプラン」の考え方
具体的にはどんな相談を受け、どんな回答が得られるのでしょうか。今回は「ライフプラン」を考えるヒントについてお伝えします。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/
そもそも「ライフプラン」って?
まず、ライフプランとはどのようなものかについて考えます。
まず、はじめに考えるのは「自分と家族の将来像」。「マイホームがほしい」「65歳でリタイアして地方に移住したい」「子供には充実した教育を受けさせたい」「高級車に乗りたい」「毎年海外旅行がしたい」、ゴルフざんまいの老後を過ごしたい」「海が見える別荘がほしい」などなど、人が描く将来像は十人十色です。
「ライフプラン」は、自分自身やご家族が将来どのように過ごしたいのか、安心して充実した生活を送ることができるか、といったことを思い描くことです。まだ実現していない将来であり、必ずそのとおりになるわけではないかもしれません。
「どのようになりたいのか」を思い描き、それを実現するために何をすべきなのかを考えることにもつながる「設計図」を作ることにも似ていますので、「ライフデザイン」ともいえます。これから変わっていく将来もあるでしょう。そのときには修正を加えていけばよいのです。
一方で、それを実現するためには「お金」が必要になります。「思い描いた将来」を実現するためには、「いつ」「どのくらいの費用」が必要になるのか。それを把握し、そのための資金をどのように形成するのかを考えておく必要があります。
それぞれの人、家庭が思い描く将来のゴール、目標を設定したうえで、そこに至るプロセスを考えることが重要になります。
ファイナンシャル・プランナーは、資金面でそのライフプランを実現するための裏付け作業のお手伝いをする仕事といえるでしょう。
ライフプランの考え方
将来計画も十人十色ですが、現在の状況も人それぞれです。持ち家があるか、賃貸か、これから購入するのか。現在の金融資産の状況や今後の収入予測。家族構成。将来の相続などによる資産継承の有無。他にもさまざまな要素があるため、すべてに人に共通のライフプランはあり得ません。
老後2000万円問題は記憶に新しいところです。そのとき使われたデータは「標準的家庭のモデルケース」といわれていますが、もはや何が標準なのかもよく分かりません。
次に述べる人生の3大資金のほか、「子供や孫に財産を残したい」「子供が結婚するときには援助したい」「できる限り趣味を持ち続けたい」などといった希望を実現することも考慮しておきたい場合があるでしょう。
不測の出費にある程度備えておくことも必要ですが、最も重要なのは予測できる支出を把握しておくことです。
いくらすてきな将来像を思い描いても、そこまでの道がつながっていなければたどり着くことができません。
人生の3大資金「住居費」「教育費」「老後資金」
「住居費」は、賃貸の場合には家賃、持ち家の場合には住宅ローンの支払いや税金、管理費や修繕費などで支出する金額です。住むエリアや家族構成によっても差はありますが、多くの人にとって必要な資金であり、大きな額になります。
将来マイホーム取得を希望される場合には、できれば購入までに頭金になる資金を作っておくことが理想です。
「教育費」はお子さまがいらっしゃれば必ず必要になります。お子さまの人数や、どのような教育を受けさせたいと考えるかによって、かかる金額にも差があります。
そして、教育費はお子さまが生まれたときに、おおよそいつ頃必要になるかが分かります。高校や大学に進学する時期には入学金がかかるほか、在学中には学費がかかります。
場合によっては、塾や習い事などに支払うお金も必要でしょう。必要な時期に資金が不足していた場合には奨学金の利用や、学資ローンなどで借り入れるという選択肢もありますが、金利がかかったり、子供が返済義務を負うような借り入れはできれば避けたいところです。
大きな支出が発生する時期までに準備できていることが理想でしょう。
「老後資金」はご自身のための資金です。「老後2000万円問題」の2000万円という金額はすべての人に共通ではありません。住むところやどのような生活水準を考えるかによって金額には大きな差が出ます。日本人の長寿化している現状を考えれば、ある程度期間にも余裕をもって想定しておきたいところです。
その他にも生活するうえで必要な費用、趣味を続けるための費用などさまざまなものを考慮しておく必要があります。
具体的な相談事例
私が代表を務める西山ライフデザインは「不動産に強いFP」としてご相談を受けることが多いため、ライフプランの中でも「住宅の取得」を現実に考えていらっしゃる方が多いのが特徴です。その中でも多いのは「住宅ローンが家計を圧迫しないか不安」と感じている方からのご相談です。
ご相談者:夫38歳(会社員)、妻36歳(会社員)、子供6歳(小1)、3歳(保育園)
現在の貯蓄状況:預貯金500万円、世帯年収:900万円
購入を希望する不動産:マンション(築15年、3LDK、80平方メートル、5500万円)
ここに記載した条件だけを見れば、このご家庭が仮に住宅取得資金の全額を住宅ローンで借り入れて購入することは可能だと考えられます。仮に全期間固定金利、金利1.5%で借り入れた場合の月々の返済金額は18万円程度。
世帯年収900万円ということは月額75万円。返済比率(収入に対し返済に充てる金額の割合)は24%程度となり、ペアローンで借り入れれば特殊な事情がない限り銀行の審査も問題なく通ると考えられます。
しかし、小さなお子さまがいらっしゃり、2人とも中学から私立に通わせたいと考えていると少し慎重に考えなければいけなくなるかもしれません。
まず、私立中学入学から大学卒業までの教育費、さらに受験のための塾の費用なども考慮すれば、進む学校にもよりますが1人当たり1500万円以上かかると想定されます。
お子さまの年齢が3歳違いですので、上の子が高校入学すると同時に下の子は中学に入学。上の子が大学に入学するときに下の子が高校入学となり、そのときにまとまった支出が発生します。これらの時期にかかる費用を準備できるかも、あわせて考えておくべきでしょう。
このご家族はたまたま奥さまがひとり娘で、そのお父さまがお子さま(孫)に非課税の特例を利用して教育資金を贈与することで、教育費の準備にめどが立ったことから安心して住宅を購入することができました。
まとめ
すべての人が、先ほどの相談事例のように親からの資金提供が受けられるわけではありません。人によって家族構成や背景が異なるため、周りの人の様子も参考になりません。
ライフプランの作成は必ずご自身やご家族のオリジナルのものであり、ファイナンシャル・プランナーに相談した場合も「オーダーメイド」な対応になります。答えも1つではありません。
ファイナンシャル・プランナーに相談するかどうかはともかく、ライフプランの検討とそれを実現するための道筋は、最終的に自分で決めなくてはなりません。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役