更新日: 2020.07.31 働き方
年次有給休暇5日取得義務。もし守らなかったら、企業にどんな罰則がある?
日々の変化に振り回されて、忙しくしていると忘れてしまいがちなのが休暇の取得です。2019年4月から年次有給休暇5日を義務化する制度がスタートしましたので、人を雇う使用者は、一定の勤務日数がある労働者に休暇を取らせなければならなくなりました。
権利を付与される労働者側もルールを理解し、良い仕事をするために計画的に休暇を取る必要があります。このコラムでは新しい有給休暇の制度について確認しておきます。
執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。
年次有給休暇を取得できる人
労働基準法において、労働者は以下の2点を満たしていれば年次有給休暇を取得することができます。
(1)6ヶ月継続して雇われている
(2)全労働日の8割以上出勤している
※新型コロナウイルスの影響などで会社都合の休業が発生した場合の休業日は、上記計算上の全労働日数に含めないという考えが一般的です。詳しくは、お勤めの会社の人事部にご確認ください。
使用者(雇う側)は、原則6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤していた労働者に対して、10日の年次有給休暇を与えなければなりません。この対象となる労働者には、管理監督者(管理職)や有期雇用労働者も含まれます。社員を統括するような立場の方も年次有給休暇を取得することができます。
また、パートタイム労働者など所定労働日数が少ない労働者に対しても年次有給休暇は付与され、その場合は所定労働日数によって比例付与となります有給休暇は正社員だから取得できるというわけではなく、一定の日数以上働いている労働者皆に付与されるものとなっています。
年次有給休暇のルール
年次有給休暇は労働者が行使することができる権利であり、使用者は以下のようなルールに従わなければなりません。
(1)年次有給休暇は労働者が請求した時季に与えること。
(2)年次有給休暇の請求権の時効は2年。前年度に取得されなかった年次有給休暇は翌年度に与える必要がある。
(3)年次有給休暇を取得した労働者に対して賃金の減額、その他不利益な扱いをしてはならない。
こうしたルールを基に、労働者が年次有給休暇の取得を請求した場合、使用者は休暇を与える必要がある制度になっています。
年次有給休暇取得の義務化
2019年4月から使用者に対して、年5日の年次有給休暇を労働者に取得させることが義務化されました。それまでは年次有給休暇の取得日数について、使用者に特に義務はありませんでした。
対象者は年次有給休暇が10日以上付与される労働者で、有給休暇自体が付与されない実労働日数が少ない労働者は対象ではありません。
パートタイマーや勤務日数が流動的な働き方をされている方は、1年間の所定労働日数などを確認するために雇用契約や規定をチェックしてみましょう。万が一、付与されている有給休暇日数に疑問があれば、人事部や使用者に問い合わせてみてください。
使用者側の罰則とは
使用者である企業などには、以下のような違反があった場合は罰則があります。
(1)年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合
⇒30万円以下の罰金
(2)使用者による時季指定を行うケースで、就業規則に記載していない場合
⇒30万円以下の罰金
(3)労働者の請求する時季に所定の年次有給休暇を与えなかった場合
⇒6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金
悪い噂は広まるのが早いといいます。もしこれらの違反が発生したことが広まった場合、採用活動や対顧客といった面でも悪い印象を与え、相当な企業のイメージダウンとなります。
以前は、若手社員を中心に「休暇を取らず、モーレツに働く」という働き方をする方も少なくありませんでした。しかし、そのような考え方は現在では通用しなくなったといって良いでしょう。
経営者や人事の責任者は、現場の隅々まで新しい制度が認識されているか確認し、管理職の方々が「自分が若いときは1日も有給休暇を使わずに働いていた」といった自身の経験を基に社員を指導してしまっていたら、改善の必要があります。
社員が計画的に休暇を取得し、現場が上手く回るように監督することは管理職の大事な仕事です。労働者も制度を理解し、計画的に休暇を取得する意識を持つことが大切でしょう。
出典・参考
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 働き方改革関連法解説(労働基準法/年5日の年次有給休暇の確実な取得関係)
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)