家計の危機レベルにあった新型コロナ救済制度を知る
配信日: 2020.06.12
しかし、その家計が置かれている状況ごとにできる対策は異なります。間違った対策は、解決しないばかりか不安を増大させてしまうかもしれません。適切な対処方法を見つけるためには、まず家計の2つのポイントに注目することが大事です。
執筆者:波多間純子(はだまじゅんこ)
㈱bloom代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP(R)),キャリアコンサルタント
「お金しだい」の人生から「自分しだい」の人生への選択をサポート。家計相談28年、相談件数4,000件超。家計相談と合わせて、その方の才能や適職を診断し潜在能力を高める「咲かせようじぶん資産」をテーマに個人セッションとワークショップを開催。
収入と資産のある・なしで4つに分類
見るべきポイントは、今ある「資産」と「収入」です。ちなみにここでいう資産は貯蓄などの金融資産とマイホームを指します。
まず、資産である金融商品とマイホーム(厳密にいうと「売却予想価格-住宅ローン=プラス値」になる物件)のどちらか、または両方があれば「ある」、なければ「ない」とします。
なお、金融資産は年収の半分程度残高あることが「ある」の目安にしてください。同じように収入が変わらない場合は「ある」、減少したりなくなったりしたら「ない」と分けます。さらに、この2つがおのおのあるか・なしかによって、以下の4つのパターンに分類します。
A 資産ある×収入ある
B 資産ある×収入ない(減った)
C 資産ない×収入ある
D 資産ない×収入ない(減った)
資産がある場合 AとB
Aのように資産があって収入が減らない場合は、まず過度の心配をやめることです。そのうえで、不安を具体的に解消するため、支出や貯蓄残高を書き出して整理するのがおすすめです。次に固定費を見直します。手のつけやすい通信費などから始め、保険、住宅ローンに取り組みましょう。行動することで不安が解消します。
Bは収入がピンチであっても資産があるため、時間が稼げるのが強みです。そこで、今の貯蓄で何ヶ月生活できるか以下で計算してみましょう。
○貯蓄総額÷毎月の生活費=今ある貯蓄で生活できる月数
頭の中で考えるだけでなく、実際に計算することで実感がわきます。この月数は立て直しのために稼げる時間でもあります。そのうえで受けられる給付を確認しましょう。
<受けられる可能性のある給付例>
〇会社員が仕事を失った……雇用保険 基本手当(※1)
〇会社員が病気で働けなくなった……傷病手当金(※2)
また、当面の支出を減らすため、例えば住宅ローンの支払期間を延ばし毎月の支払額を減らしたり、奨学金の緊急融資を検討して教育費の支出を抑えたりするなども検討しましょう。ただし、融資の場合、借入金や利息が増えるので過度に利用しすぎるのは禁物です。
<収入減によって利用できる主な支援制度>
〇住宅金融支援機構(※3)
〇日本学生支援機構
給付奨学金案内 家計急変(※4)
貸与型奨学金 緊急採用 応急採用(※5)
収入が変わらず、資産がない場合 C
収入があれば問題がないように思えますが、景気悪化が長引くほど生活が苦しくなりがちです。しかも、収入が一定以上減少していない場合は緊急の経済支援制度の対象外になることもあります。そのため、先手先手で対策を講じる必要があります。
家計が大きくマイナスになるきっかけは、継続する大きな固定費と急な支出の2つです。毎月以外でかかる支出を書き出して、12等分し、毎月の収入から取りおいておく工夫をしましょう。
収入が減り、資産がない場合 D
緊急を要します。まずは、Bで案内した収入減で使える制度をすぐに検討しましょう。さらに、生活費が足りなくなる場合は以下のような支援があります。
<受けられる可能性のある給付金例>
〇家賃が払えない……住居確保給付金(家賃)(※6)
〇生活費がない……緊急小口資金・総合支援資金(※7)
〇現に生活に困窮している……生活保護(※8)
これらの窓口は市町村の福祉係です。
困窮が続くと精神的にもつらい状態になることもあります。気力があるうちに、対応する相談窓口に問い合わせましょう。日本では適切につながれば必ず救済の道があります。
喫緊の生活に困っていない方でも、こうした制度があることを覚えておくのは有効です。不安は漠然としていると増大しますが、対策がわかれば徐々に消えていくでしょう。
(※1)ハローワーク インターネットサービス「基本手当について」
(※2)全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき」
(※3)住宅金融支援機構「新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方にお知らせ」
(※4)日本学生支援機構「給付奨学金案内 — 家計急変 —」
(※5)日本学生支援機構「緊急採用・応急採用」
(※6)日本賃貸住宅管理協会「住居確保給付金」
(※7)厚生労働省「一時的な資金の緊急貸付に関するご案内」
(※8)厚生労働省「生活保護制度」
執筆者:波多間純子
㈱bloom代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP(R)),キャリアコンサルタント