先取り貯蓄と学資保険。注意点は?
配信日: 2020.04.27 更新日: 2024.10.07
運用の際の代表的な金融商品には、積立定期預金が挙げられますが、子どもの進学資金を貯めるための学資保険も先取り貯蓄に当てはまります。この学資保険について詳しく見ていきましょう。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
学資保険とは
学資保険は、いわずもがな、子どもの教育・進学資金を準備するための保険です。貯蓄機能の付いた保険の代表格で、その目的は貯蓄です。
具体的な仕組みはというと、毎月支払う保険料を保険会社が預かり、それを保険会社が運用します。そして、子どもの進学時期に合わせて、学資保険金や学資年金が支給されるというものです。
長所としては、毎月、一定額の保険料が銀行の口座から保険会社に引き落とされ、コツコツと積み立てながら子どもの進学資金を準備できる点です。
また、保険であるため、万一、契約者が亡くなったときでも、予定されている学資保険金や学資年金が支給されます。銀行で取り扱われている積立定期預金と比べると、子どもの教育・進学資金の確保という点では、より有効な準備方法といえます。
最近では、三大疾病(がん・心筋梗塞・脳卒中)になった場合、一定の要件を満たせば、保険料を支払う必要がなくなり、家計にとっては助かる内容になっています。
学資保険を取り巻く考え方
このように見ると、学資保険はいいことばかりと思うかもしれません。しかし、リーマンショックの以後、特に、マイナス金利政策を導入した2016年からは、金融機関である保険会社でも運用環境が悪化しました。新規で学資保険に加入する場合にも、適用される利率がかなり低い状況が続いています。
かつてとくらべて、学資保険で子どもの教育・進学資金を準備するメリットは減っているといわざるを得ません。それでも、先取り貯蓄で学資保険を活用し、教育・進学資金を貯めていきたいという場合、貯蓄性にこだわらず、保険本来の保障機能を重視するのも大切です。
実際、「学資保険に入るかどうか迷っている」といったご相談を受けたときは、「貯蓄を重視するならほかの金融商品も交えながら検討した方がいい」とお伝えすることがしばしばあります。
学資保険では、返戻率を確認することがあります。簡単に説明すると、支給される学資保険金や学資年金の合計額が、保険料の総額に対してどれくらいの割合かを表す率です。一般的には100%を超えるように設定されています。
保険会社からは「返戻率が100%を超えているためお得です」といったセールストークをされることもあるかもしれません。しかし、ほかの金融商品との比較を前提に返戻率の意味を考える場合、年率で換算する必要があります。
例えば、返戻率が103%、加入期間が18年とすると、1年当たりの利回りは単純に0.16%になります。この場合、年利0.16%という意味なので、ほかの金融商品とくらべてこの金利が高いのか、低いのかを判断しながら検討する必要が出てきます。
以上を踏まえながら先取り貯蓄を行う場合、学資保険が選択肢としてふさわしいかどうかを同時に考えていくことになります。現状における学資保険は、特に、何のために、どの金融商品を選択するかで大きく差が出てしまうため注意が必要です。
加入の際は、ファイナンシャル・プランナー事務所など専門家に相談したうえ、検討するようにしましょう。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)