更新日: 2019.10.11 ライフプラン

マイホーム購入後に転勤・・賃貸にして返済するのは本当に大丈夫?

執筆者 : 西村和敏

マイホーム購入後に転勤・・賃貸にして返済するのは本当に大丈夫?
生涯で最大級の買い物となるマイホーム。購入者の多くは人生で初めて買うことになりますが、プロである販売事業者との情報格差が原因でトラブルになるケースもあります。
 
モデルルームやモデルハウスを気軽に見学に行って購入する気持ちになる。しかし、転勤の可能性があることを販売業者に打ち明けると「転勤になったら賃貸にして受け取る家賃を住宅ローン返済に充てれば大丈夫ですよ」と購入を後押ししてくることは少なくありません。はたして、そのまま信じて大丈夫でしょうか。
 
前回同様、子どもが生まれたばかりの30代共働き夫婦(転勤可能性あり)のケースで見ていきます。
 
西村和敏

執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)

ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士

くらしとお金のFP相談センター代表 
https://fplifewv.com/
国家公務員や東京でのFP関連業の実務経験を積み2005年に出身地の宮城県仙台市で起業。

2010年から現在まで東北放送ラジオにてお金やライフプランについてのレギュラーコーナー出演中。

全国経済誌「週刊ダイヤモンド」の保険特集に毎年協力。独立起業後に住宅ローンを借りて、土地を購入しマイホームを建てた経験から、相談者にリアルなマイホーム購入・住宅ローンについてのアドバイスも行える。本当に安心して購入できるマイホーム予算についてアドバイス多数。

東日本大震災以前から防災・減災の観点からのマイホーム購入アドバイスを行い、相談者の減災につなげる。

自治体や企業等からのライフプラン研修の講師を務める際にはクイズ・ゲームを取り入れ受講者に楽しんでいただくことが得意。

2児の父であり、仙台で毎年「子育てママの家計塾」を開催して子育て中の家庭に実体験から育児の悩みに答える。

学習塾にほとんど通わせずに自身の子どもの進学校合格へ導いた経験から「お金をかけない子育て」についてもアドバイスを行っている。

夫婦の悩み「転勤の可能性はあるが、将来子どもが入学する学区のために、今マイホームを購入したい」

子どもが生まれたタイミングで、マイホーム購入を検討する方が多くいらっしゃいます。さまざまな理由がありますが、その1つに子どもが入学する学校の学区が理由の場合があります。
 
「○○小学校・○○中学校の学区は成績優秀」といった評判はインターネット上に溢れています。
 
子どもを持つ親として評判の良い学校に通わせたくなる気持ちはわかります。実際、地方都市では「○○小学校・○○中学校の学区」ということで、マイホームの価格が道路一本隔てた別の学区よりもかなり高くなることは珍しくありません。
 
その結果、その評判の良い学区にどんどん分譲マンションが建ち、学校の児童・生徒数が増えすぎてしまうこともあります。
 
子どもが生まれてすぐに希望の学区内のマイホームを購入。間もなく世帯主が転勤になったとしても、家族で引っ越して賃貸にすれば家賃で住宅ローンは払える。いずれ子どもが小学生になるタイミングで戻ってくれば良い。その頃に理想のマイホームが学区内に見つかるかわからないなら、今のうちに購入してしまおうと思い購入してしまう方もいらっしゃいます。
 
しかし、実際に転勤になって購入した我が家を賃貸物件として貸し出すとさまざまなリスクがあります。
 

住宅は増えるが人口が減る日本

購入したマイホームを賃貸物件にするときのリスクはさまざまです。費用の問題として、不動産業者に仲介をお願いする際の広告料、入居者のための鍵交換、退去時のクロスの張り替えなどは有名です。
 
近年、貸主であるオーナーの責任が明確になりました。以前は経年劣化によるクロスの張り替えなども入居時に支払われる敷金から差し引くなど、入居者に負担してもらっていましたが、今はオーナーの負担です。
 
入居してもらえれば家賃収入で住宅ローンの返済に充てることはできますが、入居者がいない期間は転勤先の住居費とマイホームの住宅ローンの二重の支払いが家計に重くのしかかってきます。
 
住宅の性能が向上し、長持ちする住宅は増えています。毎年新築の住宅も増えています。結果、日本に住宅は増えていきますが、国全体の人口は減少の一途です。
 
大都市などの一部の地域は人口が増えていますが、ほとんどの地域では減少しています。その状況であなたのマイホームを賃し出して入居者が決まるかは、かなりシビアに考えなければなりません。
 
家賃を下げれば借り手が見つかるかもしれませんが、住宅ローンの返済金額を下回れば家計を圧迫します。いずれ子どもが小学校に入学する頃に戻ってくるためには、定期借家契約にする必要があります。借り手からすると入居期間の制限がかかるので入居候補から外れる可能性もあります。
 
人気学区の物件だから賃貸でも入居したいという子育て家庭はいるかもしれませんが、せっかくこの賃貸住宅に入居して学校に入ったのに、学校に通っている期間中に定期借家契約が満了して転居しなくてはいけなくなるのでは、そもそも入居しないと考えても当然です。
 

入居者の住み方次第で将来苦痛なマイホーム生活になる可能性。しかし希望も。

なんとか入居してもらったとしても、その方がどのような住み方をするかはわかりません。分譲住宅の場合に近隣に迷惑をかけるような入居者が住んでしまったら、いずれ戻ってきたときに肩身の狭い思いで生涯住み続けることになるかもしれません。きれいに丁寧に住んでくれる入居者が決まるかどうかは運もあります。
 
また、日本の人口減少は進んでいきますが、一方で外国人はどんどん日本にやってきます。観光だけではなく、労働人口の不足から「特定技能外国人在留資格」が新設されました。
 
外国人というだけでトラブルを起こすと身構えてしまう日本人はいるかもしれませんが、真面目に日本に働きに来る方は多くいらっしゃいます。ただ、文化の違いからうまく近所づきあいができないといったことも考えられます。
 
今後、日本人ではなく外国人の入居希望者がいると不動産屋が言ってくることも増えていくでしょう。外国人が住める賃貸住宅をいかにして増やしていくかも課題です。
 
外国人から見れば良質な物件であり、外国人入居OKであれば周辺よりも高めの家賃で貸し出すことも可能かもしれません。日本で仕事をする期間がある程度決まっているため、定期借家契約でも借りてもらえる可能性も高くなります。しかし近所の方の認識なども踏まえて検討する必要があります。
 
転勤の可能性がある方は、外国人が入居する可能性も考慮してマイホーム購入を検討したほうがよいでしょう。将来暮らすために購入したマイホームが苦痛の種になってしまっては大変です。
 
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士


 

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