更新日: 2024.10.07 ライフプラン
マイホーム購入相談Q&A 転勤の可能性がある場合は購入はしない方がいいの?
世の中に全く同じ家は存在しません。購入者のライフプランや家計状況もさまざまです。マイホーム購入についてよくある相談をQ&A形式でお伝えいたします。子どもが生まれたばかりの30代共働き夫婦(転勤可能性あり)のケースです。
執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
くらしとお金のFP相談センター代表
https://fplifewv.com/
国家公務員や東京でのFP関連業の実務経験を積み2005年に出身地の宮城県仙台市で起業。
2010年から現在まで東北放送ラジオにてお金やライフプランについてのレギュラーコーナー出演中。
全国経済誌「週刊ダイヤモンド」の保険特集に毎年協力。独立起業後に住宅ローンを借りて、土地を購入しマイホームを建てた経験から、相談者にリアルなマイホーム購入・住宅ローンについてのアドバイスも行える。本当に安心して購入できるマイホーム予算についてアドバイス多数。
東日本大震災以前から防災・減災の観点からのマイホーム購入アドバイスを行い、相談者の減災につなげる。
自治体や企業等からのライフプラン研修の講師を務める際にはクイズ・ゲームを取り入れ受講者に楽しんでいただくことが得意。
2児の父であり、仙台で毎年「子育てママの家計塾」を開催して子育て中の家庭に実体験から育児の悩みに答える。
学習塾にほとんど通わせずに自身の子どもの進学校合格へ導いた経験から「お金をかけない子育て」についてもアドバイスを行っている。
目次
夫婦の悩み「子どもが生まれたタイミングでマイホーム購入をしたいが、転勤の可能性があります」
子どもが生まれたタイミングで、マイホーム購入を検討する方が多くいらっしゃいます。理由としては、
・手狭な賃貸住宅よりはマイホームの方が広々している。
・賃貸住宅だと構造上、子どもの声や走る振動で周辺から苦情が来るという話も聞くが、防音対策がとられている分譲マンションや戸建てなら大丈夫。
・子どもが大きくなりその服や家財などが増えてから引っ越すよりは、今マイホームを購入して最後の引越しとしたい。幼稚園や学校など子育て生活の拠点を確定させたい。
などです。
気持ちはとてもよくわかりますが、マイホームを購入するとほとんどの方は数千万円の住宅ローンを組みます。その返済をしていく中で、世帯主が転勤となった場合のリスクについて軽く考えてはいけません。
マイホーム購入直後かつ子どもが小さい時期の転勤の可能性
働き方改革や人手不足で、会社側が従業員の希望に沿わない転勤の辞令を控えるようになってきているとは言われますが、国家公務員や全国各地に支店がある企業では、転勤がやむを得ないところもあります。国際化の流れの中で海外赴任となるケースも増えていくことが予想されます。そうした環境の中、30代の働き盛りが将来のために各地で経験を積む必要性も否定できません。
マイホームを購入するとその従業員は簡単に退職しないから、会社側も過酷な転勤辞令を出しやすい。マイホーム購入直後に転勤となるという話もかつてはまことしやかに言われていました。具体的なデータに基づいているわけではありませんが、本当にマイホーム購入直後に転勤となると家計に多大な負担が生じます。
賃貸生活の場合は、配偶者が退職して転勤先についていき、子育てをしながら再就職を検討するという選択肢が比較的とりやすくなります。1人分の収入で支払える家賃の住居を選べるためです。
しかし、夫婦両方が働いてようやく返済できる金額のマイホームを購入して住宅ローンを借りると、そうもいきません。
仮にマイホームを空き家にして家族で転勤先に移ったとしても、世帯主の転勤先で配偶者が今と同じような収入を得られる勤務先が見つかる保証はありません。
また、子どもが生まれたばかりだと育児休業期間中の場合がほとんどです。勤務先に復帰する前提での育児休業なのに、やむを得ないとはいえ復帰できなくなるのは同僚に申し訳ないという気持ちが生じるものです。さらに待機児童問題もあり、せっかく保育園入園のめどがついていたのに転勤先で就職先と保育園を同時に探すのは大変です。
単身赴任を選択した場合の共働き世帯の子育て
マイホームを購入したために、世帯主の単身赴任を余儀なくされる場合もあるでしょう。マイホームに残った配偶者と子どもの生活がどのようになるか想像せずに、マイホーム購入を決定しないでください。
仕事と家事と子育てを1人でこなす大変さは想像以上です。実家の近くにマイホームを購入して両親の助けを得られるような場合はまだなんとかなります。
しかし、子どもがインフルエンザ等に感染してしまって仕事を休まなくてはならない。子どもから親が感染してしまって家事も子育てもままならないようなこともあります。どれだけ大変な思いをしているかを伝えたくとも、伝えたい世帯主は遠い転勤先にいます。
子育てヘルパーなどお金をかければなんとかなる部分もあるかもしれませんが、住宅ローンの返済や将来の教育費のためにも、出費は抑えたいところです。
もちろん世の中には離婚や死別で世帯主がいなくても、1人で懸命に仕事と家事と子育てをされている方もたくさんいらっしゃいます。やむを得ない事情で頑張っている方は尊敬いたします。
しかし、転勤の可能性がある中で安易に無理のあるマイホームを購入するという決断をして、家族が大変な思いをすることのないようにしてください。
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者,宅地建物取引士