更新日: 2019.09.15 その他家計
消費税増税前の駆け込み購入は本当にお得!? デメリットについても考えよう!
そのような広告を目にすると、ついつい予定していなかった「あれも、これも」を買い込んではいないでしょうか? 確かに必ず買わなければいけないものや買おうと思っていたものを、消費税が上がる前に購入することにはメリットがあります。
しかし、デメリットはないのでしょうか。駆け込み需要がありがちな候補について考えます。
執筆者:岩永真理(いわなが まり)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士
CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/
駆け込み需要があるものとは?
最も駆け込み需要が多いと思われるのは、一生のうちでの大きな買い物である「住宅」でしょう。ただし土地にはもともと消費税がかかりませんので、「建物」またはマンションであれば建物に相応する部分になります。
今回は軽減税率が導入され、一部の食料品などの税率は8%のまま据え置かれますが、「お酒」は税率が上がるため、増税前に多めに購入をしたいと考える人もいるでしょう。
また、洗剤、ティッシュペーパーなどの「日用品」についても、明確な使用期限などが特に書かれていないため、増税前にできるだけ買い込んでおきたいという考え方もあります。「化粧品」を多めに購入したいと考える人もいるようです。
「衣料品」も、とりわけ高級ブランドの服などは、候補になっていることもあります。その他「ブランド品・宝飾品・時計」など、比較的高価な商品があげられます。
「家電」も一度に壊れると大きな出費になり、新たに購入するにしても単品で高額なものもあります。更新時期が近いと思われるようなものは、この際買い替えておきたいと思う方も多いでしょう。
駆け込み購入のデメリット
消費税増税分の2%を払わないで済むメリットは、購入するデメリットを上回ることはできるのでしょうか。以下の例を見てみましょう。
<住宅(建物)>
消費増税前の価格で購入するためには、2019年9月30日が引き渡しの期限になります。工期がずれ込む可能性を考慮して、請負契約を2019年3月31日までに締結すれば、引き渡しが2019年10月以降になっても8%を適用するとされています。
これらの条件に当てはまるよう、仮に急いで建物の購入や工事の契約をしてしまったとしたら、どうなるのでしょうか?
その後の家族構成や働き方の変化、転勤や移動の可能性、住宅近隣の調査など、契約を急ぐあまりその後のライフプランや大切なことを見落としたまま買ってしまう可能性があります。家は大きな買い物ですので、慎重に検討すべき事項が多いといえます。
<お酒>
ビールは賞味期限があります。他のお酒も種類によって違いますが、おいしく飲める期間には限度があるでしょう。「おいしく飲める期間中に飲みきれる分量」以上を買ってしまうと、せっかくおいしく飲めるはずのお酒が、そうでなくなってしまう可能性もあります。
<日用品>
大量購入すると、保管場所を必要とします。特に首都圏など家賃の高い地域では、在庫にも高い家賃を払うことになります。加えて、防災上の観点からも好ましくありません。火災時などにそれらの物が通路をふさいでいると命にもかかわります。また、古い順に消費していくなどの在庫の管理も必要です。
<化粧品>
日本製の化粧品は消費期限などの記載は特にない場合が多いですが、販売員によれば、開封しなければ一般に2~3年以内というのが原則のようです。海外製の化粧品には、医薬品のように消費期限が明記されているものもあります。化粧品は古くなると成分が変質してトラブルを起こす可能性もあります。
<衣料品・ブランド品・宝飾品・時計>
それぞれサイクルは違いますが、流行があります。次の流行サイクルがやってくるまで、その商品をずっと身に着けていたいと思う、あるいは流行が変わっても自分はそれを気にしないで使い続ける等、それくらい価値のあるものと思うかどうかでしょう。
<家電>
家電のテクノロジーも日進月歩です。高度な技術を駆使して高価だったものが、その後の普及によって手の届きやすい価格になるものもあります。機能や性能がそれほど高度でなくて良いものは、むしろ前モデルの型落ちで安く買えることもあります。
また、慌てて新品を購入すると更新時期を迎えていない家電をむやみに廃棄することになるかもしれません。全体にいえるのは、大量購入や事前購入で在庫などをかかえるデメリットは、その後何らかの事情やトラブルで消費できなくなれば、全て無駄になってしまうこともあります。
では何を買うべきか?
1~2年以内に必ず必要なもの、流行がないもの、高額すぎないもの、を確実に消費できると見込まれる分量で買う、ことではないでしょうか?ちまたの広告にまどわされすぎると、あれも、これも、となってしまい、結局は予算以上に家計の出費がかさみ、目標としている貯蓄ができなくなることもあるでしょう。
この最大の問題は、貯蓄が滞ることで、貯蓄本来の目的(例:子どもの教育費、住宅の頭金、旅行など)を達成できなくなってしまう可能性があることです。そうなってしまうと本末転倒です。
消費税増税前に何でも買うことが賢い消費者ではなく、将来を見据えて今年の予算の範囲内で今後を予想しながら、今本当に買うべきものを取捨選択できるのが本当に賢い消費者といえるでしょう。
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士