更新日: 2019.08.01 働き方

【扶養のライン】大学生の子供が夏休みに働きすぎた時の危険性

執筆者 : 園田経人

【扶養のライン】大学生の子供が夏休みに働きすぎた時の危険性
いよいよ夏休み。特に大学時代の夏休みは人生で最も時間的に余裕のある時期といっても過言ではないと思います。時間もある、やりたいこともたくさんある、夢に、目標に向かってこの夏休みに稼ぐぞ! とやる気に満ちあふれてくる季節です。
 
大学生の子供がいらっしゃる方は「アルバイトで稼ぎすぎると扶養から外れてしまうよ」と言っていたり、言われていたりするのを聞いたことはありませんか?
 
では、いくら稼ぐと扶養から外れてしまうのでしょう? 外れてしまうとどんなことが起きるのでしょう? 何となくは知っているけど上手に子供に伝えきれていない方に、今回は気を付けたい「扶養」について考えてみたいと思います。
 
園田経人

執筆者:園田経人(そのだ つねと)

株式会社SFPコンサルティング 代表取締役

学習塾在職中に「FP」に出会い、自分自身の未来設計の無さに気付き、大人の進路指導をすべく生命保険会社へ転職。そこで営業を行う中でそもそものファイナンス知識の普及の重要性を痛感し、FPを活用した経営コンサルティング会社を起業。現在、創業支援や中小企業向けの経営支援を中心に活動中。お金に振り回されない未来こそが幸せな未来だと考えます。

そもそも「扶養」って何?外れるとどうなるの?

「扶養する」とは、家族の中で収入がなく(少なく)、自力で生活できない人を養うことです。そして、その家族を養っている人の負担を軽くする税金制度を「扶養控除」や「配偶者控除」と呼びます。
 
収入のない(少ない)家族を養うためにはお金が必要でしょうから、本来支払うべき税金を軽くしますね、という制度です。
 
家族を1人養うには月約3万円、12ヶ月で38万円(19歳以上23歳未満の特定扶養の場合は年63万円、70歳以上の老人扶養の場合は同居なら年58万円、同居以外でも年48万円)は免除しましょうというわけです。
 
ちなみに配偶者控除も同様に年38万円です(※配偶者控除には年間収入が103万円を超えても、段階的に控除される配偶者特別控除もあります。どちらも配偶者の収入基準が設定されています)。
 
また、「扶養される」人にとっては、収入がなくて(少なくて)大変でしょうから、納税の義務は免除しますね、加えて健康保険の負担も親が払っておけば他の収入のない(少ない)家族の分は免除しておきますね、という2つの大きな恩恵が受けられるというものです。
 
アルバイトでもパートでも、ある一定水準以上を稼いでしまって自力で生活できるとみなされてしまうと扶養から外され、これらの恩恵を受けられなくなります。
 
そうすると、今まで扶養してきた親は今までよりも多くの所得税と住民税を支払わなければならなくなります。年末調整での戻りが少なくなり、中には追加で支払いが発生することになります。
 
また、扶養されていて税金の支払いも健康保険の支払いも免除されていたお子さまはそれを自分で払わなければいけなくなります。
 

扶養から外れないボーダーラインはいくらか

まず、所得税についてです。「103万円」という数字を聞いたことがある方もたくさんいらっしゃるとは思いますが、この数字は給与控除65万円と基礎控除38万円を足した数字です。学生本人の収入が103万円を超えると、親の扶養から外れ、親は扶養控除または特定扶養親族控除が受けられなくなります。
 
ただし、扶養から外れて学生本人が納税者となる場合、要件を満たし申請すれば「勤労学生控除」が適用されるようになります。そうなると学生の収入が130万円までであれば所得税は免除となります。詳しくは通学している学校の窓口で確認してください。
 
住民税は年間収入が100万円を超えると課税されます。(※お住まいの市区町村によっては住民税の均等割部分がかかる場合もあります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口にお尋ねください。)103万円だと均等割部分で5000円弱くらいでしょうか。
 
次に健康保険料はどうなのでしょうか。健康保険は130万円を超えると社会保険上、親の扶養から外れます。アルバイトで130万円稼ぐと、年間で約7万円の健康保険料を自分で払わなければならなくなるのです。
 
ですから、大学生のアルバイトの場合、親の扶養から外れないボーダーラインは所得税が「103万円」健康保険が「130万円」と覚えておくと良いでしょう。ただし、所得税の場合は親の扶養から外れても「勤労学生控除」が受けられるのであれば、130万円までは所得税がかからないことになります。
 

103万円を超えたってなぜ分かる?

たとえ103万円を超えてしまっても、確定申告もせずに年末調整もしなければばれないのではないか、と考える方もいるかもしれませんが、実は支払う側の会社やアルバイト先が源泉徴収票を税務署に提出しているのです。年収が50万円を超えると届け出の義務があるのです。
 
流れとしては、親の年末調整で子供を扶養に入れて税金を免除していることが会社から税務署に提出→税務署で照らし合わせて子供の収入が130万円を超えていることが判明→税金の再計算と再請求となります。忘れた頃にどんと追徴課税が来ます。健康保険料も同様で、こちらは子供に保険料の請求が来ます。
 
自分が報告しなくても分かるシステムになっていますので、130万円を超える場合は先に扶養から外れる手続きをする方が後で困りません。
 
「扶養から外れる」ことの影響をぜひとも親子で共有して、後で困らぬようにアルバイトに精を出してくださいね。
 
執筆者:園田経人
株式会社SFPコンサルティング 代表取締役

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