更新日: 2024.10.07 働き方
有給消化中に転職先で働き始めると2重在籍に?注意したいポイント
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
目次
有給消化中に転職先から就業の前倒しを頼まれた!
Aさんは在職中から転職活動をしており、先日無事転職が決定しました。引き継ぎも無事完了し、来週からは有給消化に入ります。転職先にもその旨伝えてあり、転職先への出勤は有給消化が終わってからという段取りになっていました。
ところが、突然転職先から「できるならすぐにでも出勤してくれないかな?」と出勤日を早めてほしいとお願いされました。Aさんはこのまま転職先で就業してもよいでしょうか。
現職と転職先の就業規則の確認は必須
Aさんはこのまま転職先で就業してしまうと、就業規則に違反したことを理由として、現職あるいは転職先の罰則を受ける可能性があります。なぜなら、会社によっては就業規則において、副業や他社との二重在籍などを禁じていることがあるからです。
退職と転職が決定しており、もう出勤しないことが決まっているうえでの有給消化中なら問題ないかと思われるかもしれませんが、有給消化中でも、現職の会社に在籍していることに変わりはありません。
つまり、有給消化中であってもこれまでと同様に現職の就業規則に服するのです。また、仮に現職の会社における就業規則では問題がなかったとしても、転職先の就業規則についても確認が必要です。
転職先の担当者が「現職を退職のうえで就業するだろう」と思い込んで声をかけてきた場合、転職先の就業規則の内容によっては就業規則違反となってしまうおそれがあるからです。
以上のような理由から、有給消化中に転職先で就業しようとするAさんは、現職と転職先の両会社の就業規則を確認しておかなければなりません。
二重在籍って法律上ではどうなの?就業規則で制限することは問題ないの?
実は複数の企業で働くことに法律上規制はありません。つまり、いくつの企業で同時に働いても問題はないのです。ところが、会社は一定の範囲内において、就業規則によって社内ルールを定めることが認められています。(労働基準法第92条など)
就業規則において副業や二重在籍などが禁じられていればそのルールに従う必要があります。
裁判においても、副業や二重在籍について、会社に対する労務提供に支障が出ることや会社の対外的な信用を傷つける可能性があることなどを理由に一定の制限をすることが認められることがあります。(京都地判平24.7.13など)
法律上は規制がないのだからと就業規則の確認を怠ってしまうと、想定外のトラブルに発展してしまうこともあり注意が必要です。
有給消化中の転職は就業規則の確認を!
有給消化中も現職の会社に在籍していることに変わりはありません。そのため、有給消化中に転職先で就業すると二重在籍や副業に該当し、就業規則に違反する可能性があります。
有給消化中に転職先で就業する場合、必ず現職と転職先の就業規則の内容について確認し、就業規則に則って就業するようにしてください。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士