更新日: 2019.06.13 働き方

家計調査から分かる。妻の働き方で家計が変わる仕組み

執筆者 : 當舎緑

家計調査から分かる。妻の働き方で家計が変わる仕組み
高等教育への給付と幼児教育の無償化の法案が国会で審議され、今後具体的に実現に向けて動き出すことも決定されましたが、実際に家計を預かる主婦(夫)としては、家計のたづなをゆるめてもいいのか、それともしめた方がいいのか、今後の対応に迷うところなのではないでしょうか。
 
今回は、家計に大きな影響を持つ「妻の働き方」について考えてみましょう。
 
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

家計調査からわかることわからないこと

総務省が公開している「家計調査」というものを見たことがある方は少ないでしょう。この調査によって、家計に関するかなり細かい数字を把握することができます。
 
単身世帯や二人以上世帯、そして無職の世帯や勤労者世帯という属性ごとの収支の分類がされていますので、ほとんどの方が実感しやすい数字が並んでいます。
 
また、消費支出の内訳の詳細も、基礎的支出(必需品的なもの)と選択的支出(贅沢品的なもの)に分類していることからも、家計の収支を見るうえでかなり参考となるデータといえます。一度のぞいてみるのも興味深いサイトです。
 
総務省統計局/家計調査(家計収支編) 調査結果
 
しかし、著者が家計の相談を受けるうえで、よくある「他の家庭ではどれくらいの貯蓄をしているの?」「教育資金ってどれくらい準備すればいいの?」「老後資金はいくらあると安心なの?」という問いが解決されわけではありません。
 
数字と同程度の金額だから安心するという場合もあるでしょうが、家計の運営上は、「他人は他人、自分は自分」という感覚を持つことが重要です。
 
2人以上の世帯の場合、配偶者の働き方によって、ライフプランが全く異なるものになるのは珍しくはありません。その場しのぎで、「家計が苦しいから働きに行こう」ではなく、しっかりと計画に基づく働き方をしていただきたいものです。
 

扶養という言葉の意味はひとつではない

社会保険労務士という専門家であっても、質問されて一番難しい言葉は「扶養でいる方が得ですよね」という念押しの質問です。
 
協会けんぽでは、平成28年10月に引き続き、平成29年4月以降にも社会保険の適用拡大が行われています。一方で、平成30年10月から扶養に加入する場合の添付書類が変更され、扶養である確認は厳しくなっています。
 
会社には、毎年扶養の確認のお知らせが届き、会社が「所得税法上の扶養家族である」ことの確認欄にチェックを入れて返送するのです(注:協会けんぽに加入している会社の場合)。
 
社会保険の扶養でいられる収入の範囲は年間130万円未満ですが、税法上の控除を受けられる「同一生計配偶者」は、合計所得金額が38万円(給与所得だけの場合103万円)以下です。チェックを入れなくても返送することは可能でしょうが、そのまま加入し続けると、調査の対象となる可能性もあります。
 
扶養家族を含めてマイナンバーを提出していると、「会社にしばらく黙っていればわからない」という理屈は通用しないと考えたほうがいいでしょう。
 
「妻が働き始めたけれど、勤め先で社会保険に入れないので、しばらく扶養家族にしてください」と従業員からお願いされても、扶養家族でいられる時期が、会社の自由になるわけではありません。
 
「最初の2か月は試用期間だから、社会保険の加入はないよ」という会社の話をいまだにお聞きします。
 
社会保険上の加入は、「いくらで何時間働くか」で加入日が決定します。従業員規模が501人以上の場合には、週20時間、月8.8万円という条件を超えれば、加入となりますので、「130万円」という扶養の枠にとどまっていても、加入しなければなりません。
 

妻が働きだすときには長期の計画を立てること

今や共働きは珍しくありませんが、子供の成長や家族の事情に合わせて、働き方を変える傾向は今後も続くでしょう。働き始めると、それまでより余裕が無くなります。
 
しかし、働きだすからこそ、目の前の支出だけに目を向けるのではなく、人生100年計画としてしっかりとしたライフプランを立ててください。
 
将来への不安から貯蓄をする人が増えているようですが、漠然とした不安を抱えているのであれば、ぜひその不安を数字に置き換えてみてください。
 
なぜなら、いくらかかるかわからないからと数値化していないために、なんのために貯蓄しているのかわからない状態になっている可能性があるからです。収入が夫婦2本柱になったことで、老後資金として、例えば2人分の確定拠出年金を拠出する原資もできます。
 
夫婦2人とも老齢厚生年金が受け取れるようであれば、今後、年金の「繰下げ」という選択肢にもつながるでしょう。妻が働くからこそのメリットに目を向けていただきたいものです。
 
扶養になっている今のメリットがそのまま将来のメリットにつながるのか、それは個々人だけではなく家族の状況によっても変わります。
 
収入が2本柱になれば、税控除が多く使えることにもつながりますし、扶養家族でいることが得だと必ずしも言えない時代であることは覚えておいた方がいいでしょう。
 
そろそろ、会社に協会けんぽから「扶養確認の通知」が来る時期です。扶養のままでいるのか、もう少し働き方を考えるのかは各ご家庭の判断となりますが、消費税増税も控えているからこそ、働き口を増やして、収入アップ、そして家計を見直すのは「今」なのです。
 
執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。
 

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