お金が貯まったので仕事を辞めて1年ほどゆっくりしたいのですが、無職で1年間過ごすためにはいくらくらい必要ですか?
配信日: 2025.06.19


CFP(R)認定者
相続診断士
終活カウンセラー
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。
1ヶ月で自分はいくら使っているかを把握しよう
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、2024年では、単身世帯の月平均消費支出額は16万9547円、2人以上の世帯の場合は30万243円という結果になっています。
この結果より、1年間に必要な生活費を計算すると以下の目安の金額が算出されます。
単身世帯の場合:16万9547円×12ヶ月=203万4564円
(2人以上の世帯:30万243円×12ヶ月=360万2916円)
しかし、これらは平均値であるので、あくまでも目安にすぎません。生活にかかるお金は人それぞれですし、持ち家か賃貸か、家賃負担も人それぞれ、ローンがあるか否かにより異なります。
特に2人以上の世帯の場合は、世帯の人数や教育費など、世帯により必要な金額が異なります。もし、この期間を利用して旅行に行きたいなどやりたいことがある場合は、その分の費用も準備する必要があります。
無職でも支払いが必要なもの
ところで、生活費の分だけ資産があればよいのではありません。無職・無収入でも、支払わなければならないものがあります。「国民健康保険料」「国民年金保険料」、そして前年度の所得で決定される「住民税」といった非消費支出です。
給与所得者が給料を支給されるときは、社会保険料、源泉所得税、そして住民税は、給与から天引きされて納めらます。しかし、無職で収入がない場合は、所得税はかかりませんが、それ以外は個人で納めなければなりません。
例えば、単身者・前年の年収300万円の場合で考えてみましょう。
給与収入があったときの社会保険料は、健康保険料率11.5%(令和7年度、東京都の場合)厚生年金保険料率18.3%を合わせて29.8%とし、その半分である14.9%と雇用保険料0.55%(令和7年度)を本人負担とすると、本人負担率は合計15.45%となり約46万円です。
年収300万円の場合の給与所得控除額は98万円で、給与所得控除後の所得は202万円です。ここから基礎控除48万円と社会保険料46万円を引くと、前年の課税所得は108万円となります。
住民税は前年の所得に基づき計算され、翌年に納付します。
住民税の基礎控除は43万円となるので、202万円から社会保険料46万円と基礎控除43万円を引くと113万円の課税所得となり、所得割10%で11万3000円、ここから所得税との基礎控除額の差額である5万円に対して5%の2500円を減額し、均等割り等6000円を加え、約12万円の納付額をみておきます。
20歳以上60歳未満であれば、国民年金の保険料を納めます。令和7年度の国民年金保険料は1万7510円であり、年間で21万円必要です。
健康保険は、任意継続する方法と、国民健康保険に加入する方法があります。ただし、任意継続の保険料は全額自己負担です(傷病手当金や出産手当金の給付はありません)。国民健康保険は、前年における世帯内の保険加入者全員の所得から計算されます。国民健康保険と保険料を比較して決めましょう。
国民健康保険は、保険料は市区町村により異なりますが、新宿区を例にすると、総所得金額200万円の場合、年間保険料は約28万円(介護なし約23万円)となります(出典:新宿区「令和7年度 国民健康保険料 概算早見表(総所得金額等)」)。
これにより、12万円+21万円+28万円の非消費支出に、192万円の消費支出を加算すると253万円になります。
しかし、あくまでも目安にすぎず、これだけあれば1年間暮らせるというものではありません。自分の実際の生活費が1ヶ月でどれだけかかっているか把握し、生活できる金額で見積もりましょう。
将来への影響
退職で無職になった場合に、国民年金には免除制度があります。国民健康保険についても、保険料が減額される制度があります。詳しくは、お住まいの市町村におたずねください。
ただ、免除になると保険料は軽減できて、免除期間も将来の年金の受給資格期間にカウントできるものの、将来の年金額は少なくなってしまいます。例えば全額免除の場合、受け取る年金額は全額納付した場合の年金額の2分の1のように、免除された分の2分の1しか将来の年金額に反映されません。
また、iDeCoは年金に上乗せする制度ですが、国民年金を支払っている人に加入資格があります。もし、iDeCoの加入者に、国民年金の免除や支払い猶予が認められた場合、iDeCoの加入資格が喪失してしまうことに、注意が必要です。
時間に縛られずゆっくり過ごせば、将来を見つめ直す余裕も出てくるでしょう。この1年間が、有意義な時間になるとよいですね。
出典
総務省統計局 家計調査報告(家計収支編) 2024年(令和6年)平均結果の概要
デジタル庁 e-GOV法令検索 所得税法
全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 No.1199 基礎控除
厚生労働省 令和7(2025)年度 雇用保険料率のご案内
厚生労働省 令和7年度の年金額改定についてお知らせします
全国健康保険協会(協会けんぽ) 健康保険任意継続制度(退職後の健康保険)について
新宿区ホームページ
新宿区 令和7年度 国民健康保険料 概算早見表(総所得金額等)
執筆者 : 林智慮
CFP(R)認定者