今年から「年収400万円」でパートから「正社員」になりましたが、扶養を外れるのは損ではないでしょうか?

配信日: 2025.06.17

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今年から「年収400万円」でパートから「正社員」になりましたが、扶養を外れるのは損ではないでしょうか?
あるパートタイマーが、これまで配偶者の扶養の範囲内で働いていたとしましょう。その人は勤務態度や業務成果を評価され、今年から会社の正社員登用制度により、正社員として働くことになりました。給与も年収400万に跳ね上がり、パートから正社員になることはいいことずくめのような気がしますが、果たしてデメリットや注意点はないのでしょうか?
 
なお、本記事の事例では、パートタイマーで働いていた主婦が会社員の夫の扶養から外れたケースを想定します。
高橋庸夫

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

「パートから正社員となる」とは?

まずは、「パートタイマーから正社員になる」ということを考えてみます。
 
一般的には、正社員になることで、働き方や給与体系が変わると想定されます。雇用が安定し、仕事上でのさらなるキャリアアップを目指すことも可能な環境となることでしょう。
 
例えば時間給から月給制に変わることで、収入がアップするほか、基本給などの固定的な給与項目がベースとなるため、より安定した収入を得られるメリットもあります。また、時間外手当や賞与、退職金制度などもプラスの要素といえるでしょう。
 
次に、夫の扶養を外れて、自らが社会保険の被保険者となることもできます。
 
これによって、健康保険料(労使折半)や厚生年金保険料などを負担する必要がありますが、出産手当金や傷病手当金の支給を受けられる、将来自らが受給する年金が増える、といったメリットがあります。
 
一方で正社員となることのデメリットを考えてみると、勤務時間が制約され、融通が利きづらくなることが、代表的なものとして挙げられます。子育てなどの関係でパートタイマーとして働いていた方が、正社員となることで、会社の規則に従った勤務時間の制約を受けるのは当然です。
 
さらに、業務の責任が重くなることや、場合によっては人事異動や転勤などを命ぜられることもあり得ます。つまり、より安定した給与や待遇を得ると同時に、仕事への責任や一定の制約を受けることも考慮しなくてはなりません。
 

給与年収400万円の場合に増える負担額

続いては概算で、健康保険や厚生年金保険の保険料、所得税等、住民税がどれぐらい増えるのか試算してみましょう。事例は、東京都で40歳(介護保険第2号被保険者)、協会けんぽに加入している者とします。なお、令和7年3月分(4月納付分)からの保険料額表を使用します。
 
(1)健康保険料(介護保険料を含む)  標準報酬月額は、「34万円(24等級)」
 
 介護保険料を含む健康保険料の折半額(自己負担)は、「1万9550円」
 
(2)厚生年金保険料 標準報酬月額は、「34万円(21等級)」
 
 折半額(自己負担)は、「3万1110円」
 
上記(1)と(2)の年額は、(1万9550円+3万1110円)×12ヶ月=60万7920円/年
 
さらに、所得税等、住民税の負担も増加します。
 
(3)所得税等(復興特別所得税を含む) ※基礎控除のみを考慮
 
 令和7年度税制改正(令和7年12月1日施行)に基づき試算
 
給与所得控除額:400万円×20%+44万円=124万円
 
給与所得控除後の額:276万円
 
 基礎控除額:88万円
 
 課税所得金額:276万円-88万円=188万円
 
 所得税:9万4000円 復興特別所得税は、1974円
 
住民税の基礎控除額:43万円(税率10%、均等割5000円(森林環境税を含む))
 
課税所得金額:276万円-43万円=233万円
 
住民税:23万3000円+5000円=23万8000円
 
上記(1)(2)(3)の年間負担額の合計は、94万1894円/年となります。
 

夫の税金負担への影響

もう一つ考慮すべきなのは、会社員である夫にとって、税金の負担が増える可能性です。
 
妻が扶養の範囲内で働いていた場合、所得税および住民税の所得控除である「配偶者控除」または「配偶者特別控除」が適用できるケースが多いため、その分夫の税金負担が軽減されることになります。
 
しかし、妻の年収が400万円となると、夫はそれらの所得控除を適用できないため、税金の負担が多くなることになります。また、会社によっては家族手当や扶養手当などを一定の条件で支給しているケースもあり、これらの条件から外れると、夫の収入が減るケースもあります。
 

まとめ

上記の年収400万円での試算では、社会保険料と所得税等の負担が年額で約94万円増加する結果となりました(年収の23.5%)。
 
なお、これはあくまでも一つの事例であり、それぞれの家計では家族構成などにより、試算結果も異なります。損得というよりは、家計ごとの子どもの扶養控除や家族の収入構成などを加味した試算を、一度しっかりと行っておくことをお勧めします。
 
なお、令和7年度には、記事内にも記載のとおり、基礎控除や給与所得控除などの改正が行われます。最新の情報を確認したうえで、試算を行いましょう。
 

出典

全国健康保険協会(協会けんぽ) 令和7年度保険料額表(令和7年3月分から)
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
東京都主税局 個人住民税
国税庁 No.1191 配偶者控除
 
執筆者 : 高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー

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