派遣社員として3年間勤務しましたが、「次回の更新はない」と言われました。次の仕事はまだ決まっていません…… 派遣社員でも失業保険はもらえますか?
配信日: 2025.06.14

その一方で、派遣先の事情などにより「次回の更新はない」と言われる場合もあり、「すぐに次の仕事は決まるのか」と不安になる方もいらっしゃるでしょう。今回は、派遣社員でも失業保険をもらえるのか、確認しましょう。

CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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派遣社員でも“一定の条件を満たせば”雇用保険に加入できる
派遣社員の場合、日々の就労先が派遣先ですが、雇用契約は派遣元です。まずは、「派遣元」との関係を確認しましょう。結論からいうと、派遣社員だといっても、一定の条件を満たせば雇用保険に加入できます。
「一定の条件」の内容を確認しましょう。派遣会社と雇用契約を締結していて、「週20時間以上働いている」「31日以上の雇用見込みがある」この2つの条件を満たしていれば、雇用保険の被保険者です。
そのため、これまで派遣社員として働いていた期間が、雇用保険の加入期間としてカウントされます。
ここで「31日以上の雇用見込みがある」についても補足しておきます。働き始めた時点で、その雇用契約が31日以上続くと見込まれている状態を指します。これは、雇用保険に加入するための重要な条件の一つです。
「実際に31日以上働いたかどうか」ではなく、「契約時点で31日以上雇う予定があるかどうか」がポイントになります。言い換えると、最初から「短期(30日以内)の単発契約」として雇われる場合は、原則として雇用保険の加入対象になりません。
具体例で「一定の条件」の理解を深めましょう
【例1:雇用見込みが31日以上あるケース】
Aさんは、派遣会社と「3ヶ月契約(約90日)」で雇用契約を結びました。
この場合、契約期間が明確に31日を超えているため、「31日以上の雇用見込みあり」とされます。したがって、Aさんは週20時間以上働いていれば、雇用保険に加入対象です。
【例2:契約期間が明示されていないが、継続前提の雇用】
Bさんは、パートで「契約期間の定めなし」で採用されました。使用者側から「継続的に働いてもらう予定」と説明された場合も、「31日以上の見込みあり」と判断されることが多いです。
【例3:31日未満のため、雇用保険加入の対象外になるケース】
Cさんは、「10日間の単発アルバイト」としてイベント設営の仕事に就きました。雇用契約書にも「10日間」と記載がある場合、31日以上の雇用見込みがないため、雇用保険加入の対象外です。
【例4:短期契約でも繰り返し更新される場合】
毎月1ヶ月契約で更新されている場合でも、更新を前提とした継続雇用が見込まれていれば「31日以上の見込みあり」と判断されることもあります。
なお、この判断は雇用契約書の記載や、雇用主の意思表示、実態に基づいてハローワークが判断します。
失業保険(基本手当)を受け取るための要件
次に、「失業保険(基本手当といいます)」を受け取るための要件について確認します。こちらも、以下の2つの要件があります。
1.「離職日以前の2年間に、雇用保険に通算12ヶ月以上加入している」ことです。なお、ここでの1ヶ月とは「賃金支払いの基礎日数が11日以上ある月」のことをいいます。賃金支払いの基礎日数とは、簡単にいうと、「実際に働いた日数+有給休暇などの給与が発生する日数」のことです。
例えば、2023年4月~2024年6月までの15ヶ月間派遣社員と勤務し、雇用保険にも加入済みで、毎月20日以上働いていた場合は、離職日前2年間のうち12ヶ月以上、かつすべての月で11日以上の基礎日数があるため要件を満たします。したがって、失業保険の受給資格があるということになります。
一方、同じ15ヶ月間派遣会社と雇用契約を結んでいても、例えば2023年4月~6月までの3ヶ月間は無職、12月~2024年2月までの3ヶ月は週20時間勤務で雇用保険に加入していなかったという場合は12ヶ月に届かないために、受給資格はありません。
失業保険の資格を満たすかどうかを判断するときは、離職日からさかのぼって過去2年間の間に、連続でなくてもいいので、12ヶ月以上カウントされる月があるかを見るということ、雇用保険に未加入のアルバイト期間などもカウント対象外であるという点は注意してください。
2.「就職する意思と能力があるにもかかわらず、仕事に就けていない状態」であること、つまり、「働く意志がある」「すぐに働ける」「求職活動をしている」ことが前提です。
海外旅行や長期帰省などですぐ働ける状態ではない、病気・出産・育児・介護などですぐに就職できない、求職活動をしていない、または虚偽の報告をする、といった場合は「失業の状態」と認められません。
失業の状態であることを証明するには、ハローワークでの手続きと4週間に一度ハローワークに出向いて「失業認定」を受けるという一定の行動が必要です。
まとめ
このように、派遣社員でもいくつかの要件をクリアすれば失業保険がもらえることが確認できました。
自分の場合はどうなのか、不安な場合は、ハローワークで「雇用保険被保険者期間通知書」や「離職票」などをもとに確認できます。また、派遣会社や勤務先の総務担当に、「保険加入期間」「基礎日数の有無」を確認するのもおすすめです。
また、「失業の状態にある」ことを証明するのは、ハローワークで手続きをして4週間に一度ハローワークに出向いて「失業認定」を受ける必要がありますので併せて確認しておきましょう。
出典
厚生労働省 Q&A 〜労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)〜
執筆者 : 柴沼直美
CFP(R)認定者