「住民税の通知」で“非課税から課税”に…!「年収103万円」ギリギリだったのになぜ? 所得税・住民税の「非課税基準」の違いを解説
配信日: 2025.06.12

本記事では、所得税と住民税の非課税基準の違いや、住民税が課税される仕組みについて解説します。
所得税と住民税の非課税基準の違い
所得税と住民税では、課税される基準となる所得額が異なります。そのため、所得税が非課税でも住民税が課税されることがあります。
所得税の非課税基準
所得税は、課税所得金額に所得に応じた税率をかけて税額を決定します。課税所得金額は次の計算式で求めます。
給与収入-給与所得控除-各種所得控除=課税所得
給与所得控除は、給与収入が162万5000円以下の場合、一律55万円です。また、基礎控除は48万円です。そのため、給与収入が103万円以下であれば、課税所得が0円となり、所得税は非課税となります。
なお、2025年度の税制改正により基礎控除額と給与所得控除額が見直されました。いずれの額もこれまでより引き上げられ、基礎控除は最高95万円(合計所得金額132万円以下のとき)、給与取得控除額は最低保障額65万円となったため、今後は給与収入160万円以下であれば所得税が非課税となります。
住民税の非課税基準
住民税には「所得割」と「均等割」の2つの課税方式があります。
●所得割:所得に応じて課税される部分
●均等割:所得に関係なく一定額が課税される部分
非課税になる基準について、それぞれ見ていきましょう。
所得割が非課税となる基準
住民税の非課税基準は、自治体によって異なりますが、東京23区内の場合は所得の基準が次のようになっています。
●扶養親族がいない場合:合計所得金額が45万円以下
●扶養親族がいる場合:「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の合計人数)+42万円」以下
所得割・均等割ともに非課税となる基準
一方、同じく東京23区内において、均等割が非課税となる基準は次のとおりです。
●扶養親族がいない場合:合計所得金額が45万円以下
●扶養親族がいる場合:「35万円×(本人+扶養親族の人数)+31万円」以下
例えば、扶養親族がいない場合、合計所得金額が45万円を超えると所得割と均等割がともに課税されるということになります。
年収103万円でも住民税は課税される? 具体的な事例で確認
それでは、年収103万円で住民税が課税される、具体的なケースを見てみましょう。
給与収入が103万円の場合、給与所得控除55万円を差し引くと、合計所得金額は48万円となります。所得税の基礎控除は48万円なので、課税所得は0円となり、所得税は非課税です。
しかし、住民税の所得割の非課税基準は45万円です。給与所得控除55万円を差し引いた合計所得金額が48万円であるため、住民税の所得割が課税されることになります。また、均等割の非課税基準も同様に45万円であるため、こちらも課税されます。
このように、所得税は年収103万円未満であれば非課税になりますが、住民税は年収100万円以上で課税されることになります。なお、2025年の税制改正により住民税についても見直されました。給与所得控除が55万円から65万円に引き上げられたため、今後は年収110万円以上で住民税が課税されることになります。
住民税が課税される理由と対策
所得税が非課税であっても住民税が課税される理由は、所得税と住民税で非課税となる基準が異なるためです。特に、住民税の非課税基準は所得税よりも低めに設定されているため、所得税が非課税でも住民税が課税されることがあります。
住民税の課税対象とならないようにするためには、以下のポイントを確認する必要があります。
●住んでいる自治体の非課税基準を確認する
●合計所得金額を住民税の非課税基準以下に抑える
また、住民税の課税対象となる場合でも、控除の対象となる支出や条件を満たしていれば、住民税の申告を行うことで控除が適用され、結果的に税額負担が軽減できる場合があります。例えば、医療費控除や社会保険料控除、扶養控除、生命保険料控除などが該当します。
まとめ
所得税と住民税では、非課税となる基準が異なるため、年収が103万円以下で所得税が非課税であったとしても、住民税が課税されることがあります。課税基準は自治体によっても異なるため、住民税に関して不明な点がある場合は、各自治体へ早めに確認することが大切です。
出典
東京都 主税局 個人住民税
執筆者 : 古澤綾
FP2級