「お米が高くてもう限界です…」備蓄米“100万トン”放出したら、コメ価格は本当に下がる?「食費月10万円」の家庭へのコストカットはどのくらい? 影響をシミュレーション
配信日: 2025.06.12

お米は日本人の主食であり、日々の食卓に欠かせない存在です。そのため、値上がりの影響は家庭の食費に直撃し、「もう限界……」と感じている家庭も少なくないのではないでしょうか。
では、今回の備蓄米の放出は、家計にとっての助け舟になるのでしょうか?
本記事では、備蓄米の仕組みと放出の目的を解説するとともに、4人家族で月の食費が10万円、月に15キログラムのお米を消費する家庭を想定し、備蓄米を取り入れるといくら支出が抑えられるのかを具体的にシミュレーションします。
ぜひ最後まで読み、備蓄米の放出によって米価格がどうなっていくのか確認してください。

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備蓄米とは? 目的と仕組み
備蓄米は、1993年の米の大凶作を教訓に1995年から制度化された、国が備蓄しているお米のことです。政府は、主食である米の安定供給を目的に、約100万トンの備蓄を保つようにしています。
備蓄米は、毎年約20万トンずつ新たに買い入れ、5年間かけて入れ替える方法で管理されています。全国約300ヶ所の民間倉庫で厳重に保管され、保管期間を過ぎた米については、品質などを考慮して飼料用などに転用されるのです。
100万トンという備蓄量は、10年に1度の大不作や、通常の不作が2年続いた場合でも国産米だけで対応できる水準とされています。まさに、災害時や供給不足時における食料安全保障の要として、重要な役割を担っているのです。
通常、備蓄米は「棚上備蓄」という形で管理されており、政府の買い入れや売り渡しが市場に影響を与えないよう、主食用として販売されることはありません。実際に家庭向けに供給されるのは、大きな不作などで需給が深刻に逼迫(ひっぱく)したときに限られています。
しかし、近年の米価格高騰を受け、2025年には異例の対応として、備蓄米の一部が随意契約により市場に放出されました。
備蓄米の放出で、米価格はどれくらい下がる?
実は、備蓄米が市場に出ても、すぐに米の価格が下がるとは限らないと言われています。なぜなら、今回の放出は、価格を下げるというより、急騰を防ぐ「安定化策」としての性格が強いからです。
また、放出される備蓄米の多くは業務用に回され、家庭用に流通する量は限られているともいわれています。
2025年5月には、備蓄米は入札方式から随意契約に切り替えられ、2021年度産の「古古古米」約8万トンが販売され、6月10日には20万トンの追加放出が発表されました。
こうした放出が行われることで、民間業者の仕入れ価格が下がり、一般家庭に届く米の価格もじわじわと抑えられる期待があります。特に外食や給食向けの需要が備蓄米で賄われれば、一般向けの市販米が余裕をもって供給され、結果的に価格が安定する可能性があるでしょう。
「月15キログラム消費」家庭の食費はどのくらい下がる?
4人家族で米の消費量が1ヶ月あたり15キログラムだった場合、現在の市販米の価格が5キログラムあたり4260円、つまり1キログラムあたり852円とすると、15キログラムで1万2780円かかる計算になります。
これに対し、政府の備蓄米が5キログラム2000円(1キログラムあたり400円)で購入できれば、同じ15キログラムを6000円で賄うことが可能です。
・通常価格 15キログラム×852円=1万2780円
・備蓄米価格 15キログラム×400円=6000円
差額は月あたり6780円で、食費全体が10万円の家庭であれば、約6.8%の削減効果があり、年間で換算すれば約8万円以上のコストカットになります。
まとめ
備蓄米の放出は、米価格高騰への対策として一定の効果が期待されるものの、備蓄米以外の米の価格はすぐには下がらない可能性が高いです。
とはいえ、備蓄米を上手に取り入れることで、家計の負担を軽くできる可能性はあります。さらにお米の価格は加工食品や外食費にも影響するため、おにぎりや弁当などの価格が落ち着けば、生活費を抑える波及効果も期待できるでしょう。
物価高が続く今、備蓄米という選択肢を活用し、家計を守る手段の1つとして取り入れていきたいところです。
出典
農林水産省 米をめぐる状況について令和7年5月農産局
農林水産省 随意契約による政府備蓄米の売渡しについて
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー