スーパーで「1袋30円」のもやし。家計は助かるけど、もやし生産者は“コスト増”で続けていけない!?「もやし生産の適正コスト」とは
配信日: 2025.06.03

本記事ではもやしがなぜこのように安くなったのか、もやしを生産する適正なコスト、私たちができることなどを解説します。
もやしの価格はどのように変化している?
政府の統計データによると、2024年における東京都区部のもやしの平均価格は、1キログラムで178円でした。もやし1袋を200グラムとすると、1袋の平均価格は35.6円です。
もやしの価格は、1992年から2013年まで下落を続けてきました。確かに一時期、もやし1袋が10円前後で売られていたことを筆者も記憶しています。その後は横ばいからやや上昇傾向にはあるものの、1992年当時の価格よりも低いままです。
もやしはなぜ安い?
そもそも、なぜもやしは驚くほど安いのでしょうか。もやしの栽培には土や肥料が不要で水だけで育つため、工場での生産が可能です。天候や災害にも左右されないため、生産量は安定しています。そのため、大手事業者の参入により過剰供給が発生して値段が下がりました。
また、小売店にとっては扱いやすい商品だったことも、値下がりにつながった要因の1つです。もやしは、スーパーの目玉特売商品となることが少なくありません。
消費者の目を引きつけるため、利益が出ない価格でもやしが販売される場合があります。もやしで利益が出なくても、店に来てもらってほかの商品を買ってもらえばよいという意図で、もやしが安売りされることがあるのです。
もやしの生産コスト
過去には信じられないほど安く販売されていたこともあり、もやしといえば「安いのが当たり前」と思っている人も少なくないでしょう。しかし、もやしを適切に生産しようとすると当然一定のコストがかかります。
特に最近では、世界的なインフレによって原材料価格などが高騰しており、もやしも例外ではありません。もやしの原料になる種は、30年前と比べて3倍以上の価格となり、賃金などほかのコストも上昇しています。
しかし、値段は30年前を下回る水準のため、採算が取れなくなり廃業する事業者が相次いでいます。生産者は1995年頃と比べて8割も減少しているほどです。
現在のもやしの採算ラインは、小売価格で40円前後です。先ほど紹介した平均価格よりも約5円高い水準で、もやし生産者がいかに苦しい状況にあるのかが分かるのではないでしょうか。
私たち消費者ができること
生産者も値上げをしたいのはやまやまですが、なかなか値上げができない状況です。ここ数年で価格は1割上がったものの、買い控えにより購入量が約1割減少しています。私たち消費者の意識も変えていく必要があるのではないでしょうか。
生産者が生産を続けられるだけの利益が得られなければ、もやし生産者が皆いなくなってしまいます。そうなると、もやしの価格が大幅に上がる可能性や、最悪もやしが入手できなくなる可能性もあるでしょう。
もやしの現在の価格は適正なものとはいえないため、ある程度の値上げは消費者も受け入れる必要があります。もやしは安いだけでなく、低カロリーでさまざまな栄養を含んだ優れた食品です。私たち一人ひとりがもやしの適正な価格を理解して、もやし生産を支えていく必要があるでしょう。
出典
総務省統計局 小売物価統計調査 小売物価統計調査(動向編) 年次 2024年
工業組合もやし生産者協会 もやしの統計
工業組合もやし生産者協会 もやし生産者の窮状にご理解を!
執筆者:山根厚介
2級ファイナンシャルプランニング技能士