「みなし残業代40時間分」の会社で働く予定です。絶対に40時間残業があるのですか?
配信日: 2025.05.28

では、みなし残業(固定残業)とはどのような制度なのでしょうか? 本当に40時間の残業が発生するのでしょうか?
この記事では、その仕組みを解説し、注意点を紹介します。

行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
みなし残業(固定残業)制とは? 基本的な仕組み
みなし残業(固定残業)制とは、企業が一定時間分の残業代をあらかじめ月々の給与に含めて支払う制度です。例えば「みなし残業(固定残業)代40時間分」の場合、40時間分の残業代が基本給とは別にあらかじめ支払われる仕組みになっています。
しかし、ここで重要なのは、「みなし残業(固定残業)代が40時間分支給される」ことは「必ず40時間の残業がある」というわけではないことです。みなし残業(固定残業)は「一定の時間分の残業代をあらかじめ支払う仕組み」ですが、実際の残業時間がそれより少ない場合でも、基本的には同じ残業代が支払われるのが特徴です。
例えば、基本給24万円(時給換算で1500円)で、みなし残業(固定残業)代40時間分を設定している場合、残業代は以下のように計算されます。
・時給1500円×1.25(残業割増)=1875円(残業時の時給)
・1875円×40時間=7万5000円(みなし残業代)
みなし残業(固定残業)代が定められている場合、この7万5000円が、実際に40時間働いたかどうかに関わらず支払われます。そのため、仮に残業が40時間以内であり、かつ他の手当や欠勤などを考慮しなければ、今回のケースでは毎月31万5000円の給与を得られるわけです。
みなし残業(固定残業)時間=実際の残業時間ではない
企業がみなし残業(固定残業)制を導入する目的はさまざまですが、多くの場合、残業時間の計算の簡略化や、基本給を抑えつつ総支給額を少しでも高く見せたい場合に導入される傾向にあります。
そのため、みなし残業(固定残業)時間=実際の残業時間とは限りません。実際、「みなし残業(固定残業)時間と実際の残業時間がそろっていなければならない」という規定は、法律上どこにもありません。
とはいえ、実際の残業時間がみなし残業(固定残業)時間を下回っても、みなし残業(固定残業)代は満額支払われなければなりません。加えて、実際の残業時間が上回れば超過分を別途支給しなければならないとされています。
みなし残業(固定残業)制のメリット・デメリット
みなし残業(固定残業)制がある会社で働くのであれば、みなし残業(固定残業)によるメリットとデメリットをしっかりと知るべきです。
メリットとしては、まず、残業が少なければ実質的に手取りが増えることが挙げられます。それゆえ、みなし残業(固定残業)時間より実際の残業時間が少なければ、相対的に高い給与を得られることになります。
加えて、毎月の給与に固定で残業代が含まれているため、収入が残業の有無によって左右されず、安定します。
一方で、実際の残業時間がみなし残業(固定残業)時間を超えた場合にトラブルになる可能性があります。例えば、労働時間の管理が曖昧になりがちであったり、みなし残業(固定残業)時間を超えた残業があった場合にも残業代の支払いがしぶられたりするおそれもあります。
その他には、みなし残業(固定残業)代を含めて給与額を設定しているため、基本給が低めに設定されている可能性があります。結果的に、ボーナスや退職金の計算が不利になることも考えられます。
まとめ
みなし残業(固定残業)代が40時間分設定されていても「絶対に40時間残業しなければならない」わけではなく、あくまで40時間分の残業代が残業時間に関係なく固定で支払われるという仕組みです。
みなし残業(固定残業)制は、適切に運用されている企業であればメリットもありますが、企業によっては超過分の未払いなどが発生することもあるようです。入社前に契約内容をしっかり確認し、納得できる場合にみなし残業(固定残業)付きの条件で働くようにしましょう。
執筆者:柘植輝
行政書士