「時給1250円」のパート主婦。扶養を外れて稼ごうと思ったら、夫に「年収150万円未満だと、1週間タダ働きするようなもの」と言われた! それだけ“税金を引かれる”ということですか? 働き損にならない年収とは?
配信日: 2025.05.27

よく「150万円まではタダ働き」と言われますが、実際はどうなのでしょうか? 本記事でシミュレーションします。
なお、従業員51人以上の企業に勤務している場合は、年収106万円で社会保険の加入義務が生じる場合があります。
本記事では、これに該当しないケースを前提とします。また、2025年から給与所得控除の最低額が65万円、基礎控除が58万円となる見込みであることも考慮し、この数字を使ってシミュレーションを行いますが、シミュレーションは一例で実際とは異なる場合があります。
130万円の壁とは?
パートやアルバイトで働く人であっても、年収が130万円未満であれば配偶者の社会保険上の扶養に入ることができるため、健康保険料や年金保険料の支払いは不要です。
しかし、年収が130万円を超えると扶養から外れ、自分で保険料を支払う義務が生じます。保険料の分だけ手取りが減るため、「130万円を超えると働き損になる」と言われるのです。
働き損ではなくなるのはいつ?
配偶者の扶養から抜けた場合、自分で健康保険に加入しなければなりません。これには「会社の社会保険制度に加入する」と「国民健康保険制度に加入する」の2つの選択肢があります。
年収129万円のときの手取りは所得税(3000円)と住民税(2万6000円)を差し引いた126万1000円です。この手取りを超えるためにいくら必要なのかを考えていきましょう。
会社の社会保険に加入する場合
会社の社会保険に加入する場合、保険料は会社と折半して支払います。従業員が支払う保険料は収入のおおむね15%です。
この場合、年収130万円で支払う社会保険料は約19万5000円となります。社会保険料控除を受けられるため、所得税は非課税、住民税は均等割の5000円のみと負担は軽くなりますが、手取りは110万円に減ってしまいます。
年収129万円のときと同じ手取り「126万1000円」以上にするために必要な年収額は152万円です。社会保険料22万8000円、所得税3100円、住民税2万6200円を引くと、手取りは126万2700円となります。
時給1250円で年収152万円に達するためには、週24時間程度の勤務が必要です。
ただし、会社の社会保険に入る場合は将来の年金額が増える、病気やけがで働けなくなったときに傷病手当がもらえるなどのメリットがあります。手取りが減った分の全てが損になるわけではないのです。
国民健康保険に加入する場合
もし130万円を超えて扶養を抜けても会社の社会保険に入れない場合は、国民健康保険に加入します。この場合、国民健康保険料と国民年金保険料の支払いが必要です。
例えば東京都世田谷区の2025年の国民健康保険料をベースに計算すると、年収130万円の場合の国民健康保険料は年間10万8530円となります。国民年金保険料は年収にかかわらず年間21万120円(2025年度の場合)と一定です。
これに住民税(均等割5000円)を加味すると、手取り額は97万6350円と大幅に減ってしまいます。
年収129万円のときと同じ手取り額(126万1000円)を超えるためには、なんと166万円以上の年収が必要です。しかも、このケースでは手取りが減ったからといって将来の年金が増えたり、傷病手当がもらえたりするわけではありません。
130万円を超えたときの損益分岐点は会社の社保に入れるかで異なる
いわゆる「130万円の壁」を超えると、確かに手取りが減る期間があり、年収150万円以上を稼がなければ損をするというのは事実です。
ただし、会社の社会保険に加入できる場合は、将来の年金が増える、傷病手当がもらえるといった制度的なメリットがあります。たとえ一時的に手取りが減っても、「タダ働き」とまでは言えない部分もあるでしょう。
一方で、会社の社会保険に入れない場合は要注意です。129万円時の手取りを超えるには166万円以上の年収が必要となり、しかもその分のメリットが少ないからです。
まずは自分の勤務先で社会保険に加入できるかを確認し、そのうえで「壁を超えるかどうか」を総合的に判断することが大切です。
出典
厚生労働省 『年収の壁について知ろう』 あなたにベストな働き方とは?
世田谷区 保険料の計算方法
執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士