友人が会社を休んで「給付金」をもらいながらWebクリエイター能力認定試験の勉強をするそうです。基本手当と同額程度がもらえるそうですがどういうことですか?

配信日: 2025.05.23

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友人が会社を休んで「給付金」をもらいながらWebクリエイター能力認定試験の勉強をするそうです。基本手当と同額程度がもらえるそうですがどういうことですか?
社会の変化によって、これから必要とされる新たなスキルや知識を従業員に身に付けさせるために行う教育(リスキリング)が推進される一方で、仕事を離れて労働者が教育訓練に専念する場合の生活費を支援する仕組みがないという問題があります。
 
そこで、労働者が生活費等への不安なく教育訓練に専念できるように10月から「教育訓練休暇給付金」と「リ・スキリング等教育訓練支援融資」が施行されます。本記事では、「教育訓練休暇給付金」を中心に解説します。
新美昌也

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

教育訓練休暇の現状

厚生労働省が実施した2023年度の「能力開発基本調査」によると、教育訓練休暇制度の導入状況は、「導入している」とする企業は8.0%、「導入をしていないが、導入を予定している」とする企業は9.9%となり、「導入していないし、導入する予定はない」とする企業が81.9%を占めています。
 
また、教育訓練休暇制度を導入している企業のうち、長期休暇(30日以上連続の休暇)の取得、有給休暇としての取得可否について、「長期休暇の取得はできないが、有給休暇として取得できる」(51.7%)が最も多くなっています。
 
次いで、「長期休暇の取得はできず、有給休暇として取得できない」(20.3%)、「長期休暇の取得ができ、有給休暇として取得できる」(19.7%)、「長期休暇の取得ができるが、有給休暇として取得できない 」(7.9%)が続いています。
 
導入予定がない理由は、 いずれも「代替要員の確保が困難であるため」が最も多く、「制度自体を知らなかったため」「労働者からの制度導入の要望がないため」「制度導入のメリットを感じないため」が続いていいます。
 
企業は、社会の変化によってこれから必要とされる新たなスキルや知識を、従業員に身に付けさせ、生き延びる必要があり、特に中小企業の経営者は意識改革が必要です。
 

教育訓練休暇給付金とは

教育訓練休暇給付金とは、在職中に教育訓練を受けるために休暇した場合、その間の生活費を支える給付金です。
 
雇用保険被保険者が、「教育訓練のための休暇(無給)を取得すること」「被保険者期間が5年以上あること」の支給要件を満たした場合、離職した場合に支給される基本手当(失業手当)の額と同じ額が教育訓練休暇給付金として支給されます。給付日数は、被保険者期間に応じて90日、120日、150日のいずれかになります。
 
教育訓練休暇給付金に係る手続きの流れは、次のとおりです。
 
被保険者は事業主に教育訓練休暇給付金を受ける意思表示を行い、事業主経由で、当該被保険者の休暇期間や賃金支払状況等を事業所管轄のハローワークに届け出し、賃金支払状況等の確認結果通知を事業主経由で受け取ります。
 
被保険者は、教育訓練休暇給付金が支給されると、休暇開始前の被保険者であった期間については、基本手当の受給資格決定に用いる期間から除かれること等を十分に理解したうえで、支給申請します。
 
ハローワークはそのことを確認して、支給申請を受理し、教育訓練休暇給付金の受給資格を確認し、資格決定します。被保険者は、30日ごとに教育訓練休暇取得を申告し、申告に基づいて教育訓練休暇の取得を認定、教育訓練休暇給付金を支給します。
 

リ・スキリング等教育訓練支援融資の概要

教育訓練休暇給付金は雇用保険被保険者が対象でしたが、この融資制度は雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと等の要件を満たす方が対象です。
 
融資対象の教育訓練は、大学、各種学校等が行う訓練、教育訓練給付金の指定教育訓練実施者が行う教育訓練、求職者支援訓練、または公共職業訓練であって教育訓練期間が1ヶ月以上のものです。
 
融資は、以下を対象に最大2年間受けることができます。ただし、年収200万円未満の者や離職者に対しては最大1年間分です。
 
貸付金の上限は、教育訓練費用(教育関連資金〈教科書・学用品等〉を含む)が年間120万円、生活費用が年間120万円(10万円×12ヶ月)です。貸付利率は年2.0%(信用保証料0.5%を含む)で、担保・保証人は不要です。返済期間は教育訓練修了後から1年間(据置期間)経過後、10年間以内です。
 
インセンティブとして、求職者支援訓練、公共職業訓練、または教育訓練給付金の指定講座を対象として、訓練修了後、雇用保険被保険者として1年以上の雇用継続につながり、訓練修了前後の賃金を比較して、賃金が5%上昇したときは残債務の30%(上限額は100万円)、賃金が10%上昇したときは残債務の50%(上限額は150万円)が免除されます。
 
なお、貸付時点において、融資対象者本人の年収が500万円以上の場合は、インセンティブ措置の対象外となります。興味のある方は、厚生労働省のホームページを確認してみましょう。
 

出典

厚生労働省 第204回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会
厚生労働省 能力開発基本調査:結果の概要
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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