【2025年度開始】時短勤務でも「賃金+10%」支給へ! 育児中の働き方を支える「育児時短就業給付金」とは?
配信日: 2025.05.19

出産・子育て応援交付金はこども家庭庁が創設される前に始まった政策ですが、こども家庭庁創設後は、出産育児一時金が引き上げられ、子育て世帯向けにフラット35の金利が引き下げられました。また、高等教育修学支援新制度や児童手当の拡充も実施されました。
そして、2025年度からは子の看護休暇の対象が広がり、育児休業等給付として「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」の2つの制度が始まります。
今回は、これらの政策のうち「育児時短就業給付金」について簡単に見ていきたいと思います。

ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
私たちは、ある環境のなかで生きている
「育児時短就業給付金」という制度は、なぜ創設されたのでしょうか。直接的には、育休(育児休業)が明けて職場復帰し、短時間勤務で働く場合、一般的には収入が減る傾向があり、このような家計状況を支援する必要が出ているからです。
つまり、図表1でいうところの「家庭環境」の変化に対する支援(家計支援)という位置づけです。もう少し広い視野で捉えると、仕事と家庭の両立支援でもあり、働き方改革でもあり、人口減少に伴う人手不足対策でもあり、少子化対策の一環でもあるということができるでしょう。
私たちはある環境のなかで生きていますが、このように見ていくと、育児時短就業給付金という制度が社会環境の変化に伴い創設されたことが分かります。
図表1
※筆者作成
育児時短就業給付金について理解するには
説明をする前に、どの程度理解すればよいかについてお話しします。
ある制度を理解しようとする場合、概要をつかむことを意識するようにしましょう。このときのポイントは「自分の場合はどうなのか」です。
細部までは熟知しようとせず、自分に関係するポイントを確認しながら読み進めていくというイメージです。枝葉の部分に反応してしまうと気が散ってしまい、全貌をつかむことが難しくなるため、要点を確認することを意識してみてください。
また、政策や制度などを理解する際は、使われている言葉に着目すると分かりやすくなります。本記事では「育児時短就業給付金」を取り上げますが、例えば、「育児」「時短」「就業」のように分割します。
この制度でいうところの「育児」とは、2歳未満の子どもを育てているという意味です。次に「時短」ですが、これは「短時間勤務」の略で、「働いている時間が6時間程度」と捉えてみてください。そして「就業」という言葉は「働く」という意味です。
このように分解すると、育児時短就業給付金は「2歳未満の子どもを育てながら、通常の8時間労働ではなく、6時間程度の短い時間で働く労働者に対して支給される給付金」であることが分かります。
育児時短就業給付金はどんな制度?
大まかな意味を理解したところで、もう少し具体的な内容を概観してみます。
(1)何のための制度か
仕事と育児の両立を支援し、育児中でも柔軟に働けるようにすること。
(2)どんな人がもらえるのか
厚生労働省の「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」には細かい内容が記されていますが、理解に当たっては次の点を押さえましょう。
・雇用保険に入っている人がもらえる
・育休を取得後、職場復帰をし、2歳未満の子どもを育てながら、短時間勤務で働く人がもらえる
育児時短就業給付金は「育児休業等給付」であるため、雇用保険からの給付です。つまり、この制度は雇用保険制度の話であるため、労働者に対する施策であることを十分認識する必要があります。一般的には子育て支援策のように聞こえるかもしれませんが、「労働者施策である」という軸をしっかりと踏まえながら読み進めていきましょう。
(3)どれぐらい支給されるのか
短時間勤務で支払われた賃金額の10%です。
例えば、職場復帰後に短時間勤務で働き、月20万円の賃金が支払われるとします。このような労働者の場合、20万円×10%=2万円が雇用保険から支給されます。この2万円に当たるのが育児時短就業給付金です。これを月々の賃金に加えると、合計で20万円+2万円=22万円がその労働者の月収ということになります。
一般の方はここまで理解すれば十分です。例外を除き、2歳未満の子どもを育てながら時短勤務をする労働者であれば、ほとんどの方が当てはまるのではないでしょうか。さらに詳細を知りたいという方は、「育児時短就業給付の内容と支給申請手続」で確認するとよいでしょう。
注意点
育児時短就業給付金は、雇用保険から支給されるものです。このため、申請をする必要があります。
実をいうとこの点が肝で、新しく始まる制度であるため、このような制度があること自体、周知が十分行き届いていない可能性があります。
育児時短就業給付金をもらうには、勤めている会社を通じて申請してもらう必要があります。申請を希望する場合、会社の担当部署や担当者に相談のうえ、申請してもらうようにしましょう。
育児時短就業給付金は何に使う?
最後になりますが、育児時短就業給付金を受け取ったら何のために使うかということです。
もちろん使い方は自由ですが、育児中の時短勤務による収入減を支援するためのお金なので、家計にある程度余裕のある場合、子どものために使う、もしくは、子どもの将来のためにためるなど、子どものためのお金と認識しておくとよいでしょう。
余裕がない場合は、月々の支出をカバーするためのお金として考えてみましょう。
まとめ
小さい子どもを育てながら時短で働く場合、国からお金がもらえるという育児時短就業給付。今後、時短勤務の価値が高まる可能性がありますが、職場においても家庭においても、時短勤務の本質的な意味が話し合われる機会が増えるのではないでしょうか。
子との愛着形成と労働者のキャリア形成。育児時短就業給付金は、広い意味で児童福祉と親の働き方について、親が関心を持つよいきっかけになるでしょう。
出典
厚生労働省 育児時短就業給付の内容と支給申請手続
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)